流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。 
 
 
韓信ー26
田栄の協力は得られないものの、
項梁の戦略はこのところうまく運んでいる。
東阿を陥とし、章邯を追う本隊とは別に、
項羽劉邦に別働隊を授け、成陽という地を攻めてこれを陥し、
そこから西に進軍させて、秦軍を濮陽(ぼくよう)の地で破らしめた。
項羽と劉邦はさらに西へ進み、
雝丘(ようきゅう)で太守の李由(りゆう)を斬った。
李由は三川郡の太守で、陳勝呉広の軍から要衝である
滎陽を守り通した、宰相李斯の長子である。
このとき定陶(ていとう)という地で秦軍を破ったばかりの項梁は、
李由の死を聞き、喜んだ。

傍目にもその浮かれ具合がわかるくらいで、
軍に同行させられていた宋義が諌めたくらいである。
「勝ちに乗じて、士卒のみならず将が驕っているようでは、
失敗のもととなります。
今、秦の兵は徐々に増えつつあるなかで、
武信君がそのようでは心配でなりません」
正論である。が、項梁としては宋義のような男が
忠臣づらをして正論を吐くのがうるさく感じた。
誰が、おまえの言うことを聞くものか、と思ったに違いない。

項梁の心の底にある宋義に対する劣等感がそう思わせたのだろう。
項梁は宋義を使者として斉に送った。
斉の田栄は協力しないに違いないが、
敵に回すわけにはいかなかったので、
定期的に使者を送り、関係を保つためである。
表面的にはそれが理由だが、実際は任務にかこつけて
体よく目障りな男を追い払ってしまおう、という腹だった。

この時、秦の宮廷では趙高の専横がますます激しく、
それがもとで宰相の李斯が刑死させられている。
罪状は滎陽を守備していた長男の李由と結託し、
楚と内通して秦を転覆しようとはかった罪である。
もちろんそのような事実はなく、無実の罪で投獄され、
拷問に屈した李斯自身の嘘の自白が容疑の出所であった。
李斯は刑場で五刑のすべてを受け、
死ぬ間際に傍らの次男に語ったという。

「いつかまたお前と一緒に、昔のように
兎狩りでもしたいと思っていたが、もはや叶わぬ夢だ……」
建国の臣の理不尽な死は、
秦帝国のその後の運命を象徴しているかのようであった。
宋義という男には関中のこうした事件の
いちいちを知らせてくれる者はいなかったが、
長年の政治的経験によって得られた勘と言うべきだろうか、
秦の国情が荒れていることが肌でわかったようである。

国にしても、人にしても死ぬ前には痙攣するものだ。
宋義には、まるで秦の断末魔の叫びが聞こえていたようで、
それに巻き込まれないようにする思案を巡らせていた。
彼にとって重要なのは、戦いの後に生き残って
国を動かす立場として存在していることであり、
戦い自体に興味があるわけではなかった。
そのため保身には人一倍敏感である。

項梁は体よくわしを追い払ったと思っているだろうが、
まだ章邯の軍は健在だ……
章邯の最後の一太刀は項梁に向けられるだろう。……
その場にいなくてすむのはもっけの幸いというべきだ。
斉へ向かう道中で、反対に斉から楚に向かう使者と
偶然に行き当たった。

「武信君(項梁)に会いに行かれるのなら、
道を急がれるな。急ぐと戦乱に巻き込まれます。
武信君は戦乱の中で、敗死するでしょう」
宋義に言われた斉の使者は、その言葉どおり歩を緩めた。
そして使者は宋義の言葉が正しかったことを
あとになって知るのである。

いっぽう宋義は悠々と斉へ歩を進め、
そこで彼独特の処世術を披露することとなる。
項梁のそばに仕えていた韓信には、
軍の緊張感が弛緩しているのが、よくわかった。
定陶のある富豪の屋敷を接収して夜毎酒宴に耽る
項梁を見るにつけ、韓信は思う。
人は、こうした快楽を得るために、戦うのだろうか。
だとすれば付き合わされるのは、馬鹿馬鹿しいことだ。
志願して兵となった自分ですらそう思うのだから、
巻き込まれる住民の思いがそれに数倍することは、
想像に難くない。
しょせん、こいつは貴族だ。民の代表ではない。

韓信はこれ以降、項梁に対しては面従腹背の態度で臨もうと決めた。
酒に酔い、うたた寝を決め込む項梁のそばにいるのに嫌気がさす。
韓信はその場をはなれ、外に出て警護の連中の仲間に入った。
その方が緊張感が保たれると思ったからである。
いざとなると、尊敬できる良き上役とは巡り会えないものだ。
嘆息しながら小一時間ほどが過ぎた。
屋敷のなかは宴会騒ぎも終わったようで、
あたりを静寂が包み込んだ。
その日は曇天で、月や星は見えず、
屋敷の明かり以外は目に見えるものがなかった。

暗闇と静寂……嫌な予感がした。
ふいに隣の兵士が音をたてて倒れた。
驚いた韓信が振り返ると、喉元に深々と矢が突き刺さっている。
「敵だ!」しかし、構える間もなかった。
その一矢を合図に、黒い甲冑を身にまとい、
夜陰に紛れた秦兵たちが、なだれを打って突入してきた。
屋敷の警護などしている余裕はない。
韓信は他の兵と同様、一目散に逃走した。
「雑兵に構うな。逃げる者は捨て置け。
目標を見失うな」指揮官の号令のもと、火矢が放たれた。
屋敷はあっという間に炎上し、中にいた者たちは
逃げ遅れて焼死するか、慌てて外に飛び出したところを
秦兵に討たれるかのどちらかだった。

寝所で女を抱いていた項梁は、長年にわたって築き上げてきた
野望の成就への道をあっさり断たれ、
逃げ遅れて焼け死んでしまった。
項梁を失い、四散した楚軍は抵抗を試みる余裕さえない。
韓信などは一気に城壁まで走り、
無謀にもそれをよじ登ろうと、もがいた。
どこからそんな力が出るのか、指先を固い城壁に何度も突き刺し、
必死の思いをしたあげく、登り切ることができた。
城壁の上からは秦軍の様子が遠目に見てとれる。
その中に自ら先頭に立って、しきりに兵を指揮している男が見えた。
秦兵の様子から、その男が何者であるかが韓信にはわかった。

あれが……章邯! 
韓信には章邯が乱世の屈強な武人には見えなかった。
しかしもの静かに敵を討ち取って行くその態度に、
よけい恐怖を覚えた。
韓信は城壁をおりて逃げれば安全だと思いながらも、
目を離すことができない。

章邯の前に焼けこげた項梁の首が届けられた。
見るも無惨な上官の姿……。
韓信は項梁を尊敬していたわけではなかったが、
目を背けざるを得なかった。
いっぽう章邯は項梁の首を悠然と眺めると、
たいした感傷も示さずに演説を始めた。

「諸君! ……我が軍は国を守る目的で編成された」
兵たちから、おう! という雄叫びが発せられる。
「よって義は我が軍にあり、我が軍の前に立ちはだかる者は、
賊である」またしても兵たちの声が上がる。
「賊は誅罰されるものであり、討つにあたって
我々は礼儀など必要としない。
ただ、殺せばよいのだ」我々は、賊か……。
韓信は反論したい衝動に駆られたが、まさかこの状況で
そうするわけにはいかない。
城壁の上で小さくなって聞いているだけだった。

「古来より戦争を美化し、互いに名乗りを上げて
雄々しく戦うことが理想とされているが、
今の我々の敵は、賊である。罪人だ! 
罪人を捕らえるにあたっては、夜襲も不意打ちも、
あるいは暗殺も恥とはならない」
「今、首だけになってここに転がっている項梁なども、
賊の類いである。見よ、我々は賊の頭目をひとり討ち取った。
これこそ正義の証である」
ここで章邯は項梁の首を手に取り、たかだかと掲げ上げると、
兵士たちの感情は頂点に達した。
「大秦万歳!」兵たちの合唱が起こった。
韓信はいたたまれなくなった。背中に冷や汗が流れる。
「罪人項梁を撃ち殺したことで楚は当分おとなしくなるだろう。
そこで諸君、我々の次の目標は、北だ! 
北上して、趙を討つ!」
踵を返した章邯に興奮した秦兵たちが従い、去って行った。

これにより韓信は生き残ることができた。
章邯の迫力に呆然とし、城壁の上でたたずむうちに、
指先の痛みを感じた。
見ると両手の人差し指の爪がどちらとも剥がれている。
指先にまとわりつく血は、戦地につきものの
死を連想させた。
恐ろしい。現実に戻った韓信は、
思い切って城壁から飛び降り、
ひたすら走って定陶の地をあとにした。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
花に例えた古い歌
 今さら聞いても、歌っても、 
 何処に置いても、飾っても
  花も歌も、枯れてゆく....
  人生、絵模様、万華鏡...



Diễm Xưa-Khánh Ly & Utsukushi Mukashi

「雨に消えたあなた(美しい昔)」の原題は
「Diem Xua」といい、ベトナム反戦歌だという。
作詞・作曲はチン・コン・ソン(1939-2001)。
カーン・リーという歌手も、ベトナム戦争のかげで、
夫が目の前で殺されるような凄まじい過去があるという。

1970年、ユエからサイゴンに落ちのび、
大阪万博に出演して日本語盤の
「雨に消えたあなた」をリリース。
その後この歌は、1979 年のNHK ドラマ
サイゴンから来た妻と娘」の主題曲となって
「美しい昔」に改題して1979年12月に再発して
日本でも知られるようになったという。

心に滲みる歌には、それぞれ歴史があるようだ。
それに、歌声はなぜか淋しい。



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……
 

人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ 



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R


お風呂物語