流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(106)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

Author:紀之沢直

 

Kanshin021111韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 

 
 
漢の韓信-(106)


昨晩まで親しく酒を酌み交わしていた相手が
翌朝になって態度を豹変させることは、
この時代のこの国では、珍しいことではない。
ある朝、食其は斉王田広の自分に対する表情が
いつもと違うことに気付いたが、たいして驚きもしなかった。

「広野君(食其の尊称)君は天下は漢に帰すと余に語ったが、
それはこういうことなのか?
田広の表情、口調も反問を許さないものであったが、
それに動じる食其ではない。涼しい顔でこれに応対した。

「さて、どういうことですかな」
しらじらしい言葉、わざとらしい表情。
あたかも確信犯的な態度である。
「……われわれ斉が漢に味方することを決めた以上、
漢軍の矛先は、楚に向けられるべきではないのか。
しかし、聞くところによると漢は大軍を擁し、
済水を渡り、ここ臨に向かっているそうではないか。
君はこれをどう説明するつもりだ」

食其は鼻を鳴らして、不満を表明した。
物わかりの悪い子供を叱りつけるような態度である。
「今さらなにを言われるのか。
わが漢が貴様ら斉国などと同等と思われては困る。
わしが心から貴様らと誼みを結ぶはずなどないではないか。
貴様らはわしがなにを言おうと、
面従腹背の態度で臨み、都合が悪くなると、
平気で裏切る。

今、漢が軍を臨に向けたのはひとえに貴様らが
信用できぬからだ」
それまで横でこれを聞いていた宰相の田横が、
たまりかねて会話に割って入った。
「ほざけ! 信用できぬというのは、
お前のような奴のことをいうのだ。
口先だけの老いぼれめ。
儒者のくせに礼儀も知らない男だ。死ね!」

田横は左右の者に命じて、大釜を用意させた。
食其を煮殺そうというのである。
年に似合わず大柄の食其は四人掛かりで取り押さえられ、
手足を縛られて釜の中に放り込まれてしまった。
頭から釜の中に落ちた食其に向かって、田広は吐き捨てた。

「さて、広野君……このまま死にたくなければ、
漢軍に進軍を止めるよう、取りはからえ。
それができないとあれば……死ぬまでだ!」
すでに釜には火がつけられている。
食其は徐々に熱くなっていく水の温度に
恐怖を感じながらも、精一杯の虚勢を張った。

「馬鹿どもめ! わしを殺せば、
漢がお前たちを許すはずがないというのに! 
お前たちは辞を低くして、わしに頭を下げて
頼むべきだったのだ。
『どうか漢軍の進撃を止めてください』とな! 
しかし、もう遅い。
わしがお前らのためになるようなことをしてやる
義理はすでにない」

田広、田横ともにこの言葉を聞き、
事態がすでに収拾のつかないところに至ったことを知って、
歯がみした。
「姑息な……誰がお前のような小人に
頭を下げたりするものか」
「確かにわしは小人に過ぎぬ。
お前らにとってわしのしたことは姑息な
手段だったかもしれん。
だが小人が大事を成就させるには、
そんな小さなことにこだわってはいられない。
お前らがわしのことをどう思おうとも、突き進むまでだ。
真に徳のある者はちっぽけな礼儀などにはこだわらぬのだ!」
生涯儒者として礼儀の神髄を追及してきた男の結論が、
これであった。

田広などにとっては、食其が儒者だということも
虚言であったかのように思われ、
どこまで自分は騙されていたのかと思うと、我慢ならない。
田広は釜の中の?食其の顔に唾を吐き、罵倒した。
「貴様は腐れ儒者だ! 腐れ儒者の礼儀など、
人を誑かすものでしかないことを余は思い知ったぞ。
早く死ね! 
貴様が死んだ後、その肉を食ってやるわ! 
どうせ美味くはないだろうが」

食其は次第に気分が激し、
どんどん高くなっていく湯温が気にならなくなってきた。
彼の言動は、もはや虚勢ではなくなっていた。
「よいか、断言してやる。わしは確かに死ぬが、
お前たちにわしの肉を食っている暇はない! 
それはなぜか教えてやろう。
漢の指揮官は、韓信だからだ! 
天下無双の将である彼にかかれば、
お前らなど……」ここで食其は頭の中で言葉を選び、
「野良犬のようなものだ」と吠えるように言い放った。

彼の罵倒はさらに続く。「斉の犬どもめ! 
お前らが韓信に尻を蹴られ、
屠殺される光景がわしには見えるぞ。
悪いことは言わぬ。犬は犬らしく振るまえ! 
腹をさらして降伏するのだ。それが嫌なら、
今すぐ尻尾を巻いて逃げるがいい!」

「この……」反論しようとした田広であったが、
田横がその肩に手を置き、押しとどめた。
彼らは煮られ続ける食其をそのままに残し、
兵をまとめ臨を脱出し始めたのである。
食其が放つ高笑いの声が、それを見送った。



つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


「酔っぱらっちゃった 」内海美幸
 




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる

P R
カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語      

                        

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