流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(108)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

Author:紀之沢直
 
 
Kanshin021111韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。
 
 

漢の韓信-(108)

韓信は斉王田広を追撃し、ついに高密という
海岸沿いの都市にまで至った。
田広たちの前には海が立ちふさがり、
逃げ場をなくした彼らは、使者を送って
楚に救援を求めた。

そもそも斉という国は、項羽が諸国を分割した際、
いち早くそれに不満をあらわして
叛旗を振りかざした国である。
楚と斉はそのころから慢性的な
敵対状態にあったわけだが、それゆえに
この二国に協調関係が生まれたのは
やや唐突的な感がする。

楚、斉にとって漢が共通の敵となり得たからこそ
生じた苦しまぎれの連合、といったところだろうか。
実情は、国体を失った斉が藁をもつかむ気持ちで
楚にすがり、楚は打算に基づいて手を差し伸べたに
過ぎない。

項羽により斉軍の救助を命じられた楚将の
竜且(りゅうしょ)と、彼の部下との会話はそれを
象徴しているかのようであった。
「漢軍は故国から遠く離れた地で戦うため、
兵は逃げ場がなく、必死で戦わざるを得ません。
斉、楚は己の地で戦うため、苦しくなると
兵は散り散りになってしまいやすい、と言えましょう。

ここはむやみに戦わず、斉の国内に使者を遣わして
漢に叛かせるのが良いのでは、と考えますが」
慎重論を唱えた部下に対して、竜且は激怒したという。
「馬鹿か、お前は!」部下はひれ伏して許しを請うたが、
竜且は聞く耳を持たず、目の前の
食器や調度品を投げつけながら、持論を展開した。

「貴様のその足りない頭で必死になって考えてみろ! 
斉が救援を求めているのに戦わないとあっては、
いったいわしにとってなんの得があるというのか? 
斉を漢に叛かせるのでは、楚に利はない。
ただ斉が勢いを盛り返すだけではないか! 
いま我々が斉の国難に乗じて戦って勝てば、
斉の半分以上の領土を手にすることができるのだ。
そんなこともわからんのか!」 

これは漢のみならず、斉の支配をも目論んだ発言である。
また竜且は次のようにも言っているのが、
当時の記録にも残っている。
「漢の将、韓信は昔楚に属していたことがあるので、
わしはその人となりをよく知っている。
かつて漂母(食を恵む老女)に寄食し、
自分で自分の世話もできなかった男だ。
無頼者の股の下をくぐる屈辱を受けながら、
その恥をすすごうともせず、人を凌ごうとする
勇気さえもない。
敵としてはまったく恐れるに足りぬ」
要するに韓信はあしらいやすい男だ、と評したのである。

鋭気に富む楚軍の諸将からすると、
韓信はこれまで幾多の戦いに勝利をあげてはいるが、
小細工を弄してばかりいる印象が強かったのかもしれない。
よって詭計に陥りさえしなければ負ける気がしない、
と思っていたに違いなかった。

外見や経歴から判断して気弱そうな男だから、
正面きって力比べをすれば必ず自分が勝つ、と
信じていたのである。
「そんな奴を相手に、なんで戦わずにすまそうというのか!」
竜且は最後にそう言ったという。

つまり、韓信はなめられていたのである。
しかし、彼はその点を逆手に取られることとなった。
韓信率いる漢軍と竜且率いる楚軍は山東半島
付け根に位置する水(いすい)という川を挟んで対陣した。
楚軍は二十万、その誰もが溢れ出そうとする戦意を
隠そうともしない。
対岸には自分に対する殺意が渦を巻いているかのように、
韓信には見えた。
竜且は、やる気だ……しかし、そうでないと困る。

韓信は対岸の様子を眺めながら、策を巡らせた。
「準備をするとしようか」やがて韓信はそう言うと、
部下に命じて一万個以上の土嚢を作らせ、
それを?水の上流に積み上げて、流れをせき止めさせた。
夜のうちの作業であり、作業には慎重さを必要とする。
?水は水深こそ浅い川ではあったが、川幅は広く、
流されてしまえば岸にたどり着くのは難しい。
なおかつ敵に悟られないためには、事故が発生して
兵たちがうろたえ騒ぐのを防がねばならなかった。

地味な作業ではあったが、韓信は心ならずも
気分の高揚を感じた。
敵を狼狽させる罠をひそかに仕掛けるという行為は、
誰しも胸がわくわくするもので、
この時の韓信もその例外ではなかった。
彼はそれを自覚し、幾多の兵を犠牲にしておきながら、
いま私の胸にあるこのときめきの正体は何だ? 
カムジンや?生を失っておきながら、
まだ私は人を殺し足りないというのか……。と、
自分の人格を疑った。

「竜且という人物と将軍はお知り合いなのですか」
近ごろ蘭は、韓信にひとりで物思いにふける
機会を与えないよう、努力している。
韓信は思考が深く、そのおかげでこれまで戦勝を
重ねてきたことは事実であったが、
大事な人物をひとり、ふたりと失っていくにつれ、
彼はその思考の深さにより、押しつぶされて
しまうのではないかと気がかりなのであった。
この時の質問もたいして内容的には
重要なものではなかったが、それでも頭の中で
悶々と考えてばかりいるよりは、くだらない話でも
した方がましだと思った程度のものである。

「知り合い、というほどのものではない。
私はかつて楚軍に属していたのでその名前ぐらいは
知っているが、たいして気にかけたことはなかった。
項王のもとで勇将として珍重されていたというが……
まあ、つまるところ、よく知らない」韓信はそう答えた。
蘭が驚いたのは、韓信のこの言葉に
多少相手を軽蔑した響きがあったことである。
知らない、とは言っているが、過去に
侮辱を受けた経験でもあるのではないか、と
蘭は疑い、それを質した。「本当に知らないのですか」

「私の眼中にはなかった、ということだ。
まったく知らないわけではない」
「どういうことですか?」
「見ての通り、彼は窮地に陥った田広を受け入れ、
ともに戦おうとしている。
彼は結局昔から戦うことしか頭にないのだ。
私が彼なら田広に籠城を勧めるのだがな」
確かに斉の土地を侵略する側の韓信にとって、
欲するものは斉の民衆の支持であった。
ゆえに田広に民衆を巻き添えにする形で籠城されれば、
手を出しづらいのである。

「そのことに気が付かないことが、
竜且の戦略眼の欠如を証明している。
あるいはよほど私のことを軽んじているか……
おそらく後者だろうな。私に勝つ自信があるのだろう」

「舐められたものですね」蘭は悪戯っぽい
笑みを浮かべながら、そう言った。
その笑みには、韓信が竜且に敗れるはずがないという
確信が見え隠れする。
韓信はその蘭の意図を正確に受け止め、それに応えた。
「まったくだ。私があんな男に負けるはずがない」


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


島津亜矢 ・望郷酒場
作詞:里村龍一・作曲:桜田誠一


おやじみたいなヨー 酒呑みなどに
ならぬつもりが なっていた
酔えば恋しい 牛追い唄が
口に出るのさ こんな夜は ハーヤイ

田舎なれどもサー
南部の国はヨー






人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語 

f:id:campbll:20150930161949p:plain