流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 

漢の韓信-45

桟道では車を使えないので兵たちは
徒歩でこれを渡るが、苦労したのは
荷物の運搬であった。
荷車も使えないし、馬や牛も
桟道を通ることができなかった。
このため確保している軍糧を各人が担いだり、
背に負ったり、あるいは手に持って歩くしかない。
これは大変な重労働であったことは確かだが、
逃亡を考えている者にとっては逆に都合がよかった。
自分が手にしている軍糧が逃亡中の
腹を満たしてくれることになるからだ。が、
だからといって持たせないわけにもいかず、
これをいいことに逃亡者が相次ぎ、
その度に軍糧が目減りしていくのだった。

蕭何からこの問題の解決を命じられた韓信は、
翌日の朝には蕭何に策を示した。
「何? 桟道を焼く、だと!……
それは軍師の張良が主張していたことと同じだ」
驚いた蕭何は目を丸くした。
「そうですか。一晩考えてやっと出した
結論だったのですが……
すでに考えられていたこととは、
世の中には頭のいい人もいるということですね」
韓信は少し残念そうな顔をした。

「しかし、案を出した張良は韓に戻っていて、
この場にはいない。
漢王は張良がいないことで先が読めず、
実施をためらっておるのだ」
蕭何には目の前の男が策士と呼び声の高い張良
同じ意見を主張するのが興味深く感じられた。
もしかしたら、この男も策士かもしれない。

「詳しく話せ」「……軍糧を守るためには、
兵卒に軍糧を持たせないことが最善ですが、
現状を考えると、そういうわけにはいきません。
また、信頼できる者だけに
軍糧を運ばせるわけにもいかず、
どうあっても軍糧は兵が運ばねばならない。
では、兵が逃亡できないようにすればいい、と
思ったまでのことです」

蕭何は聞く。「しかし、それでは我々は本当に
巴蜀の山々に閉じ込められる形になってしまうぞ。
お前は天下のために働きたい、と言った。
桟道を焼いてしまっては天下への道が閉ざされてしまう」
韓信の表情が、明るくなった。
ここ最近では珍しいことである。
「桟道を焼く目的は、実は二つあります。
ひとつは兵の逃亡の意思をくじくため、
もうひとつは項王や関中の三王
(章邯、司馬欣、董翳)に、
我々に再び関中を目指す意志がないことを示すためです。

桟道が焼かれたとあっては、
彼らは安心するに違いありません。
そこに油断が生まれます」蕭何はため息をついた。
「それこそ張良が主張していたことと同じだ……。
しかし、焼いてしまったあとのことは考えているのだろうな。
わしとしては漢軍がこのまま巴蜀にとどまることを
良しとしているわけではない」

韓信は力を込めて話した。
「もちろん、反転はします。
あくまで、私の腹づもりですが。
桟道が焼かれたとしても、
山脈を迂回する麓の古道があります。
そこを使えば咸陽まで旅程は数十倍かかりますが、
馬や車も使える。
反転するにあたって大々的に桟道の修復を宣言すれば、
敵の目はそちらに注がれましょう。
その間に本隊は古道を使って
咸陽にひそかに侵入する……大雑把ではありますが、
これが私の戦略案です」

お前に戦略を考えろ、と言った覚えはない、と
蕭何は思ったが、これ以上ない、
妙案ではないか。と認めざるを得なかった。
蕭何は劉邦に奏上し、桟道の焼却の
裁可をもらうことにした。
「それと、もうひとつ、
気がかりなことがあるのですが……」
韓信は表情に懸念を浮かべながら、
もうひと言付け加えた。
「なんだ」「軍中に見覚えのある顔がいます。
注意しておきたいのですが……」
「好きにするがいい」このとき蕭何は、
韓信が自分の昔なじみが軍中にいるので、
親交を深めたいと言っていると思ったに過ぎなかった。

韓信は行軍の最後尾に位置し、
兵たちが全員桟道のある一定の地点まで渡り終えるつど、
それを焼き続けた。
寸断するだけでことは足りるが、
すべて焼いたのは心理的な効果を狙ったものである。
そしてこれにより夜陰に紛れて桟道を逆行して
逃亡をはかろうとする者はいなくなった。
自然、軍糧も確保される。
韓信は蕭何に対しては株を上げたが、
その反面、逃亡を画策していた兵からは
恨まれることとなった。

そして兵たちの韓信を恨む感情が頂点に達したとき、
韓信は彼らを前に言葉を発した。
「桟道を焼いたのは、漢王の命により、
侵入者を拒むためのものである。
漢王は項王に厚遇されているとはいえず、
いつ刺客を送り込まれても不思議ではない。
お前たちが、漢王の生命より
自分の生命が大事だといって逃亡をはかるのならば、
それもよし。
そのような者は我が軍には不必要である。
ただし、逃げるのであれば軍糧は置いて、
身ひとつで逃げ出すのだ。軍糧は必要である」
兵たちは、この言葉を疑った。
人がひとり通れるような桟道の中に
あとから刺客が紛れ込むのは不可能だ、と
思ったからである。

そもそも焼いたあとに逃げてもいいなどと言われても、
今さら逃げようもない。
兵たちは韓信を小馬鹿にした態度をとった。
しかし韓信はそれに動じず、言葉を継いだ。
「刺客は我々が咸陽を発つときから、
すでに潜入している。
その者は、今この中にいるのだ!」
韓信の視線はある男の面上に注がれていた。
兵たちの視線もその男に集中した。

「……お前は楚軍にいた男だな。
范増の配下にいたことを私は覚えている。
お前ひとりか? それとも仲間がいるのか? 言え!」
韓信はその長剣を抜き、せまった。
しかし男は押し黙り、何も答えない。
やがて男の顔に脂汗が浮かび始めた。
すると兵たちが韓信に同調して、その男を取り囲み、
無言の圧力を加え始めた。
圧迫に耐えかねた男はやがて意を決したかのように
脇の下から匕首を取り出すと、
目にもとまらぬ早さで自分の喉元を刺して死んだ。

あっという間の出来事だった。
その死が美しいか、それとも醜かったか
韓信には判断がつきかねたが、
劇的であったことは間違いない。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた旧い歌
今さら聞いても、歌っても、
何処に置いても、飾っても
歌も花も、枯れてゆく....
人生、絵模様、万華鏡...


火の国の女 坂本冬美



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R

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