流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

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メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。


韓信-29


遅すぎる。……
韓信は卿子冠軍の行軍の遅さが気になってならない。
趙の窮乏は急を要しているのに、
早く行って助けたいという気持ちがまったく無いかのようであった。
さすがに懐王が宋義に命じてわざと行軍を
遅滞させていたとは気付かず、
ひとりひそかに懸念を抱いていたところ、
安陽に到着した時点でついに軍はその歩みを止めてしまった。

なにかある。いや、……この作戦自体に
裏の目的があるに違いない。
思い切って韓信項羽に直言しようと考えてそばに寄った。
というのも、この日の項羽は上機嫌だと
人づてに聞いたからである。
「お前はおとなしそうな顔の割に、たいそうな剣を携えているな」
だしぬけに項羽から声をかけられた韓信
返事のしようもなく、
「はぁ……。よく言われます」とだけ答えた。

項羽を信奉する者ならば、声をかけられただけでも
泣いて喜ぶべきであったが、
特別そのような感情を持っていない韓信には喜ぶ理由はなく、
表情も変えなかった。
項羽はそれが気に入らなかったようで、
急にぶっきらぼうな態度をとった。
「なにか用か。わしは忙しい。
言いたいことがあるなら早く申せ」

韓信は、「失礼ながら、お耳に入れたいことが」と
話を切り出した。
「それはわかっている。早く申せと言っているのだ」
項羽はいらだち始めた。
韓信はそれを気にしないように努力し、話を進める。
「趙では一刻も早い救援を望んでいると思われますが、
我が軍の進軍速度ははなはだ緩く、
今に至っては完全に停まってしまいました。
これは上将軍の宋義どのになにかの思惑があることに
原因があると存じます」
項羽はこれを聞き、「なにかの思惑といえば……
作戦であろう。
それともお前は宋義に邪心でもあると言っているのか?」と
宋義を弁護するような言い方をした。
「確証はございませんが……。
その可能性はあると考えています。もしそうでなくとも、
こうしている間に沛公の軍は関中に迫り、
我が軍は遅れをとります。
宋義どのに対処を迫ったほうがよろしいかと」
韓信は決して項羽に関中王になってほしいわけではなかったが、
本意でないことを言うことも仕方のないことだと思い、そう話した。

「なるほど……。それは確かにそうだ。
明日、宋義に会って確かめてみよう」
実は韓信項羽の性格であれば、即座に宋義を討ち、
上将軍の位を奪おうとするものと考えていた。
しかし項羽は存外謹み深く、過激な行動をとろうとはしなかった。
家格に対する貴族の本能的な遠慮か……。
しょせんは項羽も貴族、ということか。
しかし、これ以上言ってやる義理は私にはない。
翌日。項羽は宋義のもとに参上し、
柄に合わないような丁寧な口調で宋義に問いただした。
「秦が趙王を鉅鹿に囲んでいること久しいが、
早めに兵を率いて黄河を渡り、
外より楚が、内より趙が秦軍を挟むようにして戦えば、
きっとこれを破れると思われる。
如何いかが
気性の荒い項羽としては充分すぎるほど慎み深く、
上官をたてて物を言ったことは確かである。
しかし、これを見越した宋義は
項羽の献策を以下のように却下した。

「例えば手で牛を打ったとしても、
表面の虻は殺せるが、毛の中の虱は殺せない。
勝負を焦るあまり、大局を見ないようでは、
虻を殺すことと同じなのだ。
つまり、今秦は趙を攻めているが、
秦が趙に勝ったとしてもその軍は疲弊する。
我々はその疲れに乗じればよいのだ。
秦が負けた場合はなおさらである。
よって得策なのは秦と趙を戦わすことである」
それでは事実上趙を見殺しにしろ、ということではないか。
項羽は思ったが、口にできない。
このあたり韓信項羽に対する評価は正しいものであった。
押し黙る項羽に対し、
宋義は自分の優位を主張した。
「わしは鎧をつけて戦場で戦うことは、
そなたには及ばないが、
策略をめぐらすことではそなたはわしに及ばない」
余裕の発言だった。
項羽は宋義の権威にうちのめされ、
なにも言えずに退出した。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....人生、絵模様、万華鏡...



泣いて昔が返るなら 小林旭

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……

人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R
お風呂物語