流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(98)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 

漢の韓信-(98)

紀元前のこの時代に世界を動かす者は、
主に武人であった。しかし当然のことながら、
文人がまったく力を持たなかったわけではなく、
幾人もの人物が弁士として歴史に名を残している。
武ではなく学問で世界を動かそうとしていた彼らは、
各地に赴いてその自慢の弁舌を駆使し、
権力者の心を揺り動かそうとした。
しかし残念なことに当時の学問は未成熟の段階にあり、
弁舌家たちはその未成熟な学問を論拠として
相手を説得せねばならなかった。
したがって彼らが権力者を前にして放つ言葉は
、往々にして嘘ばかりである。
だが彼らを論評の価値もない単なる
嘘つきと断ずるのは誤りである。

彼らの放つ嘘は武人が戦略と称して
罠を仕掛けることと同じであり、
嘘がばれて真実が露呈することは、
罠を見破られることと同じなのである。

つまり彼らは自らの舌を武器とする戦士なのであり、
言動に自らの命を賭けているという点で、
武人となんら変わることがない。

劉邦率いる漢軍は滎陽を救おうと
河南の宛・葉の地に出兵した。
彭越は楚軍の後背を撹乱せんと彭城の東、
下邳を討った。
黥布はこの時期に正式に漢軍に合流し、
劉邦とともに兵を集めた。
しかし滎陽を囲んでいた項羽はこれらの動きを察知すると、
まずは東に向かって彭越を討ち、
あっという間に敗走させた。
その帰途で漢軍が成皋(せいこう)にはいったと聞くと、
急ぎ滎陽を落城させ、
周苛を煮殺し、成皋を包囲したのである。
真の意味で「向かうところ敵なし」というべき動きであった。

劉邦はこのとき項羽のことを恐れるあまり、
夏侯嬰ただ一人だけを従え、
ひそかに成皋を脱出した。
「なんとも情けないものだ……嬰、
お前と二人で逃避行を決め込むのはこれで二度目だな」
劉邦の言動には以前の覇気が薄れてきているようで、
夏侯嬰にはそれが気になって仕方がない。
年を取ったせいもあるのだろうが、
やはり滎陽で紀信や周苛を見殺しにしてしまったことが、
だいぶこたえているのだろう。

「以前は韓信が追いすがる楚兵を撃ち破り、
我々を助けてくれました。今度も心配いりません。
幸運を期待しましょう」
夏侯嬰の言葉には劉邦をいたわる気持ちが
込められているが、残念ながらまったく根拠がなく、
気休め程度でしかない。

「そばに居るのがお前では、
幸運を期待するしかないわい」
「! これは、手厳しいおっしゃりようで……。
話は変わりますが、大王には
どこに向かわれるおつもりですか」

これを聞き、劉邦の機嫌はさらに悪くなった。
「わしに行くあてなんぞあるものか! 
それを考えるのはお前の役目だろう」
「私は……しょせん御者でしかありませんので」
「御者というものは、車上の主人に
もしものことがあれば、主人になりかわって
指揮を執るものだ。
お前が御者ではわしはおちおち死んでもいられぬわい」

「はぁ……。では、愚見を申し上げますが、
どこかの地で再起をはかるにしても
兵がなければなんともなりません。
どこかで大々的に募兵でもいたしますか?」 
劉邦はそれを聞いてしばらく考え込んだ。
「いまからそんなことをしても間に合わん」
しばらく柄にもない沈思の表情を見せた劉邦は、
やがて思いついたように顔を上げながら、言った。

「嬰、北へ向かえ。……趙だ。
趙にいる韓信の兵を強奪する!」
「え……?」「やつはわしの将軍だ。
すなわちやつの兵は、わしの兵でもある。
……深く考えるな、いいから行け!」
韓信の軍は代国の攻略以来、
井陘、邯鄲へと次第に南下し、
このときは黄河の北のほとりの
修武(しゅうぶ)という地に駐屯している。

約半年の間に目立った軍事行動がなかったとはいっても、
やはりなにもしないでいたわけではなく、
諸地方の制圧、鎮撫に奔走していたのである。
地味な作業であり、それまでの韓信
華々しい活躍とはあまりにも違う。
しかも修武は黄河をはさんで滎陽と
至近の距離にあることから、
ここまで来ていながらなぜ救援に来ないのか、
という思いを劉邦以下漢の首脳部が抱いたことは
容易に想像できる。
信のやつは、わしを見捨てたのではないか。
……思えば張耳を趙王に推挙したのはあいつであった。
……信は張耳を傀儡として自立するつもりでは?
……いや、それはあり得ん。やつは、そんな男ではない。
だが……劉邦の思考は縺れた糸のように複雑に絡み合い、
確たる答えは見出せない。

劉邦はこれまで韓信のことを信用してきたつもりであった。
だが、その信用が裏切られたときのことを想像すれば、
とてつもない恐怖感に襲われる。
おそらく対等の条件で戦えば、韓信に勝てる者はいない。
黥布や彭越などとは、比べ物にならん。
智と勇をあれほど兼ねそろえたやつは、
少なくともこの時代にはいないであろう。
あの恐ろしい項羽でさえも……敵ではない気がする。

まして自分などが……と思うと劉邦の背筋には
冷たい汗が流れた。
「深く考えるな」とは夏侯嬰に対してではなく、
自らに発せられた劉邦自身の
心の叫びであるかのようであった。 



つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『白い海峡 』 大月みやこ





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



『娘船頭さん 』美空ひばり





時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語


Furo1