流れ雲

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妄想劇場

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

知られざる命 
Author: 壇次郎


北海道を舞台に、歴史に翻弄された
小さな命がありました。
太平洋戦争から近代に至る出来事に
感動される物語です。
誰もどうすることの出来ない悲しい事実が
ありました。
命の大切さを考えさせられます……  


知られざる命・二章 アオ
函館の町も空襲の激しさが増す様になってきました。
そこで泰蔵の一家、三好家は、
おばあちゃんの妹(ツネ)の暮らす十勝の本別町
移り住むこととなりました。
当時、函館から十勝の本別町までは、
汽車で二日から三日がかりの長旅でした。
一家は、途中、小樽で暮らす弥助の弟宅に
一晩世話になることとなりました。
殆ど、交流もしていなかった仲でしたが、
弥助の弟宅では、華の手紙を
快く受け入れてくれました。
一家を乗せた汽車は、朝、函館を出発し、
その日の夕方には小樽に着きました。
小樽も函館と同じ港町です。
坂道も多く、どことなく街は似た雰囲気がありました。
小樽、札幌でも空襲にさらされる危険性がありました。
そんな状況では、あまりのんびりと出来ません。
翌朝が早いこともあり、
一家はたいして休む間も無く、
小樽を離れ、目的地に向かって再び旅立ちました。
初雪が降り出した朝早く、小樽を出た一家は、
札幌で釧路行きの汽車に乗り換えました。
汽車が峠の長いトンネルを越えたとたん、
広大な十勝平野が眼下に広がりました。
外は打って変わって雲ひとつない快晴です。
遠くの山の頂には白い物が見えます、
雲の上からでも眺めている様な広大な景色に、
泰蔵も真里子も言葉を失っていました。
今までとは違い、汽笛も楽しそうにも聞こえます。
そんな調子で汽車は広大な十勝平野を走り続け、
やっと池田駅に到着しました。
駅のホームからは、さっき越えてきた峠の山々が、
遥か遠く見ることが出来ました。
隣のホームに止まっていた陸別行きの汽車に、
一家は乗り込みました。
皆、疲れも溜まっていましたが、
あと一息と思うと、
自然に足元にも力が入って行きました。
池田駅を出発した汽車は、まもなく
勇足(ゆうたり)駅に着きました。
駅にはツネの夫、徳一郎が馬の引く荷車で
迎えに来ていてくれました。
徳一郎 「よう来たね、疲れたべぇ・・・」
鷹  「徳さん、お久しぶりです。
これからはお世話になります」
華  「叔父様、ご無沙汰してます。
これが、泰蔵と真里子です」
徳一郎 「そうかい、そうかい、初めてだんね」
泰蔵 「こんにちは」
真里子 「こんにちは」
徳一郎「ああ・・・、よう来た、よう来た。
ここらは空襲もねえから安心して暮らせばいいべさ。
自分の家だと思って遠慮すんことねえぞ・・・」
鷹 「徳さん、元気そうでいかったなや(良かった)。
ツネさんは元気ですか?」
徳一郎 「ああ、元気だぁ。
今、暖けえ芋、煮てるわ・・・」
あたりはもう、薄暗くなっており、
風の冷たい夕暮れ時でした。
皆は荷車に乗り込み、馬のヒヅメの足音と共に
世話になる徳一郎とツネの家へと向かいました。
おばあちゃんの妹、ツネは、
明治時代、開拓団の世話係をしていた青年、
徳一郎の元に嫁ぎました。
明治以降、蝦夷地から改名された北海道には、
日本全国から開拓団が津軽海峡を渡って来ていました。
徳一郎はその開拓団の世話をする
役人の手伝いをしていました。
函館で内地から渡って来た開拓団の人々を
迎えていた徳一郎は、
見合いでツネと一緒になったのをきっかけに、
自らの夢を持って十勝平野を切り開く決意をしました。
開拓団の彼らはまず、木々の生い茂る原野を
切り開く事から始めました。
当時はトラクターなどありません。そこでは、
力のある農耕馬が大活躍していました。
北海道で生まれ育った農耕馬のことを
道産子(どさんこ)と言います。
かつて道産子たちは、北国の大地を人間と共に耕し、
開拓を担っていました。
道産子たちは、朝早くから日が沈むまで、
一生懸命に働きました。
大きな木の切り株を引っこ抜き、固い土を掘り起こし、
収穫された作物が山の様に積まれた重い荷車を
街まで運んでくれました。
力持ちの彼らを人々は大切に扱いました。
馬といえども、同じ屋根の下で暮らし、
ねぎらい、感謝して、
どこの農家でも家族の一員として
共に暮らしていました。
道産子たちの活躍は農作業だけに留まりません。
彼らは唯一の交通手段として、
欠かすことの出来ない存在でもありました。
馬には、どんな天候でも
自然と家まで帰って来られる
能力が備わっています。
一寸先も見えない程のどんなに激しい吹雪でも、
馬は道に迷う事無く、
主人を家まで導いてくれます。
大正、昭和にかけて、北海道は
軍馬の供給地でもあり、
北海道のほぼ中央に位置する
十勝管内本別町には、
旧陸軍の軍馬補充部がありました。
軍馬補充部とは、
馬を育て軍馬として調教する部隊です。
東京の本部の他、全国十二カ所に支部があり、
北海道には四支部がありました。
その為、満州に渡った日本軍の軍馬には、
多くの道産子が含まれていました。
道産子には力があり、寒い満州でも
立派に働くことができ、多くの人々から
高く評価された馬でした。
本別町勇足(ゆうたり)地区にある、
おばあちゃん(鷹)の妹、ツネの家、児玉家では、
ツネの夫、徳一郎が農業を営んでいました。
一家には二人の息子が居ましたが、
二人ともすでに出兵し、
一家は高齢の徳一郎とツネだけが残されていました。
この家にも一頭の農耕馬が飼われていました。
その、泰蔵一家を駅まで迎えに出た馬の名は、
「アオ」と言い、四歳の雄馬でした。
アオも良く働く馬でした。
人の気持ちが良くわかる、優しい心を持った馬でした。
アオは徳一郎の住む家と同じ屋根の下に一緒に住んでいて、
大切に扱われていました。
泰蔵も真里子も馬を目の当たりにするのは初めてでした。
二人とも、アオの身体の大きさにはびっくりしていました。
アオの息づかいのすごさや盛り上がる筋肉に
圧倒されていました。
しかし、二人を見つめるアオの優しい眼差しの為か、
泰蔵も真里子も恐怖心を抱くことはありませんでした。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


異国の丘
作詞:増田幸治・補作詞:佐伯孝夫
作曲:吉田正

今日も暮れゆく 異国の丘に
友よ辛かろ 切なかろ
我慢だ待ってろ 嵐が過ぎりゃ
帰る日も来る 春が来る




昨日という日は歴史、
 明日という日はミステリー、
  今日という日は贈り物、
今は、歌のプレゼント

時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる