流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


クロマチックハーモニカ南里沙
鉄道員 --Harmonica




アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

幸せな家庭生活が妻の病死により一転、
悲しみの毎日へと変わった。
幼子を抱えて生きてゆくには
多くの人々の支えがあった。
精一杯生きる中での様々な出会いと
悲しい別れを繰り返し、
不思議な出来事にも遭遇する。
そして、そこには新たな愛が存在していた。……


Author: 壇次郎


どんぐりからの手紙 (第15話)

その晩、私は夢を見ました。
白樺の生い茂る林の中を亡き妻と、
隆と、クッキーと散歩をしています。
なんと、そこにはビスケットも一緒でした。
季節は春の様でした。春にしか現れない、
雪解け水だけの小川が流れています。
名前は分かりませんが、
黄色い花と白い花があちこちに咲いています。
隆は五歳の頃の姿でした。
まだ、ほっぺもふっくらして、
隆の小さな手を咲子が握っていました。
その後をクッキーとビスケットが
ピョンピョンと追いかけて行きます。
咲子も隆も幸せそうに笑っています。
しかし、私には、周りの音が
何も聞こえて来ていませんでした。
小川のせせらぎの音さえも、
聞こえて来ませんでした。
私はとても幸せな気持ちで溢れていました。
でも、何故か、涙が止まりませんでした。
しばらく私は、そんな光景を後ろから眺めながら、
隆と手をつないでいる咲子の後を付いて行きました。
久しぶりに家族が全員揃ってのピクニックです。
こんな楽しい、幸せな日は、
滅多にはありません。
どのくらいの時が過ぎたのでしょうか。
木漏れ日の眩しさの中、私の前を行く咲子は、
隆の手を離したと思ったら、
雪解け水で出来た小川を独り、
ぴょんと飛び越えました。
ビスケットもそれに続き、
ぴょんと飛び越え、咲子に続きました。
私も彼女の後を追うつもりで、
その小川を飛び越えようとしましたが、
何故か足に力が入りません。
またいでも渡れる程の小川なのに、
足が出ません。
「咲子、ちょっと待ってよ」と、叫ぶ私を、
咲子は振り返って微笑みました。
その笑顔は、いつもの幸せそうな
素敵な笑顔でした。
優しい隆の母親の微笑みでした。
そして咲子は、私に向かって手を一振りした後、
ぴょんぴょんと咲子の後を追い続ける
ビスケットと共に、白樺林の奥の方へと
行ってしまいました。
「咲子、どこへ行くんだよ~。戻っておいでよ~。
行っちゃだめだよ。咲子~、咲子~」
咲子の後姿が見えなくなるまで、
私は彼女の名を叫び続けました。
しかし、彼女は私の叫び声が聞こえないかの様に、
ぴょんぴょんと後を追うウサギと共に、
森の奥へと行ってしまいました。
そんな私の足元には、いくつもの水芭蕉が、
透き通ったせせらぎの中で、
眩し過ぎる陽の光と共に私の行く手を
遮っていました。

(開店)
アンティークショップ、開店の日が来ました。
かつての草野球仲間たちが、うわさを聞きつけ、
店を覗きに来てくれました。
狭い店の間口に大勢の人がたむろしていると、
行き交う人々は「なんだろう」と思います。
夕暮れの仕事帰りのサラリーマンが横目で眺めながら
通り過ぎます。でも、初日は一つたりとも売れず、
店を閉めようとした時です。
一人の中年女性が店を訪れました。
客「こんばんは。こちらのお店、
 今日、開店したんですか? 
 少し、品物、拝見してもかまいません?」
剛「いらっしゃいませ。どうぞご覧になって下さい」
客「あら、けっこう古い家具もある様ですね。
 でも、どれも良くお手入れがされている様で・・・。
 まぁ、このランプ、
 電気が点くように様になっているのね・・・」
剛「はい、火を使いませんから安全ですよ。
 古いランプをそのまま使って、改造しております。
 吊るしても、置物としてもご利用できますよ」 
そのお客様は、店の入口に吊るしてあった
ランプに興味を持ってくれました。
キャリアウーマン風なその女性は、
値段も手ごろだと言い、その古びたランプを
とても気に入ってくれました。
しかし、その女性はこれから寄るところがあるとの事で、
後日、私が配達することにしました。
女性が記した名前を見ると、
なんと、妻と同じ「咲子」という名前でした。
なんと偶然なことなのでしょうか。
お客様第一号が、この店の開店を夢見ていた妻と
同じ名前の方でした。 
開店当初のお店の経営は、順調とは言えませんでした。
当時は毎週火曜日の定休日に、
高田さんの会社の手伝いをしながら、
どうにか収入を確保していました。
でも、店の噂を聞きつけたお客さんが、
鉄道沿線から集まって来る様にもなり、
売り上げは徐々に増えて行きました。
そして、どうにか開店一周年を
迎えることが出来ました。その頃になると、
定休日は、すっかり仕入れの日に変わっていました。
私は軽トラックで朝早くから長野県方面に
出かける事が多くなりました。
古い農家に昔の家具が眠っているとの噂を聞き、
私はその農家を尋ねていた時です。
農家の納屋の裏山に、
たくさんの松ぼっくりやドングリ、
木の実が落ちているのが見えました。
私は、ビスケットから貰ったドングリのことを
思い出しました。
そして、何故か、そこに落ちているドングリを
持って帰りたくなってしまいました。
別にそのドングリで、何かをしたいと言う
目的もありません。私は理由も無く、
ドングリと松ぼっくりをビニール袋いっぱいに
詰め込んで、譲ってもらった古い家具と共に、
車に乗り込みました。

翌日、私は店で、前日に譲り受けた家具を磨き、
修理をしていました。
そして、ついでに貰った竹製のザルに
ドングリを入れ、店先に置いて風を通していました。
そろそろお昼の時間に近づいた頃です。
一人の若い女性が店を訪れました。
女性は香絵ちゃんといい、
地元の短大を卒業したばかりで、
近くの税理士事務所に勤務している方でした。
家は商店街からさほど離れておらず、
3人姉妹の末っ子で、天真爛漫と言うか、
あっけらかんと言うか、一緒に居て
とても心の和む女性でした。
この時は、商店街振興組合の事務所に
書類を届けに来た帰り道、
たまたまドングリに気が付いたそうで、
私との初めての出会いとなりました。
香絵「こんにちは。お店の前に置いてあるドングリ、
 おいくらですか?」
剛「すみません。あれは売り物ではないんですよ」
香絵「えぇ~・・・。でも、少し譲ってくれません?」
剛「別に使う物でもないから、
 好きなだけ持って行ってもいいよ。
 でも、いったい何に使うの?」
香絵「オブジェ作ろうと思って・・・。
 私の、趣味なの」
剛「いい趣味だね。でも、ドングリなんかは、
 この近辺にもたくさんあるんじゃない?」
香絵「そうでもないだぁ、最近は・・・。
 あっちこっちにマンションが建ってるでしょ、
 ドングリの生る木なんかは、
 どんどん無くなっちゃってるんだぁ~」
それを聞いたとたん、私はビスケットを埋めた
雑木林が心配になってきました。
私は、翌朝、あの雑木林に向かいました。
何てことでしょう。かつての雑木林には、
木一本ありません。
そこは茶色い土がむき出しになっていたではありませんか。
それもブルドーザーで整地され、
一面はまっ平らです。
草木のない赤土の上を、冷たい風が吹き抜ける光景を
私は目の当たりにしました。
あの愛らしいビスケットが眠るあの場所が、
隆が木に彫った「ビ」という文字も、
もうそこにはありません。
心にぽっかりと穴が開いてしまった様な感覚とは、
この時の様な感覚なのかもしれません。
咲子をぴょんぴょんと追いかけて行く
夢の中のビスケットの姿が、
何度も何度も、私のまぶたの裏で繰り返し、
現れては消えて行きました。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる





P R
きれいなお風呂・宣言 

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 カビシャット