流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author: 御名門優士
わたし一生ひとり…? 恋人なし。
他人と交われない仕事人間の九条小露は
ストーカーに悩まされていた。
そんな時知り合った男によって小露の赤い糸は
複雑に絡まって行く。……

君のためのとなり 2話

その直後――。「あっ、コラッ!!」
男の叱責の声が聞こえたと思ったら、
太腿に衝撃を感じた。
「っ!!」それ程痛みはなかったが、
驚いて下を向くと小さな黒い頭が見えた。
髪は短く、黒の短パンに水色のパーカーを着ているところを見ると
男の子だろうか。
続いて駆けてくる足音と共に慌てた声が小露に向かってかけられた。
「すいません!」かけられた声の方に目を向けると、
小露より少し年上くらいの男が駆け寄って来て
男の子の手を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「いきなり走るな、危ないだろうが。
ほら、ぶつかったんだからお姉ちゃんに謝って!」
「ごめんなさい」
ぺこりと礼儀よく頭を下げると、
父親らしき男は小露に向き直って改めて謝罪の言葉を繰り返した。
突然の出来事に反応しきれていなかった小露は
慌てて首を振って大丈夫です、と答え、
男の子の前にしゃがみ込むと頭を撫でた。
「こんな暗い時間にお父さんからはぐれたら危ないよ?」
「うん」「うん、じゃない。はい、だろ!」
「…はい」「あはは、素直で可愛いですね」
一連の親子の会話を聞いて微笑ましい気持ちになった小露は
笑い声を上げた。
「ホントにすいませんでした」
「いいえ。それじゃ失礼します」
頭を下げる父親と大きく手を振ってくる男の子に手を振り返して、
帰途へとついた。

最寄り駅から自宅へ歩いていると、
ふと背後から音を殺しているかのような微かな足音と
人の気配を感じた。
ここ数日の間、何度も感じていた気配だった。
ラジオ局近辺の繁華街は人が多くて尾行に気づかないのだが、
こうして閑静な住宅街に差し掛かってくると、
人通りもまばらになってくるのでこうした気配を感じ取ることができる。
実際はどこから付けられているのかは不明だが。
小露は気付かないふりを決め込み、目の前のコンビニへ入った。
窓際の雑誌コーナーへ移動し、
続いて入ってくるかもしれないと思い雑誌を立ち読むふりをしながら
出入り口の扉に目をやったが、誰も入って来ない。
外の様子を窺うがコンビニの光で見える範囲には人の姿はなかった。
十分ほどそうしていたのだが、
店に入ってきたのは若い男女のカップルと仕事帰りらしき女性だけだった。
これ以上こうしているわけにもいかず、
店内の商品を適当に物色して、アイスを持ってレジへ向かう。
すると、奥から出てきた学生らしき少年が
「いらっしゃいませ」と言った後、小露に話しかけて来た。
「あ、こんばんは。仕事帰りっすか?」
「えぇ…。何か甘い物食べたくなっちゃって」
小露が仕事帰りに立ち寄る際、週に三、四日は見る顔だ。
流石に顔馴染みのレベルなので、世間話くらいは出る。
顔見知りと言葉を交わしホッと肩の力が少し抜けた気がした。
「顔色あまり良くないみたいですけど大丈夫っすか?」
「え? そうかな? 大丈夫よ」
思い当たるとすれば、今し方の忍び寄る見知らぬ影のせいだろう。
自分で思っていたより恐怖を感じていたいたようだ。
会計が済んでしまえば、後はコンビニを出るしかないが、
外で自分を待っているかもしれないと思うと、
恐怖心がまた鎌首をもたげてきた。しかし、
いつまでもここにいるわけにはいかない。
「ありがとうございましたー」
袋を受け取ると、小露は意を決して
吸い込まれそうな暗闇に足を踏み出した。
背後の気配を探ると、先刻のような嫌な感じと人の気配は感じない。
立ち止まって、後ろを振り返りじっと再び気配を探ったが
やはり、そこに人がつけている様には感じなかった。
つけてくる人物がいないことを確信すると、
大きく息を吐き出し肩から力が抜けていくのが分かる。
念のため、遠回りをしてその日は家に辿り着いたのだった。
その日も、小露は帰宅時には曲がらない角を右に折れ、
付けてくる足音も彼女にならって右に曲がって来る。
背筋に冷たい物が駆け抜けていく気がした。
あの日コンビニから出た後、姿を消した人影は
翌日から姿を消すことなく執拗に小露をつけ回したが、
実際に姿形を目にすることはできなかった。
それがより一層不気味さが増し小露に恐怖心を植え付けた。
小露はまた角を右に曲がった瞬間、駆けだした。
いつもは彼女の中で息をひそめている心臓が、
今は荒々しく己の存在を主張している。
それに比例して、胸が苦しくなり酸素を求めて喘ぐ。
目の前に十字路が見え、とっさに左に曲がろうとすると――。
――ドン! 壁を避けたはずなのにぶつかった。
いや、壁にしては柔らかいような。

続く

Author: 御名門優士
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愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



今夜のお客は好きな人
 芸者稼業をしていても
女のまことは変わりゃせぬ
 お座敷ダンスのうれしさに
心は燃える 左づま



芸者ワルツ/神楽坂はん子
作詞:西条八十・作曲:古賀政男

あなたのリードで 島田もゆれる
チークダンスの なやましさ
みだれる裾も はずかしうれし
ゲイシャ・ワルツは 思い出ワルツ

空には三日月 お座敷帰り
恋に重たい 舞扇
逢わなきゃよかった 今夜のあなた
これが苦労の はじめでしょうか




神楽坂 はん子(かぐらざか はんこ)
本名・鈴木 玉子、
(1931年3月24日~ 1995年6月10日)は昭和期の芸者歌手。

東京都出身。両親の反対を押し切り、
神楽坂で芸者をしていたところに
作曲家の古賀政男と作詞家の西条八十がやってきて
(万城目正の紹介)「アリラン」を披露したところ、
古賀に気に入られ、又「私、芸術家って大嫌い」と発言するなど、
その竹を割ったような性格がまた気に入られ、
コロムビアへスカウトされた。

1952年に古賀作品の「こんな私じゃなかったに」でデビューする。
同年の、江利チエミの「テネシー・ワルツ」に対抗して作られた
ゲイシャ・ワルツ」が大ヒット。一躍スター歌手となる。

1955年に身許引受人の意向で引退。
公には結婚のための引退だと報道された。
1968年はん子は急遽、歌手に復帰する。
復帰に際し、はん子はそれまで暮らしていた住まいも引っ越し、
関係者に対して「今までの13年間の
女の生活を燃やしてきました」と語ったという。
東京12チャンネルの「なつかしの歌声」に出演し、
ゲイシャ・ワルツ」をはじめとした
一連のヒット曲を披露したり、コロムビア
かつてのヒット曲をステレオで再録音したりもした。
1970年代後半以降、再び姿を消す。
自らの事業失敗もあり、歌手活動は
完全に引退状態となった。その後は
一切復帰することなく、
1995年6月10日、埼玉県川口市の武南病院で
一人ひっそりと肝臓癌のため亡くなった。64歳没。
一人暮らしの自宅には焼酎瓶が散乱していたという。
神楽坂という地名を一躍全国区にしたのは
神楽坂はん子の功績と言っても過言ではない。
彼女に憧れて歌手になった神楽坂浮子
同様の発言を(テレビ東京)にてしている。


時は絶えず流れ、
  今、微笑む花も、明日には枯れる