流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

韓信

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

 

Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 

  
 
漢の韓信-(119)

三国は鼎の脚の如く
項羽を相手に奮戦する劉邦の苦労も知らず、
韓信はこともあろうに叛逆について考えを巡らしたが、
彼にはそれを実行する決断力がなかった。
幕僚の熱心な説得に応じず、彼は初志を貫いて
劉邦に臣従する決意をしてしまう。
このころの彼は自らの義理堅い性格を持て余し始めていた。
それが結果的に戦乱の世を長引かせるひとつの
要因となっていることを自覚していたのである。

だが、彼の決断は人として自然なものであろう。
私は彼を責める気持ちにはなれない。
武力の均衡による平和などというものは砂上の
楼閣のようなものであり、ほんの少しのきっかけで
崩れ去るものであることぐらいは幼児にも
想像できるものだ。

しかし、戦時ともなると人は焦り、解決を急ぐあまり
そのような考え方に靡くものである。
だが、韓信はそれをよしとしなかった。
蒯通との会話を切り上げた韓信は、居室に戻ると
侍従の者に蘭を呼ぶように言いつけた。
彼としては曹参に先に相談するべきか迷ったのだが、
考えてみれば劉邦の腹心たる曹参が
韓信の自立を支持するはずがない。
韓信はそもそも自立に乗り気ではなかったが、
それでも曹参を相手に結果のわかりきった相談をするよりは、
蘭を相手にした方が客観的な意見が聞けると思ったのである。

また、蒯通との対話に常にない疲労を感じた韓信は、
無意識に蘭に癒しを求めた。
ふとそのことに気付いた彼は、自分も、いつの間にか
弱くなったものだ。と、感じるのである。
それが自分にとって良いことなのか悪いことなのか、
彼には一概に断定することができない。

召し出された蘭は、間もなく韓信のもとに現れ、
常と変わらない挨拶をした。
「将軍、蘭にございます」蘭が韓信のことをいまだに
将軍と呼ぶのは、韓信の希望によってのことである。
「早かったな。蘭……」
「お召しがあるものと思っておりましたので。
……それで蒯通さまはどのようなことを?」
「うん……一言でいうと、自立しろと。
そうしないと私自身の身が危ういそうだ。
漢王にも項王にも味方せず、三国鼎立の世を実現しろと彼は言った」
その言葉を聞いた蘭が漏らした感想は、
「いかにも蒯通さまが言いそうなことでございますね。
理には適っていると思います」と、いうものでしかなかった。

韓信は、不安に駆られた。
「……賛成なのか? そういえば以前君は私に、
力を蓄えよと言ったことがあったな。
漢王を掣肘せよと。その意味は、
蒯先生が言ったことと同じことなのか」
蘭は首を横に振り、韓信の不安を和らげようとしていた。

しかしそれは、彼女は彼女で蒯通と違う要求を
韓信にぶつけようとしている現れでもある。
「王という立場がこれほど重荷に感じられたことはない。
君も私に難題を押し付けるつもりなのか。
決断を迫り、期待に応えさせようとする。……
期待に応えるのはいいが、私にはそれが私自身のためなのか、
漢王のためなのか、それとも民衆のためなのか、
あるいは人類社会の未来永劫の発展のためなのか、
それがさっぱりわからないのだ」
韓信はため息まじりにそう言った。
しかし蘭は逆に嬉しそうに目を輝かせ、
「そのすべてでございます!」などと、およそ韓信
余計困らせるような返答をした。

「驚くことを言う。私ひとりの行動や選択が、
それらすべてを満たすことがあるというのか。
それが本当ならば、私はよほど注意深く
行動しなければならない。君は、私にどうしろと言うのだ」
韓信は、やや途方に暮れたような表情で聞いた。
その態度と口調からは、蘭の解答にはさほど
期待していない様子がうかがえる。
しかし、一方の蘭は何かを主張したくてたまらない様子であった。

「将軍は王ではございますが、現在のお立場は
大いに漢王の威光を借りたものに違いありません。
その事実を覆したいとお望みですか?」
「いや……そのことが実にけしからぬということであれば
覆さねばならぬとは思うが、今のところそういう思いはない。
また、私自身にも乱世の梟勇でありたいという望みもないのだ」
「では、将軍の望みとは、いったいなんでありましょう」

「あえて言えば……武人として天下の乱れを取り除くことだ」
韓信の口調は、ややはっきりとしないものであった。
それは、彼がこの時点まで自身の具体的な将来を
あまり描くことをしてこなかったことに由来する。
「では、将軍は最後までその意志を貫くことです。
いま、漢王と項王に対抗して自立したとして……
武力均衡など成立しません。
漢王は将軍が裏切って自立したことに怒り、
攻撃しようとするでしょう。

そして項王はその隙を打って漢を攻撃する……
武力均衡どころか、三つ巴の戦いが繰り広げられるだけで、
天下は一層乱れます」
「……そうかもしれない。では、結局私はどうすれば良いのか」
「楚は漢王と将軍が協力することによって滅びましょう。
そして天下は漢のものになります。
ですがその後、漢王が善政を布き続けるとは限りません。
将軍は漢王が間違いを犯した時に、
それを正す存在であるべきです。
その為には力を蓄えておかねばなりませんし、
将軍ご自身が間違いを犯してはなりません」

「……ふむ」
「人の世が人の世である限り、争いがなくなることは
ございません。
漢の世になって再び天下が乱れるとき、
将軍はそれを治めねばならないお立場です。
そのことを深く自覚なさるべきです」
蘭は力を込めてそう話した。

しかしこれは救い難い話でもある。
彼女は天下が漢の国号のもとに統一されたとしても
争いが終わることはない、と言っているのであった。
つまり、戦争のあとには内乱が起きる、というのである。
彼女の言によれば、韓信はそのときにこそ
必要とされる存在だ、というのだ。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.



愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
歌は世につれ、世は歌につれ、
人生、絵模様、万華鏡…



『散る桜残る桜も散る桜 』





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語