流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.



Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 

 
 
 
漢の韓信-(118)

「……さて、私が大王のお顔を拝見する限りでは、
その位はせいぜい封侯どまりですな。しかも危険で
安穏としていません」
「ほう……」
「しかし、尊いのは大王の背中の方でございます」
「? 背中に吉兆……それはいったいどういうことか」 
蒯通は説明を始めた。

「いま、楚・漢の両王の運命は、大王の手に握られております。
大王が漢につけば漢が勝ち、反対に楚につけば
楚が勝つでしょう。
私が見るに……大王はどちらについても、
最後には破滅を迎えます。
漢が楚に勝てば、漢は次に斉を滅ぼします。
楚が漢に勝てば楚は次に斉を滅ぼします」

「……本気で言っているのか。蒯先生は、
楚の使者の言うことが正しいと思っているのか」
「私が思っているのではありません。
単に人相を観た結果を申しているのです。
しかし、あえて個人的な感想を付け加えるとすれば、
観相は正しい結論を導きだした、と思っております」

「……続けたまえ」
「……大王のとるべき道は、楚・漢の両者を利用し、
どちらも存立させ、天下を三分することです。
鼎(かなえ)(金属製の鍋・釜に似た器で、古来より王権の象徴とされる)が
三本の脚で安定して立つかの如く、
天下に三つの国を存立させることで安定をもたらすのです。
お分かりでしょうが、三本の脚のどれかひとつでも失われると、
鼎は倒れます。よって、
この状況では先に行動を起こしてはなりません」

「三者鼎立……それでは蒯先生は事実上漢王を見捨てろと申すのか?」 
蒯通はこの韓信の問いに当時流行した諺を用いて返答した。
「天の与えを取らざれば、かえってその咎(とが)を受ける、
時の至るに行わざれば、かえってそのわざわいを受ける、と
申すではありませんか」 
機会を得ながら行動を起こさなければ、
待ち受けるものは破滅である、ということであった。

韓信は、否定したかった。しかし、蒯通が言いたいことは
不本意ながら彼には理解できるのである。
そのため、韓信は蒯通が離反を使嗾していることを知り、
それをけしからぬことだと思いつつも、
断罪することはできなかった。

「武渉にも言ったことだが」韓信は蒯通が本気であると感じ、
膝を交えてとことん話し合うと決めた。
いつぞやのように賭けなどをして曖昧な結果に終わることは、
避けなければならない。二人の話し合いは二人だけの問題ではなく、
国の方針に関わることを思えば、当然であろう。
……漢王は私を優遇してくださる。
ある時はご自分の車に私を乗せ、またある時は
ご自分の食べ物を自らの手で私によそってくださった。
それだけではない……漢王はご自分の衣服を
私に着せてくださったこともあるくらいだ」

漢王には漢王のお考えがあってのことでしょう。
漢王は、要するにあなたに仕事をさせたがっているのです。
自分のために敵を殺せと。自分が行く道を掃き清めろと。
つまり……すべて自分のためです」あろうことか、
蒯通はあからさまに漢王を誹謗してのけた。
韓信はその事実に内心で愕然としたが、
それに逆上して斬る気にはならない。
彼は彼なりの表現で、自分を評価してくれているのだ。

「そうかもしれない。しかし、私は楚の項王のもとにいた時、
身分は宮中の護衛でしかなかった。
話はなにも聞いてもらえず、あの頃の私は鬱屈していた。
そんな自分をここまで取り立て、育ててくれたのは、
ほかでもない漢王なのだ」「…………」
「私は聞いたことがある。人の車に乗った者は、
その人の心配事を背負い、人の衣服を着た者は、
その人の悩みを抱き、人の食事を食べた者は、
その人のために死ぬ、と。

これはすべて……私に当てはまる。
私は一時の利益や打算に心を奪われ、
欲しいままに振る舞ってよいものだろうか。
道義に背きはしないか」
蒯通は韓信のこの言葉を聞き、気の抜けたような溜息を漏らした。
あきれて物も言えない、と言わんばかりである。

「大王。どうか……小事に拘られますな。
きっとあなたはご自身では漢王に親しみを信じ、
それによって遠い子孫の代までの安泰を望んでいるのでしょう。
しかしおそれながら……私はそれは間違いだと思っております」
「……どういうことだ」
「ごく最近の話からすれば、そう、張耳と陳余の話がいいでしょう。
かの二人は平民であった頃、互いに死を誓い合った
関係でございました」「ふむ」
「張耳は陳余に追われ、漢王のもとに走り、
漢王は兵を貸し与えて張耳に陳余を討たせた。
この時の貸し与えた兵というのが、大王、あなたのことです」

「そのとおりだ」「結果、陳余の首と体は離ればなれになり、
彼らの刎頸の交わりは偽りに満ちたものとして、
天下の物笑いの種となったのです。
しかし、私は趙にもいたことがありますのでよく存じているのです。
あの二人の仲の良さは、天下広しといえども最高のものでした。
それがこのような結果に終わったのはなぜか」
「なぜだ?」
「わざわいは過度の欲望から生まれ、
なおかつ人の心は一定せず、常にうつろうものであるからです」

陳余が張耳を除き、王になりたいと願った結果、
張耳はそれを阻止しようとし、結果的に陳余は滅んだ
。陳余の欲、張耳の欲から生まれた悲劇である。
そして実際に陳余を滅ぼしたのは、韓信自身であった。
人が欲に取り付かれた結果、友情もたやすく投げうち、
定見のない行動をとるようになった典型的な例を
彼は間近で目にしたのである。

「ううむ……感じるものはあるが、しかし私が漢王との誼を捨てて
覇道に走ったとしたら、同じ結果を生むことになりはしないか。
大いなる欲の前に小さな友誼などは信用ならぬものだと
言いたいのはわかるが……」
「大王が誼を大事になさっても、漢王がそれを重視するとは限りません。
それを言いたいのです……納得なさらぬ様子ですな。

では、もうひとつ、少し昔の話をいたしましょう」
「まだ、あるのか」「このような例はいくらでもございます。
数え上げればきりがありませんが、
なるべく分かりやすい話を……。

春秋の世における、越(えつ)国の話がよいでしょう。
越は呉に破れてほとんど滅亡しましたが、
越王勾践(こうせん)は数々の屈辱を経ながらも国を復興させ、
ついには呉を滅亡させるに至りました。
そのとき越王を補佐したのが、文種(ぶんしゅ)と
范蠡(はんれい)という人物です」

「知っている。文種は治において、范蠡は武において勾践を補佐し、
覇者たらしめた。しかし文種はある種の讒言が原因で
自害を強要され、范蠡は勾践の性格に危険を察知し、
事前に斉に逃亡した、という話だろう」
「然り。この二人は越王とともに苦難の時代を生き、
その忠誠度は並外れたものでありました。
しかし覇者となった勾践は文種に死を命じ、
范蠡は半ば追放されるように国を去るに至りました。
そのとき范蠡がなんと言ったか」

「それも知っている。『野の兎が死ねば猟犬は煮て食われてしまい、
飛ぶ鳥がいなくなれば良い弓はしまわれてしまう』と言った」
「そのとおり。以前にも私は大王に似たようなことを申しました」
「覚えている……。あのとき私は君のことを、
ひどく不遜なことを申す奴だ、と思ったものだ。
だがやはり……いまでもその印象は変わらないな」

「申し訳ございません。しかし、よくお考えを。
大王と漢王の友誼は、張耳と陳余のそれ以上であったか。
あるいは君臣が互いに信頼し合うこと、
文種・范蠡と勾践以上であったか。おそれながら私は、
いずれも及ばないと思っております」
「…………」
「大王、あなたは人臣の身分でありながら、
君主を震え上がらせるほどの威力を持ち、
名声は天下に鳴り響いております。
輝かしい経歴であることは確かですが、私は心配でなりません」
「…………」
「ここであなたが独立を宣言すれば、天下に蔓延する
流血劇は終わりを告げるのです。
やもめやみなしごは今後生まれなくなります。
そのことをよくお考えください」
「うう……蒯先生……今日はもうその辺にしていただこう。
私もよく考えてみるゆえ……」

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.



愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
歌は世につれ、世は歌につれ、
人生、絵模様、万華鏡…



『浮き草の宿 』





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語