流れ雲

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妄想劇場一樂編

妄想劇場一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

世界の奇談/カリオストロ伯爵 (2)
奇蹟の治療師か、大ペテン師か?その素顔は?


各地で奇蹟の治療を行う


35才の時、カリオストロロシア帝国の首都
サンクトペテスブルクに到着した時、
危険な狂人を治療したことがあった。
その狂人は、エカテリーナ女帝の大臣の弟で、
自分のことを神以上の存在と思い込んでいた。

彼がいったん怒り狂うえば、ものすごい力で
手がつけられなかった。
伯爵は、鎖につながれてどう猛そうに
にらみ返している狂人に近づくと
悪魔払いをするように、呪文をとなえて叫んだ。
狂人は強い一撃を受けて麻痺したように
仰向けに倒れてしまった。これ以後、
その狂人は憑きが落ちたように急に大人しくなり始め、
やがて、数週間後には、妄想状態から抜け出して
正気を取り戻していったのである。

また、ある夫妻の死にかけている赤ちゃんを一日で
治してしまったこともあった。
感激した夫妻がカリオストロ礼金を渡そうとしたが、
彼は、人間の情からしたまでのことだと言って
どうしてもその金を受け取らなかった。

しかし、このような奇蹟のような治療は、本来、
正規の医学教育を受けていた医師からすると屈辱であり、
許しがたい詐欺行為であった。
エカテリーナの主治医だったロジャーソンなど、
自分が見放した患者をカリオストロが、
ものの見事に治してしまったせいで、
大変な恨みを抱いていた。

主治医は正規の教育も受けたことのないいかさま師に、
このような無礼を許すことが出来ないと
息巻いて押しかけて来た。
主治医は多くの前で医師として対決し、
貴様のインチキを暴いてみせると意気込んでいた。
それに対し、カリオストロが言ったことは、

「では、我々は医師としての武器で戦うことにしよう。
あなたは、私が与える砒素を飲む。
私は、あなたから与えられる毒を飲む。
それで死んだ方が負けとしよう」
この言葉を聞くなり、主治医は青ざめて一目散に
逃げ帰ってしまった。

やがて、カリオストロは、貧しい人々への
無料の治療行為を始めた。
毎日、たくさんの人々が伯爵の部屋にやって来た。
足の悪い人、目の悪い人、耳の悪い人など、
さまざまな不幸をしょった人々が続々と詰めかけて来た。
伯爵は、それらの人々に適切な指示を与えながら、
薬を配って勇気づける。しかも、伯爵は、
彼らに体力をつけるための肉のスープを買うための
費用まで与えてゆくのである。

今や伯爵は、貧民や庶民に愛される存在だった。
人々は伯爵の膝を抱き、さまざまな敬愛の
言葉を投げかけるのだ。
このようなカリオストロの民衆相手の
無償での治療行為は、エカテリーナ女帝や
体制側の人間に脅威を与えることとなった。

エカテリーナの敵意は次第に大きくなり、
側近の中には、伯爵の行為を
反逆罪にあたるとまで言い出した者さえいた。
このままでは、いずれ、投獄され
処罰されることになりかねない。
身に危険を感じた伯爵夫妻は密かにロシアを
出て行った。

次に伯爵夫妻が向かったのは、
ポーランドワルシャワだった。ここでも、
たちまちオカルト的な技と魅力で
人々を引き寄せ人々に熱狂的に指示された、
中には、伯爵がいかさま師だと名指しする人間もいたが、
伯爵が当人しか知り得ない事実を話すと、
彼らの目から疑いの色が見る見る消えていくのであった。
さらに、当人に起こる未来の出来事を口にして、
追い打ちをかけると、今度は目を輝かせて
たちまち伯爵の熱狂的な賛美者に変化していくのである。

こういうふうに、ほんのわずかの間で、
多くの人々が伯爵の熱狂的支持者となっていった。
しかし、ワルシャワに着いてまだ半年にもならないというのに、
カリオストロ夫妻は、この町も出ていかねばならなかった。
次なる目的地は、フランス、ベルサイユであった。
しかし、ここで伯爵は、史上名高い首飾り事件に
巻き込まれて投獄されてしまうのである。
実際、この事件がカリオストロの生涯に与えた
影響は大きいものがあった。
当の伯爵は、その時、身に降り掛かる運命を
予測し得たのであろうか? 
ここで、世紀の大事件・・・ある意味では、
フランス革命の序曲ともなった
ダイヤの首飾り事件についてのあらましを説明しよう。

ダイヤの首飾り事件とは

首飾り事件とは、ジャンヌという女詐欺師が
仕組んで起こった事件である。後に、この女詐欺師は、
キルケーというあだ名をつけられたほどである。
キルケーとは、ギリシアの伝説に登場する
男をたぶらかし、破滅に導く邪悪な魔女のことである。

ジャンヌは、貧困の中で生まれ、少女時代は
ひたすらスラム街で機知を磨いて育った。
彼女の父親は、かつて、男爵の称号があったが、
その後、落ちぶれて飲んだくれの落伍者と成り果てていた。
悲しい境遇から抜け出すためには、
あらゆる要素を利用しなければならなかった。
うまい具合に、彼女はスタイルがよく、
笑うと魅惑的な表情となった。
つまり、不思議なセックスアピールを持っていたのである。
その上、肌の色は抜けるほど白く、
非常に知的で深い洞察力もあった。
彼女はこうした自分の身上に備わった要素を
利用することを思いついた。
おまけに彼女は、実に冷徹で意志が強く
最後まで目標を追求出来る性格でもあった。

ベルサイユの近くに宿を取った彼女は、
何食わぬ顔をしてベルサイユ宮殿の周辺を
うろつくことでうわさ話や隠語を収集した。
そして、表向きは、ジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人と名乗り、
マリー・アントワネットや宮廷内の有力者と
親しい間柄であるかのように吹聴しまわっていた。

彼女の目的は、ただ一つ、彼女が宮廷内の
有力者と親しいという話を伝え聞いて、
宮廷内に取り入ってくれと頼んで来る人間を
詐欺にかけることである。
そのうち、彼女は、大当たりを引き当てることとなった。
大資産家のロアン枢機卿が、
ルイ16世の王妃マリー・アントワネット
取り入って欲しいと近づいて来たのである。

ロアン枢機卿は、カリオストロ
熱狂的に師と仰いでいた男でもあった。
枢機卿は、自分が宰相の地位になれないのは、
かつて、マリー・アントワネットに与えた
悪い印象のために、王妃に恨まれているせいだと
思い込んでいた。
そこで枢機卿は、ジャンヌを通じて、
王妃アントワネットに取り入ることで、
何とか事態の改善をしようと考えたのである。

一方、大きい獲物がかかったと知ったジャンヌは、
自分が王妃に手渡してあげるからと言い、
枢機卿に手紙を書くように仕向けた。
枢機卿は、大喜びして20回以上も書き直しした挙句に
ようやく手紙を書き終えた。
手紙には、以前の自分の過ち、無礼を謝罪する文面が
こと細かに盛り込まれていた。

そのうち、王妃より返事が来た。
手紙はその後、何回かやり取りされたが、
形式ばった感じの内容から、次第に、
枢機卿に親しみを持ち、さらには彼に
好意を抱き始める内容へと変わっていった。
あの王妃が自分に好意を抱き始めた! 
こう思った枢機卿は、のぼせ上がって、
今度はじかに言葉を聞きたいと願うようにさえなった。
プレイボーイのあだ名を持つ枢機卿は、
自分が美男子だと思っていたので、
王妃アントワネットが、自分の誘惑に負けるのも
至極当然だと考えるような男だった。
アントワネットは、その頃、
ルイ16世の不具のせいで、夜な夜な、
欲求不満を持て余していると噂されていたのである。

しかし、実際は、花飾りのついた高価な便せんで
書かれた王妃アントワネットの手紙は、
ジャンヌの愛人が筆写の技術を駆使して
書かれたものであった。
枢機卿は、ますます、のぼせ上がって
情事を肉体的なものにエスカレートしたいと
願うようになった。
事態は厄介なことになったが、
ここが勝負の分かれ目と見たジャンヌは、
一計を案じることにした。

顔だちがマリー・アントワネットとよく似た娼婦を見つけ、
彼女を一夜の王妃に仕立てることにしたのである。
ジャンヌには、演出の才能もあったようである。
逢引きに選ばれた場所は、プチトリアノン宮殿内の
ビーナスの森。時刻は、
月のない夏の真夜中という段取りである。

王妃役になった娼婦は、本物の王妃のために、
ささやかな冗談をしかけてくれとだけ言われていた。
娼婦は、本物の王妃が姿を隠して、どこからか
この場面を御覧になっているのだろうとぐらいに
考えていた。

そこへ、コートとつば広の帽子姿の枢機卿が、
熱にうかされたように歩いて来るではないか。
娼婦は打ち合わせた通りに、赤いバラを枢機卿
手渡すと、二言、三事ささやいた。
枢機卿は、呆然と差し出されたバラを受け取ると、
娼婦の足下に膝まずき、芝生にキスをしたのである。
それは枢機卿が完全に舞い上がっていることを
表していた。

このように、見事なジャンヌの演出により、
枢機卿は身も心も完全にだまされてしまった。
ジャンヌは、枢機卿がだまされている間に、
出来る限り金を巻き上げてしまおうと考えていた。
その時、ジャンヌにとって思いがけないチャンスが
転がり込んで来た。

宝石商が、高価なダイヤの首飾りを
王妃に売りたい一心で、近づいて来たのである。
ジャンヌがこのチャンスを見逃すはずがなかった。
彼女は、枢機卿にいつもの王妃の便せんを使って
首飾りの売り渡し保証人になって欲しいと
伝えたのである。

一時的なローンであるということ。
王妃の私は、今のところ現金が足りない。
しかし、自分の贅沢のために王である
ルイ16世を煩わせたくない。
御恩は決して忘れません・・・という主旨の文面だった。

しかし、大資産家を自負する枢機卿でも、
びっくりするような値段であった。
その豪華なダイヤの首飾りは、実に160万リーブル、
現代の価値に換算すると200億円相当の巨額である。
保証人のサインをする段階になって、
枢機卿は、自分が神聖な師と仰ぐ
カリオストロ伯爵に相談すると言い出した。
サインするには、枢機卿は、興奮し過ぎて
冷静さを失っていたのだ。

しかし事態は、ジャンヌの望み通りに進展した。
枢機卿から、相談を受けた伯爵は、
その夜はすこぶる機嫌が良く、しかも占いも
吉と出たというのである。
カリオストロの保証を受けた枢機卿は、
こうしてためらわずにサインしたのであった。


カリオストロ伯爵(3)へつづく
Author: 庄司浅水



『地球上に存在する絶景 』





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今、微笑む花も、
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