流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(99)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 

漢の韓信-(99)武将と弁士

修武に仮仕立ての砦を設け、
そこで起居していた韓信は、その日、
朝起きると同時に愕然とした。 
印綬がない!あわてて枕元の小箱をあさったが、
彼の記憶は定かである。
昨日の晩、たしかにこの箱に保管して就寝したのだ。
誰かが持ち出さない限り、なくなるはずがない。
念のため、もうひとつの小箱を開けてみた。
なんということだ! 割り符さえも……。

容易ならざる事態だった。
印綬と割り符がないことには、
漢王になりかわって兵士に号令を下すことができない。
このふたつが手元にないということは、
韓信がすでに漢の将軍ではない、ということを意味した。

戦乱の時代といえども、人は能力さえあれば
何をやっても構わないというわけではない。
それを許せば天下は際限なく乱れ続け、
いつまでたっても統制はとれないのである。
認められた者が認められた職権に基づいて
行動することを許す、
その象徴が印綬と割り符なのである。

しかし、いったいどこの誰が……。
そう思いつつ室外に出ると、
そこにいるはずの衛士の姿もなかった。
韓信はことさら自分を偉そうに飾り立てたり
したことはなかったが、
それでも将軍ともなれば自分が就寝している間は、
兵士が寝ずに番をしているものなのである。

自分が寝ている間に何が起こったのか、
想像もできずに広間に向かって歩いていくと、
戸口に蘭の後ろ姿が見えた。
蘭は戸をわずかに開け、
そこから室内をおそるおそるのぞき込む仕草をしている。

「蘭、何をしている。実は大変なことが起きた」
韓信は後ろから声をかけたが、
蘭はそれを聞くなり振り返って、韓信に向かって、
しぃっ。と口の前に人差し指を突き立て、
大きな声を出すな、と暗に示した。
そして室内を指差し、声を出さずに
口をぱくぱくとさせながら、
身ぶり手振りで懸命に何かを伝えようとしている。
しかし、本人の熱心さとは裏腹に、
その仕草はどこか愛嬌を含んでいた。

「なにをふざけているのだ……中でなにかあったのか。
いいからそこをどけ。忙しいんだ」
韓信は戸に手をかけ、一気にそれを引いた。
「いけません、将軍!」
蘭はついに声を出し、韓信を止めたが、
間に合わなかった。

そこにいたのは韓信印綬と割り符を手にした
漢王劉邦その人だったのである。
「おはよう、信」「…………」
韓信は物も言えず、黙ってひれ伏すしかなかった。
こういうことか。どうりで衛士がいなかったわけだ。

印綬などが紛失したのは、
漢の支配を快く思っていなかった趙の住民が、
ごく穏便な方法で事態の打開を狙ったことが
原因だと思っていた。
しかし実際はそうではなく、理由は不明だが、
どうやら自分は王によって兵権を剥奪された、
ということらしい。韓信は、

自分がなぜこのような立場に立たされているのか
理解できなかった。
戦場では明晰を誇るその頭脳も、
この場ではまったく機能しなかったのである。

「お前は、いったい何をしているのだ」
劉邦は開口一番、そう韓信に言った。
「何を、と申されますと……?」
「わしがいまこうしてお前の前に立っていられるのは、
命をかけてわしを守ろうとした者たちがいたおかげだ。
その者たちは、いわばわしの代わりに死んだ。
しかし……よくよく考えてみれば、
そもそもあの場にお前がいたら、
彼らは死なずにすんだのだ。

陳余を斬り、趙歇を虜にしたのはすでに
半年以上も前の出来事であるというのに、
いったいお前はいままで
何をしていたのだ、と聞いている」

劉邦の口調は常になく、厳しい。
返答次第ではただではすまないだろう。
「滎陽の危急については聞き及んでおりましたが、
趙は広大な国土でありますゆえ、
鎮撫にも時間がかかり……」

「お前にそんな任務を与えた覚えはない!」
劉邦はついに怒気を発し、韓信を一喝した。
韓信は頭を地に付け、弁解する。
「……おそれながら、確かに私が大王より
与えられた任務は、趙の武力制圧でございます。
しかし、趙王を捕らえ、陳余を殺した、
それだけで趙の国民が漢の言うことを
聞くようになるかといえば、そうではありません。
こちらが国の指導者を排除したからには、
責任を持ってその後の処理もしなければならないのです。
そうでなければ漢はただ諸地方に混乱をもたらすだけの
悪辣な存在となりましょう」

韓信のいうことは正論であり、劉邦としては
たとえ内輪話であっても、趙の民衆のことなど放っておけ、
とはいえない立場である。
内心はどうであれ、もしそのようなことを口走りでもしたら、
徳のない人物とみなされ、
天下に覇を唱える資格を失うからだ。
これにより対話の主導権は韓信に移った。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『珍島物語 』 天童よしみ





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



『骨まで愛して 』美空ひばり





時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる 






P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

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