流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(90)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 
 

漢の韓信-(90)

新たに趙王となった張耳と韓信は、
趙の地方平定を目的に各地を巡り歩き、
旧趙軍の兵士を駆り集めては、漢王のもとに送り届けた。
時にはその途中で介入してきた楚軍とも遭遇する。
そこで小規模な戦闘を繰り返しながら、
国内の安定に務めるのである。

李左車の策に従い、しばらくは大規模な
戦略行動を避けて兵を休息させようとしていた
韓信であったが、実際には本格的な休養などは
とらせようもなかった。
韓信は、疲労した兵を率いて趙の政治的混乱を
収拾しようと画策してはいるものの、
そもそも混乱を生じさせた原因が自分にあるような気がして、
心やすらかではいられない。

とりわけ民衆に思いを馳せれば、
なぜ自分がわざわざこの国を攻略しなければ
ならなかったのか疑問に感じる。
それは軍人としての自分自身の存在意義を
疑うことであった。
そして、彼にできることは非常に少ない。
韓信は軍卒たちに、決して民衆との間に
もめ事を起こさないよう指示を与えることしかできなかった。

「城邑で民衆と悶着を起こした者には
厳罰を持って対処する。……仮に問題が生じた場合は、
諸君の内なる良心の声に耳を傾けろ。
征服者である我々に対する民衆の風当たりは
強いかもしれないが、諸君が自制し、
度量を示すことによってそれは解決されていくに違いない。
決して武器を持たぬ者に武器を向けてはならぬ。
……このことを忘れるな」

しかし韓信はこの指示を道徳的な正しさを
意識して出したわけではなかった。
彼は、基本的に他人の運命などを
顧みることがなかった。
自分さえしっかりしていれば逆境は乗り越えられ、
乗り越えられない者には、それ相応の
原因があるものだ、と考えていたのである。
滅びるべき者は、滅びるのだという冷めた態度で
人に接するのが常であった。

天下を救うためではない。自分が生き延びるためだ。
征服地の民衆の支持を得ることができなければ、
自分を待っているのは破滅である。
それに気付いた韓信が出したこの指示は、
民衆のためを思ってのものではなく、
人気取りをして自分が生き延びるためのものであった。

そのためか、この訓令は肝心なところで徹底さを欠いた。
人の良心というものは、個人によって
尺度が違うものである。韓信はそのことに気付かず、
それによって大きな計算違いを犯した。

首都の邯鄲の城内は度重なる戦闘により
荒廃してはいたが、それでも豪邸に住み、
多数の使用人を使い、権勢を振るった生活を
送っている者が市井の中にもある程度存在する。
その大半は秦の統治下における軍功地主の子孫で、
分家を繰り返しながらも財力を損なわず、
いまに至っても没落せずにいるのであった。

その中で董(とう)氏という名家の一族が、
ある夜ひとり残らず惨殺された。
使用人も含めて二十三名という人数が、
誰にも気付かれず、一夜のうちに死に尽くしたのである。
明らかに殺人行為に習熟した者の仕業であった。
韓信のもとにその知らせが届けられたその日の夜には、
同じように姜(きょう)氏の一族が皆殺しにあった。
総勢三十一名、逃げ延びた者はまったくいない。

遺体には、大きな損傷がなかった。
あるのは頭部または胸部に貫通した小さな穴だけで、
調査の結果、至近距離から鏃のない弓矢で
射抜かれた傷だと推測された。狙いが正確だ。
隣家の者に気付かれもせず、
何人も一夜のうちに殺すとは、相当な腕だ……。
軍の者の仕業に違いない。
いや、軍の中にもこれほど正確な射撃の
技術を持っている者は少ない。ということは……。
韓信は不審の念を抱きつつも、
ひそかに城内の名家に兵を回し、三日三晩、
ほぼ交替もさせずに護衛させた。

「邯鄲の富豪に個人的な怨恨を持つ者の犯行だろうか。
それにしてもわからないことが多い……
襲われた董・姜両家は混乱があって
多少荒れてはいたが、失われた財物はないそうだ……」
韓信は蒯通を相手に話しながら、
不覚にも居眠りをしてしまった。

「将軍、横になってお休みになられた方が……。
将軍に体調を崩されては元も子もありません」
「いや……すまぬ。しかし眠くて横になるのも
体調を崩して横になるのも、与える影響は同じだ。
どちらにしても私が不在となることに変わりがない。
やはり、起きていることにしよう」
韓信は眠い目をこすりながら、そう言って
姿勢を正した。

「今日あたり、犯人の手がかりがつかめそうな
気がするのだ。これは単なる勘なのだが……
犯人がただの物盗りではなく、
邯鄲の富豪に恨みを持つ者であれば、
たとえ我々が護衛していても目的を
達しようとするだろう。

犯人が我が軍内にいるとすれば、
我々が趙国内に駐屯している間だけが
その機会だからな」


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『花びら慕情 』 藤あや子




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


『おんな』 藤あや子




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる 





P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

Furo1