流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……59

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。
そこから始まる彼の活躍…


漢の韓信-59 
これより前、劉邦の戦車が通過する直前、
韓信は兵卒を前に胸の内に秘めた作戦を披露している。
兵の数は親衛隊を中心にしたおよそ四十名。
実に心許ない数ではあったが、
今は数よりも質を重んじるときであった。

「私がこの地点に陣を張ったのは、
ここがいちばん隘路になっているからである。
北は山、南は川に面し、いずれも急斜面になっている
……騎馬では到底迂回できない。
私の推測では、十中八九、ここを項王が通る」
「…………!」兵たちは声を失った。
いずれの顔にも恐怖の色が浮かぶ。
しかし、構わずに韓信は話を続けた。

「項王はその性格上、先頭を駆けてくるだろう。
これは性格の面だけではなく、
今までの戦場での行動を分析してもわかることだ。
しかしなぜここを項王が通るか? 
答えは獲物が大きいからである。
項王の最大の目標は漢王の捕縛だ。……
すなわち、この道を漢王が通る」
「将軍には、なぜそのように断言できるのです?」
誰もがもつ疑問であった。

兵の質問に韓信は誇るふうでもなく答えた。
「私は彭城での軍規の乱れから、
漢の敗北をあらかじめ予想していた。
いや、予想という言葉は当てはまらない……
確信していたのだ。
そこで私は前もって敗走経路を漢王に示しておいたのだ」
兵たちはざわついた。
敗北を前提に作戦をねる大将など、
不謹慎ではないか、と言いたいのである。

だが韓信は悪びれる様子もなく、またも淡々と話した。
「あのような勝利の浮かれ騒ぎの中、
漢王が敗北を受け入れるはずがない。
我が軍はそのうち負けますので王は逃げてください、
などと言っても信用されるはずがないだろう。
そこで私は漢王にではなく、
御者の夏侯嬰を説得したのだ。
もし我が軍と漢王の身になにか悪いことが起きれば、
この道を通って逃れよ、と」

兵たちはまだ信じぬようであった。
本当に劉邦はここを通るのか。
「信じるか信じないかは、もはや問題ではない。
私とて、一抹の不安はある。
夏侯嬰が私の話を覚えているか、
あわてて忘れてしまいはしないか……
しかし、信じるしかない。

では、作戦の話に入ろう」
韓信はその長剣で地面に図を描きながら話し始めた。
父の形見の大事な剣のはずだが、
その扱いはぞんざいである。
「我々は隘路を塞ぐように横に五重の陣形をしき、
漢王の姿を確認したら左右にわかれ、
これを速やかに通す。
通し終わったら素早く陣形を戻し、
追いすがる楚軍に備える……
ここまではよいな? 

楚軍の姿が視界に入ったら諸君はそれぞれ
弩(ど)(いしゆみのこと。矢を人力ではなく、
引き金を使って射る、クロスボウのような兵器)を構え、
ありったけの矢を射てその進撃を止めよ。
あらかじめ言っておくが、このたびの作戦は
楚軍を撃ち破るものではない。
漢王が安全に落ち延びるための時間稼ぎである。
追撃の速度を緩めてやれば、それでいいのだ」
韓信は力を込めて語ったが、
誰にもわかりきったことであった。

先頭を駆けてくる者が項羽だと知り、
たった四十名で勝てると思う夢想家など、
この中にはいない。
「矢の連射によって楚軍の足を止めたあと、
山側から攻撃を仕掛ける。
隘路によって縦に伸びた軍列を側面から討ち、
分断するのだ」不信に思った兵のひとりが尋ねた。

「兵の数が足りませんが……?」
「兵は二人、いや三人いればよい。
私はやはりこうなることを予測し、
山側から道を塞ぐ程度の巨岩を転がす仕掛けを作らせておいた。
諸君はそれを動かすだけでいい。
それだけで、確実に道は塞がり、楚軍は分断される。

岩を落とす地点は、なるべく楚軍の先頭に近い位置がいい。
できれば項王その人がひとり取り残されるのが理想だが、
さすがにそれは無理であろうな」
「岩を落として項王に直接当てる、というのは
……もっと難しいですな。
しかし、いつの間にそんな仕掛けを?」
韓信は苦笑いした。
「苦労した。兵たちはどの者も浮かれ騒ぎたいと思い、
私が命令を下しても聞く耳を持つ者はいなかった。
やむを得ず、協力してくれた者には将来、
将軍に推すことを確約した」
「そんな約束をして大丈夫なのですか?」
「さあ、どうかな。おそらくその者たちは
すでに皆死んだだろう。
私には説得している時間などなかったので、
軍中でとびきり欲深そうな、
酒宴に興じている者だけを選んで、偽りの約束をした。

時間がないときは、その方がてっとり早い」
韓信はすこしいらついた表情を浮かべた。
このとき彼は、自分の行動に
嫌悪感を抱いたのかもしれない。
「欲深な者は、欲につられて仕事をする。
その先の運命まで、私が責任を持つことはない」
韓信はその気持ちを振り払うかのように言い放った。
これを受けて、一座はしんとなった。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



古賀のメロディー日本人の心を辿る 
人生の並木路・美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語