流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……58

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。


漢の韓信-58

劉邦は酒宴を開く兵たちに混じって、
自らも酒を飲み、唄い、騒いでいた。
もともと家業も手伝わず、遊びほうけていた
平民時代の姿がそこにあった。
張良はそんな劉邦の姿を見るのに
嫌気がさしたのか、ひとり廃屋にこもり
静かに過ごしていた。

張良は元来多病で、すぐ風邪をひいては
寝込むたちであったが、
このときも遠征の疲れが出た、と言って
軍中に姿を現すことがなかった。
実際は乱れた軍組織の中に自分がいることを
恥ずかしく感じたのであろう。

いったい勝利とは、なんだ?
韓信はさじを投げたくなった。
しかし我慢強く、耐え忍べばそのうち
項羽がやってくるだろう。
そのときこそ自分が軍を掌握する
唯一の機会だ、と考えざるを得なかった。
敵の項羽の反転来襲を期待するとは、
韓信にとって甚だ不本意ではあるが
仕方のないことであっただろう。

いっぽう首都の危急を知った項羽は、
斉との戦いをひとまず部下に任せ、
自ら精兵三万のみを率い、
彭城に取って返した。
五十六万対三万の戦いである。

項羽の自信は筆舌に尽くしがたい。
四月のある日の明け方、彭城の西、
簫(しょう)の地に項羽率いる楚軍は出現した。
まともな守備態勢などとっていなかった
諸国の連合軍をあっという間に壊滅させ、
昼前に項羽は彭城に達した。

恐慌をきたした連合軍は、
一斉に南にむかって逃げ出した。
大潰乱である。逃げる漢軍は、
穀水(こくすい)泗水(しすい)のふたつの川で
行く手を阻まれると、十万人以上の犠牲者を出した。
残りの兵たちはさらに南の山中に逃れたが、
楚軍の追撃はなお止まない。
凄まじいのは追撃する楚軍の先頭に
項羽自身が立っていることであった。

「項王だ! 助けてくれ」
「項王に殺される」兵たちは叫んだが、
しかし助けてくれと言っても助ける者などいない。
山を越えて睢水(すいすい)まで追い込まれた
漢軍の士卒は、追い込まれてみな川岸から落下し、
十万人以上が川底に沈んだ。
このため、睢水はその流れが一時的に
止まったという。

劉邦も逃げた。その途中で楚軍に三重に取り囲まれ、
もはやこれまでか、と思った矢先、
気候が急に乱れ、西北から大風が起こったという。
その大風を受けて楚軍の追撃が一瞬弱まった
間隙を突いて、劉邦は脱出に成功した。
しかし、その周囲には数十騎の騎兵が
残されているだけだった。

なおも楚軍の追撃は続く。
劉邦は御者に向かって怒鳴り散らした。
「もっと早く走れぬのか。
項羽めに追いつかれてしまうぞ」
御者は夏侯嬰である。
これ以上急げと言われても彼には
どうすることもできない。そもそも怒鳴る劉邦自身、
揺れる車上で何度も転倒しているさまなのである。
「大王、身を低く! 矢で射られてしまいます」

この時代の戦車は四頭立ての馬が引き、
御者は立ってそれを操る。
さらに乗員も立ったままの姿勢でいることが普通で、
椅子らしきものはない。
また劉邦が乗る戦車には参乗の樊噲が
陪乗して護衛をすることが常であったが、
このとき劉邦は樊噲とはぐれ、
戦車には劉邦しか乗っていなかった。

非常に心許ない逃避行を、
劉邦は強いられたのである。
楚軍との距離が縮まり、
劉邦の身に矢が届き始めた。
夏侯嬰には、それを防ぐことができない。
ひたすら四頭の馬を走らせることしかできなかった。
このまま、討ち取られるのか。
ここで終わりなのか?
夏侯嬰の頭の中に絶望がよぎったとき、
前方に影が見えた。

激しい砂塵が舞う中で、彼はよく目を凝らしてみた。
それは漢の軍旗であった。味方だ!
しかし前方に見える兵の数は、決して多くない。
それでも劉邦の進路を開ける動きには、
きびきびとした規律が見られた。
そして先頭に立つ将らしき人物が、
長剣を杖がわりにして立っている姿が見えた。

「……韓信だ!」夏侯嬰は助かった、と
言わんばかりに叫んだ。
劉邦はそれを聞き、手を叩いて喜んだ。
「信め! 先回りして退路を確保しているとは! 
やはり無双の国士よ!」

劉邦の姿を見て剣を収めた韓信は、
すれ違いざまに劉邦に言い放った。
「大王! 滎陽へ! 滎陽で再起を図りましょう! 
ここはお任せを!」

夏侯嬰は叫んだ。「韓信、項王だ! 
頼んだぞ!」
劉邦も叫んだ。「信、きっと死ぬな! 
生きて滎陽で会おうぞ!」
そして劉邦の戦車は砂塵を残し、
通過していった。……


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



夜のめぐり逢い  石原裕次郎&八代亜紀




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる







P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語