流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。 

 

韓信-40

夜はすっかり更け、そろそろ
寝所に移ろうかと考え始めた頃合いである。
項羽のもとにこの夜三番めの面会人が現れた。
范増である。
「亜父。まだ休まないのか」亜父とは范増をさし、
項羽のみが使用する尊称である。
「父に次ぐもの」という意味を持ち、
肉親以外でもっとも尊敬する者に対して使う。

項羽はその暴虐・残忍な行動から、
独断専行的な印象が強いが、
実際にはこうして范増を慕い、頼りにしている
事実がある。
一概に彼を独裁者と断じるのは誤った見方であろう。
范増は老齢なため項羽ほどの体力はないが、
気性の激しい男である。
項羽と同様に暴虐、残忍な面を持ち合わせ、
さらに年齢を重ねて冷淡さも持ち合わせていた。

「先ほど、項伯どのと廊下で擦れ違った。
なにを話しておいでか?」范増の質問に、
項羽は面倒くさそうに返事をした。
この老人の策略は聞く価値があるが、
近ごろは説教くさくなってきている。
夜も深くなり、眠くなってきた項羽は、
范増の相手をするのが正直煩わしかった。

「叔父は劉邦を助けてやれ、と言った。
関中で庫を暴いたというのは虚言だと。
秦王を宰相にしたというのも嘘らしい。
だから明日の朝早く会見し、
劉邦の話を聞いてやってほしい、とのことだ」
范増は苦虫を潰したような顔をした。

「将軍は、それを承諾なされたのか。……よいか、
将軍が天下を望むのであれば、
いずれ劉邦は邪魔な存在となる。
それがわからぬ将軍ではあるまい。であれば、
早いうちに処断するのが得策であろう。
今、すべては虚言だったと言うが、
もともと劉邦などは財物を貪り、
好色な、くずのような男であったのだ。
そんな男が咸陽では財物には手を付けず、
婦女を近づけないとしたら、これはただごとではない。
天下を望む証拠であろう。

よってわしは委細構わず攻め滅ぼすべきだと考えるが、
将軍が明朝劉邦と会うことを決めたのであれば、
うるさくは申し上げまい。
次善の策を執るだけである」と言って項羽に迫った。
いよいよ面倒になった項羽は、
反論はせずに范増の話したいことを話させてやった。

「次善の策とは、何だ」
「会見の席で、わしが機を見て合図をするゆえ、
その場で刺殺なされよ」
范増の目は暗がりの中で、輝いて見えた。
謀者特有の目であった。
項羽は今宵面会した三名がそれぞれ
勝手なことを言うので、判断に迷った。
范増に対しては、いったい
何と答えて良いかわからない。
結局、「承知した」とだけ答えるにとどめた。

翌朝、劉邦は百余騎を従えて
会見の場の鴻門に姿を現した。
しかし幔幕の中に入れるのは、
劉邦その人以外は張良のみで、
残りの兵士たちは遠く軍門の外で待たなければならない。
劉邦張良はおずおずと幕の中に入り、
続いて項伯、范増の二人が幕の中に入っていく。

昨晩項羽に献策した三名のうち二人が
会見に同席することとなったわけである。
そして、残りのひとりの韓信はいつものように
幕の外で警護の任を命ぜられていた。
最後に項羽が幕の中に入った。
表情は険しく保っているが、
実はこのときまで劉邦をどう処すべきか、迷っていた。

不遜な態度をとるようであれば、斬る。
幕の中に入ったと同時に、項羽はそう心に決めていた。
ところが劉邦項羽が幕に入った瞬間、
地べたに這いつくばるようにひれ伏し、
傍で見ているほうが気恥ずかしくなるほどの
大げさな素振りで許しを請い始めた。

「お許しを!」から始まり、
臣(わたくし)(自分を相手より下に見立てた一人称)は
将軍と力を合わせて秦を攻め、
将軍は河北に戦い、臣は河南で戦いましたが、
まさかまさか自分のほうが先に関に入ることになろうとは、
想像もしておりませんでした。

ここで将軍とふたたび相見えることになろうとは……
臣などは河南の地でのたれ死ぬ運命だとばかり
思っておりましたが、たまたまこうして悪運強く生き残り、
関中に入ることができた以上は、
将軍が到着されるのを待ち、
すべてのご判断をお任せしようと考えておりました次第です。

臣が聞きましたところ、臣が宮殿の財物を掠め、
宮女を犯しているという噂があるようですが、
それはすべてでたらめです。
おそらくは小人が臣のことを中傷し……」と、
項羽が黙っていれば際限もなく謝罪の言葉を
垂れ流し続けた。
項羽は、完全に気勢をそがれた。

「もうよい。君の言う小人とは君の軍の
左司馬で曹無傷という男だ」
このひと言を聞いた劉邦は、曹無傷め! あの野郎……
あとでどうしてくれよう!と内心で毒づいたが、
決してそれを表情には出さなかった。
「その曹無傷とやらの中傷がなければ」
項羽劉邦の肩に手を置き、
「どうしてわしが君を疑ったりしよう」と言って、
自ら劉邦を席へ案内した。

たいした男だ、沛公は……。
私が沛公の立場であれば、あそこまで自分を
おとしめることができるだろうか。
いや、とても無理だ。項羽が単純な性格で、
泣き落としに弱いと知っていても、やはり無理だ。
ああいう男は生き残るためには
どんなことでもするに違いない。
ある意味では項羽などよりよほど恐ろしい
存在ではないか……。
幕の外で聞き耳を立てていた韓信
この会見は項羽の負けだ、と予想した。
この調子なら今日は波乱はなさそうだ。
韓信はそう結論づけたのだが、
ここまでは会見の第一段階に過ぎなかったのである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....人生、絵模様、万華鏡...



女道- 美空ひばり



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる









furo
P R 
きれいなお風呂・宣言 

お風呂物語