流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

歴史・履歴への許可証

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歴史・履歴への許可証

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心に灯をともすおいどんですさんの「記事物語」
経営者の覚悟の決断、「会社はだれのもの」より

私たちの日常の裏側ではまるで作り話のような出来事が
事実として起こっているのです。


3代続いた家電店の女性社長。
経営権は残るとはいえ自分の会社に外部の資本が入ることの
抵抗感は相当なものでした。外部資本とは買収にほかなりません。
地域密着型の5店舗で高度経済成長と共に歩んだ老舗。
しかし老舗も時代の波には勝てません。
このままだと経営が立ち行かなくなることは目に見えていました。

古くからの取引銀行から大手家電量販店の部長を紹介されます。
グループの傘下に入り再建すべきとの提案を意味しています。
古くから守り通してきた屋号を捨てる事ことへの断腸の思い。
しかし立ち止まること自体が死を意味しました。
この女性社長は英断します。

この大手グループの一員となり再起を賭けて店自体を残す・・・。
出資を受けるにあたっての事業資産価値の査定。
それによって出資金額(買収金額)の目安が決まります。
こんな時、より有利な査定額を狙って資産内容を
カムフラージュする経営者がいるものです。
この社長は包み隠さず全てをさらけ出しました。
しかし査定の結果出て来た出資案に社長は目をむきます。

まるで自分の会社が無価値だと言いたげな内容だったからです。
この話を蹴ります。
これでは当社の礎をつくってきた
父、祖父、従業員に申し訳が立たない・・・。
グループ入りは、白紙に戻りました。
しかし担当部長は、何度も何度も訪れます。
銀行も査定結果は現実問題として妥当な線であることを
社長に伝えます。

心が揺れます。行くも留まるもどちらも地獄ではないか・・・。
自分は一体どこを見て何を考えてこの道を選べばよいのだろうか・・・。
担当部長が云います。全てを私たちに託してもらえませんか。
私達と特約店さんとは一心同体ですから。
一心同体・・・。
そして最後に上乗せされた条件が提示されました。

社長、これが精一杯です。しかしこれは査定の上乗せではなく
貴社と共に歩みたいという私たちの「熱意」だとご理解ください。
それでも首を縦に振ることはできませんでした。

そしてその数日後、担当部長に電話が入ります。
社長からです。今晩10時に来て欲しい。
重たい話であることは口ぶりからわかりました。
何らかの相談かも知れない。聞くだけは聞こう・・・。
だがそれまでだろう。

担当部長が通されたのはいつもと違う社長の自宅でした。
大広間にテーブルをはさんで二人は差し向います。
社長が口火を切りました。
部長さん・・・・いろいろ考えました。
私たちはこれまで三代にわたり地域の皆様から
可愛がられてここまで来ました。
ですからお客様を裏切る形で商売を続けることはできません。・・・。
しかし、今、そのお客様たちが私たちの背中を、
押して下さっているのかもしれません。・・・・・。
お客様たちが私たちに敗者復活戦というチャンスを
与えて下さろうとしている・・・そう思いました。

社長の眼は真っ赤です・・・。
お世話になろうと決めました・・・。
部長は身を乗り出します。
そして、部長は生涯忘れられない光景を目にするのです。

部長さん・・・・私のお願いを、
いや私共の覚悟を聞いてください。
そう云うと社長は自らの右肩越しに
背後のふすまに向かって静かに告げました。開けなさい。

そのまま社長の背後のふすまが開かれると
部長は息を飲みました。
制服姿の老若男女。見事に整然と並んだ数列にわたる
正座姿です。
頭を垂れ、深く息をして社長が云いました。
当社の社員28名です。お世話になることを決めました。
何卒よろしくお願い致します。全員が揃って畳に額を伏します。

そのまままるで時が止まったようだった・・・と
部長は振り返ります。
グループ入りが決まった瞬間でした。
真っ赤に上気した顔の従業員たち・・・。
こらえ切った社長の一筋の涙。
部長の中に熱いものがこみあげてきます。
今、この人たちのこの「座礼」・・・・
決して自分に向けられたものではなく、
ましてやこれから入るグループに向けられた礼でもない・・・
部長はその時そう思ったと云います。

孫子三代分の礼。
地域のお客様に成り代わっての礼。
従業員の人生への礼 張りつめた空気の中に、
どこか凛としたあの時間。
何か大きなものを背負ったような気がした・・・。
最後の最後に社員を守り抜いた社長のことを
部長は一生忘れられないと云います。
そしてこう結びました。

会社とは誰のものなのか・・ではなく。
会社とは「誰のためのもの」なのか・ということなんです。
…某家電量販店での実話です。



北風哀歌



追記

大手家電量販店グループというのは
今の「エディオン」グループのことです。
そしてこの話はエディオングループの中核企業である
デオデオ社」での出来事。
デオデオ社は広島市に本社があり中国地方で
古くから親しまれてきた家電のチェーン店です。
このデオデオ、古くからアフターサービスに定評があり
冬になると各家庭のストーブ磨きに店員が巡回したという
逸話が残っています。



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから。


時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる



P R
きれいなお風呂・宣言 


お風呂物語