流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

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幸せがつづいても、不幸になるとは言えない
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子を持つも持たぬも人の宿命(さだめ)なり 
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あなたの人生なんだから好きなように
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『初めてのデート』

それは強引だった。
池田ヒカルは、イベント会社のバイト先で知り合った
男の子に、デートに誘われた。
「今度の土曜日って空いてる?」と訊かれて、
その瞬間、(あっ、この人、私のこと好きだったんだ)と思った。

たまたま同じ大学の一年先輩であること。
そして、「竹中慎太郎」という名前を知っている程度だった。
それほど、嫌なイメージがなかったので、
つい、「はい」と答えてしまった。

すると、唐突に、「デートしよう!」と言われた。
彼は、ただニコニコ笑っている。
(いきなり?)と思った。
普通は、「美味しいイタリアンの店知ってるんだけど」とか
「ディズニーシーで何が好き?」と遠回しに聞いてくるのものだ
。ヒカルが戸惑いつつも、勢いで首を縦に振ってしまうと、
続けて、「じゃあ、朝10時に大学の正門前で。よろしく!」
そういうと、手を振って帰ってしまった。

カオルは残りの仕事の片付けをしながらブツブツ呟いた。
「なんて強引なのよ・・・」そして土曜日。
よほど断ろうかと思ったが、電話番号も聞いていない。
かといって、すっぽかすのも気が引ける。
大学もバイトも同じだと、次に顔を合わせるとき気まずくなる。

(まあいいか。悪そうな人じゃないし、
まずはどんな人か、性格を見てみれば)
カオルの母親は、昔から口うるさい人だった。
「履物はきちんと揃えなさい」「時間を守りなさい」
「人にお金を借りてはいけません」
「お年寄りには親切に」
「部屋はいつもキレイに」・・・。
言われるたびにケンカになった。

大学に合格して、一人住まいするときはホッとしたものだった。
でも、そのおかげで、人を見る目が養われたと思っていた。
食事をしたり、家に遊びに行くだけで、
友達の人柄や性格がわかってしまう。
ちょっとイジワルだけど、
「彼の中身を見抜いてやろう」などと思って家を出た。

最寄りの駅に着くと、改札の上の表示板に
テロップが流れていた。 「架線事故のため上下線共に不通」
カオルは、思わず「え!」と声を上げた。
そして、母親の顔とともに、いつも言われていた言葉が
思い浮かんだ。
「約束の時間には、早めに行きなさい」 というものだった。

ずっと、「行こうか」「やめようか」と迷っていたので、
支度をするのがギリギリになってしまった。
次の急行に乗らないと間に合わない。
慌てて、駅員に尋ねる。「すみません。不通って、
どれくらい待てば・・・」
「大変ご迷惑をおかけしております。まだ復旧の目途が
立っておりません。  誠に申し訳ございません」

ヒカルは焦った。頭の中で他のルートを考えた。
3キロくらい離れた私鉄の駅から電車に乗る。
3つ目の駅で地下鉄に乗り換えれば、遠回りになるが
たどり着ける。 もっとも、約束の10時には
30分近く遅れてしまうが・・・。

そう決めて駅ビルを外へ飛び出した。
非常時だ。仕送り前で、財布の中身が気になったが、
停まっていたタクシーに飛び乗った。
運転手に、「ごめんなさい。急いで」と言った。
「ラジャー!」と威勢のよい返事。
しかし、その期待はすぐに裏切られた。
バイパスに入ると、いきなり渋滞。

「おかしいねぇ。おや、どうも事故か何かだね」
ヒカルにも遠くから救急車のサイレンの音が聞こえた。
イライラが募る。「すみません。抜け道ってないんですか」
「あかんねぇ。一旦、バイパスに乗ると、
降りられないんですよ」と言う。
ヒカルは、母親の「約束の時間には、
早めに行きなさい」という言葉がグルグルと回った。
さらに、「待たされる人の気持ちになってみなさい」とも、
よく言われたことを思い出した。

相手がどんな人間か、見抜いてやろうなどと考えていたのに、
これでは自分が「ダメなヤツだ」と思われるに違いない。
(嫌われる)竹中慎太郎という男の子に、
何の感情も抱いていなかったくせに、 今は「嫌われたくない」
という気持ちでいっぱいだった。

手当たり次第に友達に電話をして、「竹中慎太郎の
ケータイ番号を知らないか」と聞こうかとも思った。
しかし、まだカレシでもない男の子との関係を
妙に疑われるのが嫌で思いとどまった。

「運転手さん、ここで降ります!」
「あんた、こんなとこで危ないよ」
「いいからお願い!」それは、陸橋の上だった。
無理やり千円札を渡すとドアを開けてくれた。
駈けた! 駈けた! ヒカルは駈けた。
背中のデイバックが跳ねるように揺れた。
ここのところの運動不足も祟って、1キロも走らないうちに
息が切れてきた。 汗が首をつたう。
しんどくて、しゃがんでしまった。

好きでもない相手の顔が目に浮かんだ。
それは、怒った顔をしていた。
ヒカルは、自分が嫌になって再び走り出した。
駅に着くと時刻表を見た。こういう時は、
悪いことが重なるものだ。 電車は今、出たばかりだった。
イライラしながらホームで15分待った。

電車の中でも、走り出したい気分だった。
地下鉄に乗り換えるのも、 扉が開くと同時にダッシュした。
その間も、母親の「待たされる人の気持ちになってみなさい」
という声が、 どこからともなく聞こえてくる気がした。
何度、時計を見たことだろう。
左手の腕時計は、10時52分を指していた。
その角を曲がれば、大学の正門だ。

(いた!)怒って、もう帰ってしまったに違いないと思っていた。
でも、待っていてくれた。どうやって謝ろうか。
本当のことを言うしかない。 自分に落ち度はない。
全部、不可抗力なのだ。そう思いつつ、
「ごめんなさ~い」と声にならない小さな声を発して、
慎太郎の前まで走り寄った。

「何かあったの?」
「う、ううん。電車の事故で・・・それと車の事故も・・・」
「え!? 車の事故だって? 大丈夫?」慎太郎が、
ケガでもしていないかとヒカルの手足をキョロキョロ見回した。

「大丈夫です。事故で渋滞になっちゃって。
それよりごめんなさい」 「ふられたかと思ったよ」
「ううん、ずっとね、気になって気になって。
お母さんから言われていた言葉が気になって」
「え?」 「待たされる人の気持ちを考えなさいって。
ごめんなさいね、イライラしたでしょ」

「ぜーんぜん」慎太郎は、急に笑顔になって答えた。
「僕もさ、オヤジから口うるさく言われていたことがあるんだよ」
「え?・・・」 「待たされる人より、
待たせる人の方がずっと辛いんだゾ!って」

「・・・」ヒカルは、言葉を返せなかった。
その代わりに、目頭が熱くなるのを感じた。
優しさに、ノックダウンされた。
ヒカルは、慎太郎の顔を見上げた。
そして思った。この人と、付き合いたいと。……


Author:志賀内泰弘



『無言のキャッチボール』

「ねえ、拓也!それでどうするの?」
午後8時半。塾から帰ってくるなり、
飯島拓也は母親の良子に声をかけられた。
「うん・・・」
「昨日はね、お母さんも強気なことを言っちゃったけど、
一晩考えたらねぇ」
「お父さん、帰ってる?」
拓也は、母親の問いに答えず尋ねた。
「ううん、帰ってるわよ。トイレじゃないかしら」
「あっ、そう」 「・・・拓也!聞いてるの?」
「う、うん」拓也は中学3年。受験勉強の真っ最中だった。
成績は悪い方ではない。 かといって、
トップクラスというわけでもない。
上の下か、中の上だった。
どうしても行きたい高校があった。
そこは、野球部が強かった。
甲子園に出場したことは一度もないが、
いつも県大会のベスト8まで勝ち進んでいる学校だった。

何より、中学の野球部で可愛がってくれた
先輩がいたことが志望理由だ。
しかし、成績が今ひとつ足りなかった。 そ
れを挽回すべく、夏休みは本気で勉強した。
おかげて、担任の先生から、「おお、拓也、
やればデキルじゃん」と初めて褒められた。

ところが、である。今回の模擬試験ではボーダーを
大きく割り込んでしまった。 そして、先生からは、
志望校の見直しを言い渡されたのだった。
気弱になった。そして、迷い始めた。
どうしていいのか、わからなくなった。 ト

イレから出て来た父親の裕也が、息子の顔を見るなり
ボソッと呟くように言った。「やるか?」
そう言って、左の手のひらに、右手で拳を作って
パンパンと打った。

「うん」 「お母さん、河原へ行って来る」
「何よ、こんな遅くに」良子の声を聞いてか聞かずから、
二人はグローブを手にして家を飛び出した。
家のすぐそばの河原に、打ちっぱなしのゴルフ練習場がある。
深夜まで、照明が煌々と照らされている。
その脇の河原の土手で、二人はキャッチボールを始めた。

それは、いつの頃からだったかわからない。
拓也が物心が付いたときには、父親とキャッチボールをしていた。
父親の裕也は、無口だった。
家でも、ほとんど喋らない。
親戚の法事に行っても、尋ねられたことに、
「はい」とか「ええ」と答えるだけだ。

「学歴がないことを気にしているんじゃないの」と、
遠縁の人が言うのを耳にしたことがあった。
キャッチボールをしていても、
普通は、「ナイスボール!」とか「もう一丁」とか
言うものだ。だが、ただ黙々と、ボールを投げ、
そして受けるだけ。

そんな無言のキャッチボールではあったが、
拓也にとっては、何よりもそのことに気づいたのは、
小学6年生の4月のことだった。
拓也たちのクラスに男の子が転校生が入ってきた。
みんなは5年生から持ち上がりで、
クラス替えがなかった。

そこへ転校生だ。興味津々で迎えられた。
しかし、その子は、顔の右側に大きな青アザがあった。
子供は残酷だ。「それどうしたの?」と何人かが聞いた。
本人もよほど気にしているらしく、
おどおどして「生まれたときから・・・」と答えた。
下を向いて・・・。

数日後、「アザくん」とみんなから呼ばれるようになっていた。
拓也は、それが嫌で、「シンジ」と呼ぶようにしていた。
すると、ちょっとやんちゃなグループの3人が、
拓也までもからかうようになった。
拓也を呼ぶとき、「アザくんの友達くん」と大きな声で。

そんな中、休みの日に、父親の裕也とキャッチボールをした。
父親は何も聞かなかった。もちろん、母親にも言わなかった。
ただ、ただ、ボールを投げる。
パーン!すると、父親からボールが返ってくる。
パーン! パーン! パーン!
そんな行ったり来たりの繰り返しが30分も続いたろうか。

突然、父親の玉が速くなった。
拓也は、「ウッ」と顔をしかめて受け取った。
その後、ますますとボールはスピードを増していった。
相変わらず、一言も喋らないが、
父親の顔つきが何だか険しくなったような気がした。

その時だった。それまでの120%くらいの強さのボールが、
拓也の顔を目掛けて飛んできた。
ウワァ!と思ったときには遅かった。受け取りそこねて、
右のおでこにボールが当たった。

「目から火がでる」とか「星がピカッと光る」と言うが、
それはアニメの世界のことだけでなく、
本当なんだと拓也は思った。
尻餅をつき、右手で触れると、
血がぬるぬると流れているのがわかった。

母親は、父親を責めた。
でも拓也は、父親から一つの答をもらったような気がした。
翌日、学校へ行くと、やんちゃグループの一人に言った。
「今日からシンジと呼べよ」と。
それでも、からかうので一発殴った。
相手は鼻血を出した。 拓也も殴られた。
3倍の強さで。二人とも保健室に運ばれた。
しかし、後悔はしなかった。

今でも、父親が「そうしろ!」 と教えてくれたのだと
信じている。
もちろん、一言もそんなことは口にしていないし、
拓也もそのことは誰にも話していない。

パーン! パーン!拓也は裕也のミットに
正確にボールを投げ続けた。
野球部に入ってから、拓也は裕也の差し出す位置に
確実に投げ込めるようになっていた。
パーン! パーン!裕也が額の汗を拭った。

いつもなら、30分くらいで裕也が「終わろうか」と言う。
しかし今日は、何も言わない。
拓也が投げる。裕也が取る。裕也が投げる。拓也が取る。
もう1時間も続いているだろうか。
拓也はずっと心の中で叫んでいた。

(父さん、どうしたらいいんだよ~)パーン! パーン!
ふいに、裕也の声が聞こえた気がした。
いや、何も喋ってはいなかった。
拓也は受け取ったボールを手にして言った。

「ありがとう、もうやめにしよう」
父親から、返事が届いたような気がした。
(あきらめない)心の中で、そう呟くと、
迷いがパッと吹っ切れていることに気づいた。…


Author:志賀内泰弘




 『泣いた数だけ倖せに』




時は絶えず流れ、
 今、微笑む花も、明日には枯れる


添うて苦労は覚悟だけれど、添わぬ先から、この苦労



P R

    カビの生えない・きれいなお風呂

    お風呂物語

入れてもらえば気持ちは良いが、
  どこか気兼ねなもらい風呂


S01