流れ雲

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妄想劇場

信じれば真実、疑えば妄想……

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明日という日はミステリー


こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.



Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 

 
 漢の韓信-(117)


「どういうことだ」韓信は思わず聞き返した。
自身の配下の者が言うのならまだしも、
敵の使者の口から自立を促されることなど、
彼は予想だにしていなかったのである。
「斉王様の仰る通り、世界が変わるには
時間がかかるものです。
あらゆる手を尽くしても自分が生きている間には
なにも効果があらわれない、という事例も
数多くあります。しかし、だからといってなにも
行動を起こさないわけにもまいりますまい」

使者の武渉の口ぶりには韓信に同情する気持ちが
うかがえた。当初は立場上韓信の考えを
否定していた彼であったが、論議を重ねるうちに
心を動かされたのかもしれない。
「しかし現状では、斉王様単独で楚を撃ち破るのは
難しいかもしれません。また、漢王と斉王様とが
まったく同じ考えで行動なさっている事実もないように
私には思えます。

でしたら三者三様に独立したら如何かと」
武渉はまるで茶飲み話でもするような軽い口調で
そう述べた。しかし当然のことながら、韓信にとっては
そう簡単な問題ではない。

「私は漢王配下の一武将として、これまで行動してきた。
斉王の座が転がり込んできたのは、その結果に過ぎぬ。
私には漢王から独立する理由がないのだ。たとえ
私自身の考えが漢王のそれと相容れることがない、としてもだ」

「斉王様には、なぜそこまで漢王に肩入れなさるのですか。
項王のことが、それほどお嫌いなのですか」
「いや、そこまでの感情はない。
かつて私は項王に何度も諫言したが、項王は
それを少しも聞き入れてくださらなかった。
私が彼に仕えないのはこれが最大の理由であって、
ことさら項王を嫌っているからではない。
好きではないことが即嫌いであるということにはなるまい」

武渉はうまくかわされたような気がした。しかし、
意外に韓信の本音はそこにあるのではないか。
「では、斉王様は漢王をお好きなのですか」
武渉としては自然な質問である。だが韓信
この問いに対して困ったような表情をあらわした。

「……感謝はしている。漢王は私の策を用い、
私自身も登用してくださった。
そればかりか、漢王は自分と同じ食べ物を私に勧め、
寒いときには自分の着ている服を私に着せ、
暑いときには私の汗を拭いてくださった。……
漢王には漢王の意図があるのかもしれず、
あるいはそういった行為のすべてが私の
離反を抑えるためにあったのかもしれない。

しかし、私は項王からそのようなもてなしを受けた経験がない。
よって私はたとえ情勢が漢の不利にあるとしても、
漢の側につくであろう。それが、恩義というものではないか」
恩義を感じていながら、好きだと断言できない
苦しい心情がそこに現れていた。
しかし計算高い武渉はあえてそのことには触れない。

「さもありましょう……。しかしあなたはいまや単なる
漢の一将軍にあらず、一国の王たる身でございます。
斉の国民の運命を無視して、不利な漢の側に立つことは、
正しいことでございましょうか?」

「しかし、あながち漢が不利だとはいえまい。
私が漢の側に立つことによって、情勢は逆転するだろう」
「……さすがにわかっておられますな! 
天下の趨勢は、斉王、あなた様の動きにかかっておるのです。
あなたが漢の側に立てば、天下は漢に帰し、
楚に立てば、天下は楚に帰すのです。
これは斉王様にとっては非常に危険な立場であると
いわなくてはなりません。

私は、漢王が斉王様の忠節に応えることはないと
考えておりますが、斉王様があくまでも漢王に
恩義を感じていらっしゃるというのであれば
、しつこくは申し上げません。
ただ先ほども申したように、漢・楚いずれにも属さずに
中立を唱えれば、天下は三分され、
しばらくの間安寧を保つことができましょう。
それが知恵者のとるべき行為であろうかと存じます」

武渉は韓信項羽の側につくことがないことを悟ると、
次善の策をとった。つまり、漢に叛かないかわりに、
味方もさせない。漢・楚両国の戦いのかやの外に
置こうとしたのである。

韓信自身は武渉の言葉にそれほど深い感銘を
受けたわけではなかったが、彼の帷幄のなかに、
雷鳴に打たれたようにこれに反応した者がひとりいた。
それが、蒯通であった。

天下の均衡はこの方の双肩にかかっている。
蒯通は、そう考えた。「この方」とは、他ならぬ
斉王韓信のことである。
この方は、ご自身でそのことに気付いているに違いない。
しかし生来の生真面目さから、目を背けようとしておられるのだ。
恩義のある劉邦に叛くことは充分に不遜なことであり、
韓信自身の礼節を疑われるような行動である。

それは蒯通にもわかるが、こと人命に関しては
どうであろうか。
いまここで韓信が自立し、漢・楚・斉の三国の
武力均衡による停戦状態がなれば、長く続いた
戦乱の時代は終わりを告げるのである。
漢王劉邦も死ななければ、楚王項羽も死ぬことはない。
そして彼らの下に従属する何十万もの兵士、
さらにはそれの何十倍もの国民の命が
失われることがないのだ。

決断させるべきだ。そう考えた蒯通は、楚の使者の
武渉が帰った後、韓信に近づき、こう話したという。
「手前は若いころに、人相を見る術を
学んだことがございます」

韓信には、蒯通がなにを言おうとしているのか、
よくわからなかった。しかしまわりくどい蒯通の
話法にはすでに通じていたので、
この時もなにか言いたいことがあるのだろうと思い、
話に付き合うことにした。いつもであれば、
韓信は蒯通に「単純明快に話せ」と言ったことだろう。
そうしなかったのは韓信の心に少なからず
迷いがある証拠であった。説得できるかもしれぬ。
蒯通は心を励まし、言葉を継いだ。

「身分の高下は骨相にあり、心の憂い喜びは
容貌にあらわれ、成功失敗は決断の中にございます。
これらを参酌すれば、たいていのことは見通せるものでございます」
「……そうか。では蒯先生には私のことがどう見えるのであろうか」

韓信がこう聞いたのは単なる興味本位である。
しかし蒯通は深刻な面持ちを浮かべ、静かに言った。
「どうか大王……お人払いを」
韓信はその様子に驚き、なにかまた蒯通が不遜なことを
言い出すのではないかと勘ぐったが、やがて周囲に向かって
言い放った。「左右の者。みな席を外せ」

そばに控えていた蘭は心配そうな目をしてこちらを見ていたが、
韓信は彼女にも言い渡した。
「蘭、君もだ。……蒯先生が内密の話があるらしい」
蘭は終始無言で、それでも何かを言いたげな表情を
浮かべていたのが韓信にはわかった。
しかし、臣下の手前上、韓信は蘭に発言を許さず、
他の大勢と同様に退出させた。

蒯通にとって、この場で最も邪魔な存在が
常に韓信の判断に賛意を示す魏蘭であったが、
とりあえずはうまく彼女を遠ざけることができたのである。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.



愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
歌は世につれ、世は歌につれ、
人生、絵模様、万華鏡…



『花れん/村下孝蔵 』 photo.by〖長澤まさみ





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語