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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!
アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.



Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 

 
 
漢の韓信-(115)

どうだ、体の具合は?」
項羽は居室に戻ると鍾離眛のもとを訪ね、
そう語りかけた。
「おそれながら、まだ歩ける状態では……」
それまで横になっていた鍾離眛は、
項羽の姿を認めると体を起こし、居ずまいを
正そうとした。「そのままでよい」
項羽はそれを止め、自ら眛の肩を抱き、
あらためて横に寝かせた。

広武山での楚漢の対立のそもそもの発端は、
成皋近郊で鍾離眛が漢を攻め、
逆に包囲されたことにある。
そこに風雲告げるかのように項羽が現れ、
恐慌をきたした漢軍が広武山に逃げ込み、
築城したのだった。
この戦いのさなか、鍾離眛は落馬して
足を負傷していた。

「痛むのか?」
項羽の口調には、眛を責めるような厳しさはない。
もともと味方には優しい男である。
しかし、眛としてもいつまでもそれに甘え、
寝続けるわけにはいかなかった。
それを意識していても、なんとなく自分の鋭気が
失われつつあることを自覚せざるを得ない眛であった。

「医師の話では、骨は折れていないとのことです。
……しかしまだ腫れが引かず、患部は熱を発し、
よく眠れもしない状況でございます。
再び将軍として兵を率いる日が、いつになることやら……」
「弱気になるな。戦陣の先頭に立てば、
負傷することもあるものだ。
わしにはそのような経験はないが、これは
特別なことなのだ。
わしが負傷せず、君が負傷したことを
気に病む必要はない」

凡人たる自分は戦えば負傷し、超人の項羽
負傷しない、ということか。
眛には項羽がぬけぬけと物を言っているように思えたが、
よくよく考えてみると項羽の言は正しい。
自分が能力的にも運にも恵まれているのであれば、
上に立つ人物は項羽ではなく、自分であろう。
そのような事実を目の前の項羽が黙認するだろうか?

……するはずがない。自分は項羽より劣る男なので、
彼に服従し、彼によって生かされているのだ。
「しかし、このところ私自身、精彩を欠いている気がするのです。
戦えば勝てぬだけでなく、自分自身も負傷してばかりで……。
怪我が治って戦陣に立ったとしても項王の
ご期待に添えるような活躍ができるとは思えません」

項羽は鼻から音をたてて息を吐き、不満の意を示した。
正直な話、彼は鍾離眛に自分自身ほどの働きを
期待してはいなかった。しかし、その存在は重要である。
気が付いてみると、楚軍中には眛と並ぶ
地位を持つような人物は少なくなっていた。
項羽の下からはすでに范増が去り、黥布も
去ってしまっていたのである。

そればかりではない。今、漢の軍中で軍略を練っている
陳平も、もとはと言えば項羽の部下であったし、
かつては韓信項羽の部下であった。
これ以上人材の流出を防がねばならない項羽としては、
眛をいたわらねばならない。
韓信にやられた矢傷の方は、癒えたのか。
思えばあの時も、わしがもう少し早く戦場に
たどり着けば良かったのだ。
君があのとき受けた傷に関しては、
君自身に責任はなく、わしの戦略のまずさから
生じた出来事だった。

よって、君はもっと自分に自信を持て。
そうすればわしは最大限の努力をもって、
君の将来を保証しよう」
項羽の言葉はかつて陳平の策略によって
鍾離眛を疑い、結果的に遠ざけてしまったことを
意識している。
今、項羽は彼なりに自分の行為を反省し、
贖罪の意を示しているのであった。

「わかっています……私の弱気は、
負傷による痛みから発した
一時的なものでありましょう。
もう少し時間を……。時間が経てば、
私の鋭気も復活します。

ところでお話に出た韓信の件ですが」
韓信が、どうした」
「彼をどうお思いになりますか」
鍾離眛の問いに、項羽はしばらく考え込み、
やがて言葉を選ぶようにして答えた。

「奴は……不思議な男だ。かつて奴は楚軍にいたころ、
何度かこのわしを諌めようとしたことがある。
わしを恐れもせずに……。
また、奴は無法者の股の下をくぐるような男であったが、
戦場では果敢にもわしと一騎打ちをしようとした。
これは一体どういうことか? 
奴にとってわしは市井の無頼者以下なのか? 
あの男に腹を足蹴にされたことは、わしにとって
一生の屈辱でもあるのだ」

鍾離眛は韓信を多少弁護するような口ぶりで、
それに答えた。
「実を言うと私は、彼とは幼少の頃からの知り合いで、
その性格をよく存じております。
彼は……本来争いを好みませんが、
相手が強ければ強いほど、立ち向かおうとします。
どうでもいい相手とは争いもしないばかりか、
口もききません。彼は、そういう男です」

「では、わしはめでたく奴に認められたということか。
喜ばしい限りだ。……いや、冗談はさておき、
実のところ、わしは奴が恐ろしい。
味方の時は全く気にもしなかったのだが。
韓信西魏、趙、燕を従え、いま斉を平定しようとしている。

眛よ、漢の本隊は実は韓信ではないのか? 
わしには目の前のひげ親父が実は囮のような気がしてならぬ」
気位の高い項羽にとっては、劉邦など
ただのひげ親父に過ぎぬ。
鍾離眛は思わず笑いを漏らしそうになったが、
項羽の表情が真剣だったので、あえてそれを控えた。

韓信が斉を平定し、その勢いのまま彭城に入城したら、
楚は一巻の終わりだ。
しかし、それでもわし自身は劉邦を討つことにする。
韓信は、劉邦が死ねば楚に降伏するかもしれないが、
劉邦韓信が死んでも、降伏はしないだろう。
確たる理由はないが、そんな気がする」

この言葉を立証するかのように、項羽
斉の王室を救援することを名目に将軍竜且を派遣した。
実際は韓信の進撃を止めることが目的だったことは
言うまでもない。そして自分は劉邦を相手に
しきりに勝負を挑み続けたのである。

項羽が早めの決着を願ったのは、
兵糧が不足しているという事情も確かにあったが、
東の韓信の動静が気になったということも
一因としてあるのだった。

「天下の者が長らく恐々とおののいているのはなぜか。
ただ我ら両名がこの世に存在しているからである。
ただ我ら二人が対立し、民はその巻き添えを
食っているに過ぎないのだ。
わしはこのような現状を深く憂える。
願わくは、漢王と二人、単身で戦い、
互いに雌雄を決することを望む。
わしは、いたずらに天下の民をこれ以上苦しめたくはない」

これは、項羽が対立する劉邦に宛てて使者に言わせた文言で、
いわば果たし状である。
自己の存在が必要悪であるという自覚を窺わせるあたり、
ただ暴虐なだけと言われた項羽という男の
真の人間性が見てとれるような言葉であった。
しかし同時に、このときの項羽がどれほど
勝負を焦っていたか、それを窺わせる文章でもある。

「冗談じゃない。わしは腕力を戦わせるのはごめんだ。
知恵で戦う」
劉邦項羽の挑戦に対し、笑って答えたという。
それもそのはずである。一騎打ちなどしたら、
項羽が勝つのは目に見えているからだ。
お前の土俵で勝負するはずなどないではないか、
劉邦はそう主張するに違いなく、そのことは
冷静な判断力があれば、項羽にもわかるはずであった。

項羽の判断力を鈍らせた原因は、韓信にあった。
これより先、項羽はひとつの凶報を耳にしていたのである。
「竜且が死んだ、だと!」
項羽としてみれば、竜且に完全な勝利を
期待していたわけではない。
しかし、竜且にはせめて自分が斉に赴くまで
戦線を維持することを期待していたし、
彼にはそれができると思っていたのだった。

「そればかりではありません。高密に赴いた楚兵は
悉く殺され、残りはすべて捕虜となってございます。
東方へ遠征した楚軍は、全滅です!」
凶報をもたらした使者は、その言上があたかも
自分の武功であるかのように、語気を強めて報告した。

「全滅! ……全滅だと……」項羽は使者を睨んだが、
しかし口から出てくる言葉は呆然としたものでしかなかった。
だが使者はその眼光の鋭さに気を取られ、
にわかに態度を粛然としたものに改め、報告を続ける。
「竜且を殺し、斉王田広を処刑した韓信は、
ついに斉王を称した、との由にございます」

韓信め! あの男が、斉王! 信じられぬ。
項羽はめまいを感じた。自分は韓信を確かに恐れていた。
しかし、奴は恐れていた以上の男だった、
そういうことか。もう一度、あの男と剣を打ち合い、
対決すべきか。いや、狡猾なあの男のことだ。
たとえ一騎打ちをすることになったとしても、
どこかに伏兵を忍ばせておくに違いない……
では、どうしたらわしは韓信に勝てるのか? 
このままでは……。

「項王。こうなっては、韓信を懐柔するよりほかありません。
味方に引き入れるのです。それしかありませぬ」
事態を憂慮し、痛む足を引きずりながら現れた鍾離眛は、
項羽の耳元でそう囁いた。
しかし項羽は、その言葉に同意を示そうとしなかった。
「わしは、討ちたいのだ。いま奴を懐柔しようとすることは、
わしが奴に膝を屈することと同じだ。
なぜ覇王たるこのわしが……」

項羽は意固地になり、幼児のように駄々をこねた。
眛としては、説得するしかない。
「項王が漢王を破るためには、後顧の憂いは
取り除いておかねばなりません。
たとえ彼を味方にすることが、項王が
膝を屈することと同じだとしても、漢王を破るまでの間です」
「辛抱しろ、というのか! このわしに! 

それよりもわしが劉邦と対峙している間に、
誰かが奴を討て。誰かおらぬのか、韓信に対抗できる奴は!」
鍾離眛は首を横に振って、答えた。
「おそれながら、私には無理です。
ほかの誰もが、そう答えるでしょう」
「貴様らはそれでわしに忠誠を誓っているつもりか!」

項羽はそう言いながらも、怒気に任せて鍾離眛を
斬ってしまおう、という気にはならなかった。
情けないことだが、兵糧不足の現状では、
項羽自身にも韓信に勝てる自信がなかったからである。
「仕方がない。韓信の下に使者を送ろう。
だが、これは……時間稼ぎに過ぎぬ。
使者の成否次第では、わしはやはり韓信を討つだろう」
「お聞き入れくださり、ありがたく存じます」

言いながら、鍾離眛は考えた。
おそらく、韓信は心を変えず、
使者を送ることは結果的に無駄に終わるだろう、と。
眛の知る韓信は、人の変節を嫌う。
嫌いながら、彼自身一度楚から漢へ鞍替えしているのだ。
つまり彼は一度変節をしているのであり、
二度目は絶対にない、と思ったのである。

信……。お前は、なんという大物になったのだ。
あの、剣を引きずって歩いた貧乏小僧が王になるとは……。
眛にとって韓信はいまや袂を分かった敵同士であったが、
それでも彼の栄達は旧友として誇らしいものであった。
しかし、危険だ。危険すぎるぞ、信……。
まさかお前ともあろう者が、栄達に
目を眩ますことはないとは思うが……。
足元をすくわれぬよう、気をつけろ……。
とも思うのであった。
足元をすくわれる危険とはどのようなものなのか、
眛には具体的に説明はできない。
しかし漠然とした感情が彼を不安にさせるのであった。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.



愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『 おきてがみ 』





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語 


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