流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

 

Mituo昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー

 
 
 
 
誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


一目惚れしたのは、私が先よ、
手を出ししたのは、あなたが先よ


『お婆ちゃんのキュウリ』

会社員の三輪君子さん(39)は休日に
名古屋まで出掛けるため、豊橋駅で電車を待っていた。
ホームには大勢の人がいたので、
(どうか座れますように)と祈っていた。
幸いドア近くの席に座ることができ、
(これで本を読んだり、ちょっと眠ったりできるなぁ)
と、ほっとした。

ところが一つ目の駅で、
70代後半と思しき小柄なお婆さんが乗って来た。
正直のところ、一瞬迷ったという。
席を譲ろうかどうしようかと。
でも、思い切って声をかけた。
「あの、良かったら座ってください」

そう口にはしたものの、
恥ずかしながら「席を手放すのは、残念」などと
思っていた。
お婆ちゃんは申し訳なさそうに座ってくれた。
もう十分ほどで名古屋に到着するというころ、
お婆ちゃんは何やらかばんの中を
ごそごそと探り始めた。
そして、ビニール袋に入った二本の
キュウリを差し出し、
「これ、今朝取れたてのものだけど、持ってって。
立たせてごめんね」

自分の畑で育てたキュウリだろう。
よほど嬉しかったのか、
満面の笑顔で三輪さんの手に持たせてくれた。
その気持ちを遠慮なくいただくことにした。

「電話が次々とかかって来て、
仕事がはかどらず、イライラすることがあります。
ついつい心にやさしさを忘れそうになる時、
あのお婆ちゃんの笑顔を思い出すようにしています。
お婆ちゃんありがとう!」と三輪さん。

その晩の食卓にはサラダが並んだ。
「キュウリってこんなにおいしかったっけ」
という三輪さんを、
事情を知らない母親は不思議そうに
見ていたという…

《終わり》
Author :志賀内泰弘



置き手紙 
作詞:いではく・作曲:杉本眞人


笑い方が 下手な私
うまいジョークも 言えないあなた
ふたり暮らして どうなるものでも
ないけど ひとりより ましだった
背中と背中で もたれあって
あなたの鼓動が 伝わるだけで
安心していた なんとなく…

終わってしまった 突然に
机の上に置手紙
元気で暮らせとなぐり書き
なんて下手なジョーク
私 思い切り笑ったわ 涙を流しながら…






相田みつをさんの詩」

何か心に迷いがあるときや、
物事が上手くゆかなくてイライラするとき。
その言葉を思い出して立ち止まります。

私は、ごくごく親しい友人・知人のみを対象に
ミニコミ誌を発行しています。
創刊して間もない、15年以上も昔の
ある日のことでした。
異業種交流会で知り合ったAさんから、
「面白いって噂だから、ぜひ僕も読みたいなぁ。」
と便りをいただきました。

けっこう大変な手間仕事であり、
郵送料など金銭的にも限界がきていました。
そろそろ発行部数を打ち止めにしようと
思っていた矢先のことです。

でも、正直嬉しかった。
「読みたい」という人に読んでもらえるのが
イチバンです。
早速、「感想下さいね」と一筆箋を同封して
お送りしました。

ところが、です。
待てど暮らせど返事が来ません。
今度こそ、と次号も次々号も力を込めて
書きましたが返事がないのです。
もしや届いていないのでは、と心配になりましたが
「転居先不明」で返ってくるわけでもありません。

何ヶ月かしてある勉強会でそのAさんと
席が向い合せになったのですが、
ついに話を切り出せませんでした。
(気が弱いのです) 

そのうち号を重ねて二年が経ち、
半ば意地になってきて、
「返事待ってます」とメッセージを入れるようにも
なりました。

そんなある日のこと、異業種交流会で、
主宰の近藤昌平さんに、このことを愚痴っぽく
漏らしてしまいました。
すると翌々日、大封筒で便りが届きました。

開封すると相田みつをさんの
『日めくりカレンダー』が入っていました。
添えられた手紙には、
ただ一言「このカレンダーの21日のところを
読んでみて下さい。」とあり、
早速ページをめくりました。

あんなにしてやったのに
『のに』がつくと、ぐちになる
ドキッとして、青ざめて、冷や汗が出て、
目からウロコがぽろりと落ちました。

穴があったら入りたかった。
これ以来、手紙を書く時、
返事を一切期待しないように
心掛けるようになりました。
それからは、気持ちが楽になりました。
手紙だけではありません。一事が万事。

見返りを期待してする行為は、
結局自分が苦しいだけです。
この日から、我家の食卓には一年中
21日のカレンダーが掛かっています。
それ以後、私は、この相田みつをさんの詩で、
人生が変わりました。

《終わり》
Author :志賀内泰弘


君は吉野の千本桜、色香よけれど、
気(木)が多い



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる