流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



挽歌/村下孝蔵 photo.by『井川遥




メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.



Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。
 
 
 
 
漢の韓信-(112)

「お見事でした」曹参はそう言って讃えたが、
韓信としては結局してやられたように思う。
そもそも城邑の父老などは、領主が変われば
贈り物を用意して取り入ろうとするのが普通である。
それに比べて斉の父老たちときたら……。
結局は舐められたように思われるのであった。

「本当にそう思いますか? 
しかし実を言って私には斉をどう治めてよいのか
見当もつかない。
父老たちにはあのように言ったが、
本当は自治してもらった方が楽なことは確かだ。
しかし……占領しておいてまさか
そうするわけにもいくまい」

曹参は韓信に同調したが、ここで意外なことを言った。
「斉の民は農奴や子供に至るまで謀略に慣れ親しみ、
信用できません。自治はおろか彼らの親しむ者を
王に擁立することさえも、危険過ぎます。
よって斉は漢が統治すべきで、
もし斉を王国として残すのであれば、
漢の者を王としてたてなければなりません。
……相国、お立ちなされ」韓信は曹参の言葉を聞き
、少なからず動揺した。

「! ……冗談でしょう。私などより
……君の方が適任だ。識者だし、人望もある。
漢王も君ならば信用するでしょう」
「まさか。私はかつて蕭何とともに漢王を擁立した身。
その私が自ら漢王と並び立つわけにはいきません。
私には相国のような知謀も少なく、
王となっても国を守ることはできないでしょう」
「私なら、それができるというのか?」
「貴方以外の他に誰がいるというのです?」

「…………」 しかし、一武将に過ぎない自分が
勝手にそのような決断をしても構わないものだろうか。
韓信は漢の将の面々を頭に浮かべ、
王にふさわしい者がいるか考えを巡らせた。
黥布には淮南王の地位が約束されている。
彭越には梁(魏の東半分)の地を
自由に切り開く権利が劉邦より保証され、
ゆくゆくは、かの地で王位につくに違いない。
その他盧綰や周勃、樊噲をはじめとする
劉邦の子飼いの連中……忠誠心はあっても
能力的には疑問符が残る。

韓信は彼らを見下していたわけではないが、
彼らが王に向いているかと問われれば、
否定せざるを得ない。
武力だけでは単なる暴虐な王が誕生しやすい。
知力だけでは政策が陰謀に傾きやすく、
民が心服しないこと甚だしい。

王になるには人徳が不可欠である、とは
この国の定説であるが、では
人徳とはなにか、ということになれば明確な
定めはない。しかし
韓信はそれを武力と知力の均衡である、と
考えていた。
そして人に対する厳しさと優しさの均衡、
さらには鋭気と自制の均衡、
それを持つ者のみが人々の尊敬を集め、
運に恵まれると結果的に王位に就くことに
なる、と考えていた。

では自分はどうかといえば、韓信としては
自分自身をいくらでも否定することができた。
武力と知力は兼ねそろえているつもりではいるが、
それは軍事に限ったことで、政治にそれを
応用できるかといえば、自信はない。
人に対して厳しいか、といえば、あるいは
自分は優しいといえるかもしれない。
しかしそれは表面的なもので、基本的に
彼は自分を含め、人が嫌いであった。

自分の優しさは他者と深く関わることが嫌なことの
裏返しであることが、彼自身にはわかっている。
そして自分には鋭気などない。
もともとはあったのかもしれないが、
彼は相手の鋭気を利用することを得意としたため、
自分自身はそれを持つことを極力避けてきたのである。

鋭気がないのに自制などしようもなく、
この点においても自分は不適格者だと、
考えたのだった。しかし曹参の言うように、
他に誰がいるということになれば、
やはり思いつく人物はなかった。

韓信には本気で曹参自身にやってもらいたい、
という思いがあったものの、
冷静に考えてみればそれもやはり無理な話である。

「立たれよ、相国」曹参はもう一度韓信に言った。
韓信は戸惑いつつも、決心を固めねばならないと
自分に言い聞かせた。
そのときの彼の頭の中に、先日の酈生の書状の内容が
浮かんだことは想像に難くない。

結果的に韓信は次のように劉邦に対し、
使者を通じて意見を奏上した。
「斉という国は、民衆に至るまで嘘や偽りが多く、
変心に満ちており、端的に申せば、
変節の国だと言えましょう。
また南は国境を楚と接し、防衛に関しても容易ではなく、
非常に統治するに難しい国です。
厄介なこの国を治めるにあたっては、
王をたてて徹底的に支配するしかありません。
一武将の地位では不十分なのです。
願わくは私を仮の王として任命していただくよう、
お願い申し上げます」

韓信としては謹み深く、遠慮がちに
「仮の王」などとしたのだが、おりしも劉邦
窮地に立たされているさなかであったので、
これに激怒したという。
というより、ここ数年の劉邦に順風満帆なときはなく、
常に窮地に立たされているありさまなので、
韓信がいつ意見をいっても素直に受け入れられることは
なかっただろう。

「王になるだと! わしが苦しんでいるというのに
知らぬふりを決め込んで、王になるだと!
助けにも来ず、あいつは勝手なことばかり
ほざきおって」
使者が恐縮するのを前にして劉邦
さらに言おうとした。
「いったい韓信のやつはわしのことを……痛っ!」

劉邦は突然口を閉ざした。
韓信を個人的に攻撃しようとする言動を
抑えるために、張良と陳平がふたりで
劉邦の足を踏んだのである。
びっくりした劉邦の耳に張良が口を近づけ、
使者に聞こえぬよう声を潜めて囁く。

「漢は、甚だ不利なときにあります。
ここで韓信に不満を抱かせては、
助けに来ないどころか、叛く恐れがあります。
……韓信を王に取り立ててやれば、
少なくとも自分の領地は守ろうとするでしょう。
韓信の領地は、間接的には漢の領地でもあります。
彼が敵でないことに、満足すべきです」

そこで劉邦は気付く。韓信がとてつもない戦果をあげ、
いまや自分に対抗できる勢力になったことを。
かねてより抱いていた懸念がいま、
このとき実現しつつあるのであった。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.



愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…



『時間よ止まれ すぎもとまさと with KANA 』




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば、言い訳になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる


こうして、こうすりゃ、こうなるものと、
  知りつつ、こうして、こうなった


P R
    カビの生えない・きれいなお風呂
    
    お風呂物語