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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……

Mituo 
昨日という日は
歴史、
今日という日は
プレゼント
明日という日は
ミステリー

 
 
 
 
誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



宇宙戦艦ヤマト OP FULL 』



創価学会との繋がり、覚醒剤所持に、
清純派アイドルとの不倫愛……etc.
悪漢プロデューサーの明と暗の人生!!


『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男
西崎義展の狂気』(講談社


西崎義展という男の濃厚かつ波瀾万丈すぎる人生を、
そして過剰すぎるエネルギーが注がれたからこそ
宇宙戦艦ヤマト』が一大ムーブメントを
巻き起こしたことを解き明かしたノンフィクション本。

この男がいなければ、日本のアニメ文化は
ずいぶんと異なるものになっていたに違いない。
機動戦士ガンダム』はあれほどのハイクオリティーの
作品に仕上がっていなかったかもしれない。
新世紀エヴァンゲリオン』は作られていなかったかもしれない。
そして、何よりも第1次アニメブームを巻き起こした
宇宙戦艦ヤマト』は誕生していなかった。
この男の名前は西崎義展(にしざき・よしのぶ)。
職業はプロデューサー。

西崎義展が原案・製作総指揮を務めた
宇宙戦艦ヤマト』のテレビシリーズ&劇場版の
与えた影響力はそれほど大きく、
アニメ界の常識を次々と破った。

1974年に『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ放映が
始まったことで、アニメ番組の視聴者は
大人へと成長していくに従ってアニメからは
卒業していくもの、というそれまでの固定観念
覆された。
松本零士が描いたキャラクターと
メカデザインのフォルムの美しさ、
高揚感を煽る宮川泰の音楽、
放射能汚染という環境問題、
地球滅亡まで1年間というタイムリミットの設定、
そして未知なる宇宙へ旅立つという
壮大なロマンに、オタクという言葉が
まだなかった 70年代の元祖オタクたちは
夢中になった。

だが、その一方で西崎義展ほど悪名の高い
プロデューサーもいなかった。
『ヤマト』シリーズ以外の作品はヒットさせることができず、
80年代には人気が低迷。
97年と99年には覚醒剤所持と銃刀法違反で逮捕され、
2007年まで獄中生活に。

そして、キムタク主演の実写版
SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10)の
公開直前に小笠原の海で事故死を遂げている。
西崎が最期に乗っていた船には
「YAMATO」と名前が付けられていた。

アニメ業界に参入したばかりの西崎と
“漫画の神様”手塚治虫との接触が描かれ、
読者の心をいきなり鷲掴みにする。
西崎はアニメの世界に入る前は、
創価学会系の音楽団体「民音」からの仕事を
請け負う芸能プロデューサーだった。だが、
独断専行と女癖の悪さが祟って、欧州へ逃亡。

ほとぼりが醒めた頃に帰国するも
芸能界に居場所はなく、
そこで目をつけたのが黎明期にあった
アニメ業界だった。
芸能界や創価学会の強者、
各地の興行に絡む暴力団との交渉を
日常業務としていた西崎にとって、
アニメ業界はいくらでも付け入る余地のある
牧歌的な新大陸だった。

性善説を信じる手塚治虫が設立した
虫プロに潜り込んだ西崎は、
まさに羊の群れの中に紛れ込んだ一匹の狼だった。
ピカレスクものを読んでいるような、
ワクワク気分にさせられる。

手塚治虫の金銭感覚のなさから
虫プロは経営難に陥っており、
子会社・虫プロ商事で経営立て直しの
役割を求められた西崎は持ち前の
口のうまさと押しの強さで、『ふしぎなメルモ』の
アニメ化を大阪の朝日放送に売り込むことに成功。

ヒロインの体が急に大きくなったり、
小さくなるシーンにセクシャルな匂いを
子ども心に感じさせた『ふしぎなメルモ』に
西崎が一枚噛んでいたことに妙に納得してしまう。

さらに音楽畑出身の西崎は三和銀行と提携した
ワンワンミュージカルアニメ『ワンサくん』を企画する。
ワンサを逆さにするとサンワになる。
ワンサくん三和銀行マスコットキャラクターにもなり、
虫プロにキャラクター使用料が入ってきた。

西崎はアイデアマンであり、若い頃に
舞台俳優を目指していただけに会議でのプレゼンが
抜群にうまかった。
手塚治虫の信頼を得た西崎は虫プロを掻き乱し、
虫プロ倒産が確実なものになると混乱に乗じて、
海のトリトン』のアニメ化権を自分のものにしてしまう。
西崎は才能ある人間を見抜く能力にも優れていた。

富野由悠季監督は『海のトリトン』で
監督デビューを果たすことになる。
富野監督は虫プロで火事場泥棒的なまねをした
西崎とは距離を置くが、その後
宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットを目の当たりにして、
機動戦士ガンダム』を『ヤマト』以上の作品にしようと
西崎への敵愾心をメラメラと燃やすことになる。

さらに、『ヤマト』放映時に中学2年生だった
庵野秀明監督は、
アニメの世界から卒業することを見送る。
70年代の『ヤマト』、80年代の『ガンダム』、
90年代の『エヴァンゲリオン』は、
言うなれば西崎を起点にした連鎖する
エネルギー運動だったのだ。

虫プロでアニメ製作への手応えを感じた西崎は、
自社「オフィス・アカデミー」でいよいよ
宇宙戦艦ヤマト』の製作に着手。
アニメはお金を稼ぐための手段として
考えていた西崎だが、彼は単なる詐欺師ではなく、
希代の博打師だった。

自分の持てる情熱と人脈のすべてをオリジナル作品
『ヤマト』に張った。
優秀な人材にはお金に糸目をつけずにスタッフに加えた。
若手時代の安彦良和も『ヤマト』に絵コンテで参加し、
西崎から放出されるエネルギー量に驚いている。

「世間的にはアニメなんか隅っこ産業で、
恥ずかしがりながらやるもんだと思っていたからね。
でも西崎さんを見て、いい大人が
本気でやってもいいんだと思わされた。
真剣にアニメに取り組んでもいいんだとね」。
西崎は連日連夜にわたって会議を開き、
スタッフがいいアイデアを提案すると
ちゃっかり自分の意見として取り入れた。
だが、そうすることで『ヤマト』はますます
面白い作品となった。

後に覚醒剤所持で捕まる西崎だが、
徹夜の会議でも疲れ知らずだったことから、
すでに何らかの薬物を使っていた可能性がある。
西崎には世間やアニメ界の常識は通用しなかった。
すべては『ヤマト』をより面白くし、
大ヒットさせるためだった。

本書は、西崎が手掛けたアニメ作品の評論には
誌面を割かずに、創価学会との繋がりや
暴力団と交流があったなどの実話系雑誌好みの
エピソードをふんだんに盛り込んでいることにある。

創価学会で暗躍した山崎正友弁護士とも
太いパイプを持っていた西崎は、
テレビシリーズの再構成にすぎなかった『ヤマト』を
全国の映画館で上映するために、
創価学会系の団体「民音」で前売り券を
30万枚さばいてもらった。また、
住吉会系の組長の葬儀に西崎は100万円の香典を
届けたなど、アニメ史の裏側が明かされている。

英雄、色を好む。西崎の女性問題にも言及している。
愛人を秘書にし、秘書を愛人にした。
5~7名の女性秘書を連れ、
その半分とは愛人関係にあった。
海外出張先にも愛人を同伴し、
映画界の大御所・舛田利雄監督からたしなめられるが、
改まることはなかった。

西崎は全力で遊び、全力で働いた。
そして遊びと仕事に境界線を引くことをしなかった。
秘書だけでなく、アイドルタレントのH・Y、
清純派としてならしたI・Mとも愛人関係にあったとある。
数々のテレビドラマに出演したI・Mは
既婚者である西崎と本気で結婚を望んでいたそうだ
。I・Mの目には、西崎は猛烈にエネルギッシュで
セクシーな男に映っていたことだろう。

西崎は『ヤマト』の敵キャラ・デスラー総統に
自分が似ていることを自慢していた。
確かに美しいものを愛し、逆らうものには
容赦しないデスラーは、見た目も性格も
西崎にそっくりだ。そして、
デスラー率いるガミラス帝国が滅亡していったように、
アニメ界の風雲児・西崎も没落していく。

本田美奈子を主演に起用した実写映画
パッセンジャー 過ぎ去りし日々』は不発に終わり、
その後も増え続けた借金は約 80億円に膨れ上がり、
破産宣告。さらに覚醒剤所持に
自動小銃などの大量の武器を自宅マンションの
地下駐車場に隠していたことで刑務所送りに。

松本零士と『ヤマト』の著作権をめぐり、
獄中裁判を開くことになる。
転んでも、派手好きな性格はまったく変わらなかった。
西崎という男は一体何者だったのだろうか。

獄中にいた西崎の減刑を求めた阿久悠
(『真っ赤なスカーフ』の作詞家)が
裁判長宛に送った嘆願書の中の文面が、
西崎の人物像を的確に語っている。

西崎は個人プロデューサーとしての功績が大きい。
企業社会の日本では社員プロデューサーがほとんどで、
映画がコケても責任をとることはない。
だが、個人プロデューサーは責任をひとりで
全部背負い、作品が当たれば長者、
外れれば借金生活という
ギリギリの人生の中で、
西崎は『ヤマト』によってアニメ文化を広め、
多くの才能を生み出していったと。
人気作詞家だっただけに、阿久の書いた
嘆願書には唸らせられる。

西崎が小笠原で事故死を遂げた際、
虫プロ時代から付き合いがあった
アニメーター・山本瑛一が東京新聞に寄せた
手記も印象的だ。

「彼は音楽のプロだったが、アニメはまったく
知らなかった。
会議で、私が文句をいいだすと、
『ちょっと待って』と全員を部屋から出し、
バタッと土下座して、『教えてください』と額を
床にこすりつけた」
「たしかに彼にとっては、アニメは金もうけの手段で、
それも上手ではあったが、作品づくりになると寝食を忘れ、
異常なまでの熱の入れようだった」。

赤坂のデスラーを自称し、愛人たちをはべらせ、
高級車やクルーザーを乗り回した西崎だったが、
自分が手掛ける作品を面白くするためなら
プライドを棄てて、年下のスタッフに
頭を下げることができた。悪魔のような純情さを
持ち合わせた男だった。
これほどまでの情熱を作品に注ぐプロデューサーは
今の映画界、アニメ界にどれだけいるだろうか。

Author :長野辰次

ピカレスク小説
社会の下層に位置する主人公が、一人称で
自己の遍歴や冒険を物語る小説形式。
挿話を重ねていく構造を持ち、
時間、空間がパノラマ式に変転していくのが特徴。
ピカレスクとは、「悪党」「ごろつき」の意の
スペイン語ピカロ(picaro)より。』




『幸せになります 城之内早苗 -石井めぐる- 』




『魚の匂いのする町』

飯島沙代子は幸せだった。五年前に結婚。
夫の忠志は大手の損害保険会社の管理職。
この不景気の中でもリストラされることなく、
かなりの給料をもらっている。子供はまだいない。
でも、そのことに執着してはいかなった。
両親も、「できるときにできるわよ」と
言ってくれている。 事実、沙代子自身も
両親が結婚8年目授かった子供だった。
でも、今回、初めての不安が沙代子を襲った。

忠志が転勤になったのだ。
損害保険会社のサラリーマンに転勤は付き物。
忠志は36歳で、すでに6回目の異動。
結婚式を挙げた翌月にも転勤の辞令を受けた。
「せっかく社宅の壁に似合ったレースのカーテンを
買ってきたのに・・・」と ブツブツ言いながら
引っ越ししたことを覚えている。
それでも同じ関東圏なので、その気になれば、
いつでも実家の両親もに顔を出せる距離だった。

今回は、瀬戸内の小さな町への転勤だった。
左遷ではない。 忠志はその町の支社長に出世した。
喜ばなければならない。でも、沙代子は
学生時代を通じて、東京を離れたことがなかった。
もちろん旅行ではあちこちに出掛けたことがあるが、
「住む」のは初めてだ。

内示が出た日の夕食のとき、
「誰も友達がいないし・・・淋しいなぁ」と、漏らした。
忠志は、「一緒になるとき、全国どこでも
行かされるって言ったろ」と言われ、ムッとした。
わかっている。わかってはいるが・・・。
(私の気持ちもわかってほしい)
しばらく口も聞かなかった。

引っ越して二日目の午後、社宅の管理人さんに
教えてもらった駅前の公設市場に買い物に出掛けた。
必要なものは、ここで何でも揃うという。
大きなスーパーは、車で10分走らないと行けないらしい。
沙代子は、なんという不便な町だろうと思った。
まずは今晩のおかずだ。
さすがに港町。新鮮な魚が並んでいる。
店主が刺身にしてくれるというので、
小ぶりのアジを買った。

忠志は、毎晩晩酌をするので、缶ビールを2本。
他にも、八百屋でニンジン、玉ねぎ・・・。
乾物屋でしょうゆ、ポン酢。いつの間にか、
両手は小さなレジ袋で一杯。
買い物をしているうちに、物珍しくて
旅行に来ているような気分になった。

「ねえねえ、お姉さん」 「・・・?」
声のする方を向くと、パン屋のおばさんが
笑顔で呼びかけていた。
「これに入れていきなさいよ」
「え!?」
「そんなに一杯持って、たいへんでしょ」
おばさんが差し出したのは、大きな手提げの
紙袋だった。
新品ではない。 何度か使われたものらしく、
上の角が少し破けている。ちょっとためらった。
「いえ、買い物もしてないし・・・」

「いいから、いいから」そう言うと、おばさんは
沙代子から両手のレジ袋を取り上げるようにして
紙袋に詰め込んだ。
こういうのを親切の押し売りって言うのかな、と思った。
「あ、ありがとうございます。じゃあ悪いから
パンを買ってくわ」
「いいのよ、いいのよ、無理しなくても。
今度いらっしゃい」
「でも・・」と言い返そうとしたが、
おばさんはもう他のお客と話を始めていた。

ふと時計を見ると、知らぬ間に5時を回っていた。
忠志は、ひょっとすると今日は会社で
歓迎会をしてくれるかもしれないと言っていた。
出掛けに、「遅くなりそうだったらさ、メールするよ」と
言っていたことを思い出した。
沙代子は、ケータイをバッグから取り出そうと思って
ハッとした。「あれ? ない・・・」
右肩に掛けていたはずの小さなバッグがない。
ひょっとしてと思い、さっき入った市場の中の
トイレを見に行く。しかし、個室にも、洗面にもなかった。
中にはケータイだけでなく、クレジットやキャッシュカードが
何枚も入った皮のカードホルダーが入っている。

冷や汗が出た。 あれが無くなったらたいへんだ。
そういえば、出掛ける前に、紐が緩かったので
一度はずして長さを調節した。
きちんとはまっていなくて、紐がスルッと解けて
肩から落ちてしまったのかもしれない。
家を出たときからの道のりを思い返そうとするが、
気がはやるばかりでボーとしている。
もし、どこかで落としたとして・・・誰かが悪用したら・・・。
すぐに、カード会社に連絡しなくちゃ。
でも、ケータイもバッグの中だ。どうすることもできない。

市場の中をぐるぐると見回していたら、
先ほどアジを買った魚屋のおじさんが、
奥から声をかけてきた。
「奥さん!何か探してるのかい?」
「はい・・・あの・・・バッグを落としちゃったみたいで」
「どこで?」
おじさんは、魚をさばく手を休め、店先まで出てきてくれた。
「はい、たぶんこの市場の中だとは思うんですけど・・・
それもはっきりしなくて」
「どんなヤツだい?」
「は、はい。ベージュの肩から掛けるタイプのもので・・・」
「大きさは?」
「あ、あの・・・これくらいかな。週刊誌くらいの大きさで」

「よし、わかった」そう言うと、おじさんは突然、
公設市場の中を貫く通りの真ん中に立って叫んだ。
「お~い、みんな!聞いてくれ~。  
このくらいの大きさのバッグが落ちてないか探してくれ~」
おじさんは、そのまま市場の中を走って
大声でみんなに知らせながら行ってしまった。

その場に立ち尽くして思った。
忠志に連絡だけでもしなくちゃ、と。
幸い、小銭入れは持っている。魚屋のおかみさんに聞いた。
「すみません、近くに公衆電話はありませんか」
干物を並べる手を休め、
「いいよいいよ、コレ使いなさい」と言い、
壁に掛けてある集金袋からケータイを取り出して
沙代子に差し出した。
「でも・・・」
「いいのよ、困ってるんでしょ」
「はい、ありがとうございます」慌ててると、
普通のこともできなくなる。
忠志のケータイの番号を何度も押し間違えながら
親指を動かした。
電話の向こうに忠志の声が聞こえた。
「おお、どうした」

その時だった。遠くから魚屋のおじさんが
手を振るのが見えた。
「お~い、これじゃないか~。
パン屋のおばちゃんが落し物だと思って
預かってくれてたよ~」
目頭が熱くなった。
借りたケータイから、魚の生臭い匂いがした。
でも、それが、とても親しみのある香りに感じられた。
この町が好きになりそうだった。
耳元では、忠志が心配そうに呼ぶ声が
何度も聞こえた。…

Author :志賀内泰弘


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる