流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場一樂編

妄想劇場一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



作詞:たきのえいじ・作曲:杉本眞人
歌・湯原昌幸


一度だけの人生と
誰もが口にするけれど
悔やんじゃいない この生き方を
急がば回れの夢がある

桜 桜 冬桜
春に背いて咲くがいい
桜 桜 冬桜
歩いた道を 恥じるなと
ただひそやかに 心にそっと
ふり注ぐ

『冬桜』


湯原 昌幸(ゆはら まさゆき )は
歌手、俳優、レポーター、パネラーなどをこなす
マルチタレント。
本名は桜井昌幸。妻は、タレントで女優の荒木由美子


『コンビニ物語』
「もしもし、武藤信也さん?」 「はい」
「ひょっとするとカサが返ってきたかもしれないから、
ちょっと見に来てもらえんかな」
「え!?・・・ああコンビニのおばさん」

それは、3日前の日曜日、昼前のことだった。
夕飯を買いに出掛けようマンションのドアを開けた。
ちょっと雲行きが怪しい。面倒ではあったが、
カサを手にして出かけた。
彼女から去年の誕生日にプレゼントされた
ブランド物のカサだった。
5階の部屋からエレベーターで下りると、
小雨がパラつき始めた。
「おっ、大正解!」
カサを広げてコンビニへ向かった。
おにぎりを二つと500ミリリットルのペットボトルのお茶。
それに、サバの味噌煮の缶詰をカゴに入れた。
レジへ行きかけて雑誌コーナーに目が留まった。
若者向けの男性雑誌の新刊が出ていたのだ。
いつもは会社の近くの喫茶店で読む。
ついつい連載マンガの続きが気になり立ち読みした。

これがいけなかった。気づいた時には、
外は土砂降りになっていた。
レジでお金を払って外へ出る。
帰ろうと思ってカサ立てを見ると・・・。ない。
つい先ほど、ここへ立てておいたカサがないのだ。

「やられた!」辺りを見回したが、
信也のカサを指している人は認められなかった。
信也は今まで何度も経験していた。
バチンコ屋、居酒屋、学校でも。
世間では、カサを忘れたら、
そこにあるカサを勝手に持って行くことに
抵抗がないらしい。間違いなく、それは泥棒だ。
犯罪だ。盗られた人の気持ちがわからないのか。
ひょっとすると、自分も盗られたことがあるので、
仕返しの気持ちで気軽に盗るのか。
だんだん腹が立ってムカムカしてきた。

言っても無駄だと思いながらも、
入り口近くで商品棚の整理をしていた
バイトの女の子に訊いた。
「ここに差しておいた私のカサ知りませんか」
「え?」 「グリーンとベージュのチェックで、
イタリアのブランドの・・・」 「ないんですか?」
「ええ、誰かが持っていったみたいで」
店の女の子が、レジを打っていたオバサンの方を向いて
大声で言った。
「浅野さ~ん、この人、カサを盗まれちゃったってぇ~」
(おいおい、そんなに大きな声で)と思ったが、
店内にいた5人くらいの客が信也の方に目を向けた。
「浅野さん」と呼ばれた、六十過ぎのオバサンは、
「あら、たいへん」と言って、
入り口のところまでやってきた。

「どれどれ、どんなカサ?」面倒だったが、
もう一度カサのデザインを説明した。
「似たようなカサと誰かが間違えちゃったんじゃないの?  
よくあることなのよ。私もさ、この前、
おじいさんの法事のときにね、  
靴を間違えて履いてきちゃってね。
どうもおかしいと思ったのよお~。  
何だか窮屈な感じで。家まで帰ってきて、
脱いだ時に初めて気づいたの。  
あら、似てるけどコレ、私のじゃないわって・・・」

「あのですね。靴の話じゃなくて・・・
それに間違いは絶対ありえません!」
「あらあら、ごめんね。でもさ、人間なんだから、
間違いはあるものよ」
「見てください」信也は、オバサンを外に連れ出した。
そして、カサ立てに、一本もカサがないことを
見せてやった。
雨は、ついさっき降り出したばかりなのだ。

「・・・」 (そら見ろ)と、信也は
「してやったり」という気分でオバサンの顔を見た。
もっとも、それでカサが返ってくるわけではないが・・・。
「そうそう、あなた。お客さんが忘れていったカサが  
何本かお店の奥にあるのよ。それを持って来てあげる」
「いいですよ」
「遠慮しなくてもいいのよ。そうだ!」と言うと、
オバサンは店の中に戻り、 店内にいる
お客さんたちに向かって大声で呼びかけた。

「すみませ~ん、みんなさん。カサをお貸ししますから、  
必要な方はレジで声をかけてね~! 
でも、後で返してくださいね~」
オバサンは奥から何本かカサを手に戻ってきた。

「あなた、これ使いなさい。
ちょっと骨が折れてるけど濡れなきゃいいでしょ」
「ありがとう」
「それからさあ。あなたのケータイ教えてよ」
「え?」
「カサが見つかったらさあ、電話するから」
「そんなの無理ですよ。ありえません」
「だからさ、間違ったのかもしれないしさ。
私の靴だって・・・」

信也はそこから先の言葉をさえぎるようにして、
「わかりました、わかりました。
番号のメモを書いときます」
信也は、どこの誰だかわからないカサ泥棒に
怒りを込めて、 ドアをバンッ!と叩くようにして店を出た。

そして、3日後の夕方のことだった。
仕事中に、あの「浅野さん」とかいうオバサンから
ケータイに電話が入った。
「ひょっとするとカサが返ってきたかもしれないから、
ちょっと見に来てもらえない」
まさかとは思ったが、仕事の帰りに
コンビニに立ち寄ることにした。
夕飯もついでに買うつもりで。 店の前まで来て、
入り口の脇に大きな張り紙があるのに気づいた。
映画のポスターくらい大きな白い紙に、
マジックで手書きの文字があった。

お客様へ
間違えてカサをお持ち帰りになられた方が
いらっしゃいます。よくあることのようです。
グリーンとベージュのチェックの柄です。
持ち主の思い出のカサとのことです。
似たようなカサをお持ちの方は、 一度
お確かめくださいませ。  
店主敬白

その張り紙の下のカサ立てには、
見覚えのある信也のカサが一本刺さっていた。
奥のレジから、オバサンが
手を振っているのが見えた。


……終わり

Author:志賀内泰弘




Mituo 人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ 

 
 


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



『 お弁当と涙 』 

 


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば言い訳になるから……