流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……
 

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『空缶物語』
我輩は空缶である。名前は・・あるわけがない。
名前はないが、あえて言うなら、
「商品名」というものがある。
朝霧高原まろやかミルクたっぷりのカフェオレ」だ。
朝霧高原なるところに行ったことはないが、
なかなか良いところらしい。一つ秘密を明かそう。
人間さまの知らない話だ。

我輩には一つ、特技がある。魔法を使えるのだ。
それは、どんな魔法かと言うと・・・。
カーン!!!「イテッ!わあお~」
白いスニーカーに蹴飛ばされた。
見事に10メートルほど飛ばされたかと思ったら、
大きなクスの木にぶち当たった。
「痛て、痛て、痛ててて・・・」と言っても
相手には聞こえない。何しろ我輩は空缶なのだから。
今日はこれで50回以上も蹴られている。
それもそのはず。子供たちが我輩を
遊び道具に使っているのだ。
そう、「缶蹴り」である。

そもそも我輩がこの公園に来たのは
1ヶ月も前のことだった。
サラリーマンが自動販売機で我輩を買い、
ベンチに座ってグイッと飲み干した。
その後がいけない。ベンチの下に、
ポッと放り込むとサッサッと行ってしまったのだ。
頭に来た! そこで、そいつには
罰を与えることにしてやった。
たぶん会社へ戻ると、課長に叱られているはずだ。
リストラでクビにしてやろうかとも思ったが、
ちょっと可愛そうなので止めておいた。
ああ、我輩はなんて優しいんだろう。

カーン!「イテッ!」 ああ、まただ。
もう暗くなってきたぜ。そろそろ、みんな家に帰れよ。
・・・てなことを言っても通じるわけもないか。
何せ我輩は空缶なんだから。「バイバーイ!」
「バーイ」えええ!? 
おやおや・・・。言ってみるもんだな。
ようやく終わりにしたらしい。
子供たちが帰って行く。
なになに、塾へ行くって? 可哀相に・・・。
まあ頑張れよ。今晩は冷えそうだな。
元々、我輩はホットで売られていたから、
寒さが苦手だ。 こんな吹きっさらしの公園の片隅で、
ポツンと一人夜を過ごすのは正直言って寂しいなぁ。
でも、我輩は空缶だ。仕方ないなぁ。

「エ、エ、エエエ!?誰だよ、
我輩を持ち上げるのは」
見れば、男の子だ。
さっきの子供たちの中にいたっけな。
この子に蹴られた覚えはないなぁ。
缶蹴りはしてなかったのかな。

「うん、ボクは缶蹴りしてないよ」
「え!?」なんてこった。
聞こえるはずがないのに、
この子は聞こえるのか?我輩の声が・・・。

「ずっと見てたんだよ、みんなの缶蹴りを」
「本当かよ。びつくりしたぜ。
そう言えばウワサには聞いたことがある。  
ごくごく稀に、我輩たちの声を
聞くことができる人間の子供がいるらしいってことを」
「さっきからさ、痛い痛いって叫んでたでしょ」

「おお、そこまで聞いてたのか」
「うん」
「痛いに決まってるだろ。
見てみろよ、このベコベコの腹や頭を。  
プルトップも取れてどこかへ行っちまった」

「どろどろだね」
「そういやあ、そうだ。昨日の雨のせいで、  
ここら当たりは水たまりがあちこちにできたからな。  
我輩も何度もその中に落ちて汚くなっちまったよ」
「洗ってあげるよ」
「何だって?」
「そこに水飲み場があるからさ!」
「おいおい、いいよ・・・
ああっ冷た~い、ああブルブルッ」
「ああ、ごめんごめん。そうだよね。  
汚れているのも嫌だろうけど、寒いのも嫌だよね」
「いやあ、いいってことよ。
こんなに人間様に親切にされたのは
初めてのことだからな。  
でもな、キミはどうして缶蹴りをしなかったんだよ」
「・・・」
「あ、我輩は聞いちゃいけないことを聞いちまったかな」
「ううん、いいよ。たぶん想像通りだからね」
「え?」
「ボクさ、イジメられてるんだよね」
「みんなにか?」
「ううん、本当はみんなじゃないんだ。  
さっき缶蹴りしてた中にさ、ものすごく強くて
いじわるなヤツがいてさ。  
そいつがボクのことを最初にイジメたんだ。  
筆箱を隠したり、給食のごはんに砂を入れたり・・・」
「すげえヒドイなぁ」
「うん。みんなはそいつの言いなりでさ。
仕方がないんだよ」

「よし、じゃぁな我輩が何とかしてやろう」
「え? なんとかって」
「我輩はな、魔法を使えるんだ。  
我輩をな、拾ってゴミ箱に入れてくれた人間様には、
夢を一つかなえてやることができるんだ」

「夢・・・」
「うん、夢だ。どんなことでもいいぞ。
将来、大リーガーの選手になりたいとか、  
宝くじで3億円当てたいとか・・・
おっと、そういう夢は大人に多いけどな」
「別にボクないよ」
「そんことないだろう」
「ううん、別にいいよ」
「よしよし、じゃあな、こうしてやろうか。
キミをイジメるって言ってたヤツを転校させてやろうか?」

「本当?」
「おお、本当だ。それでいくか?」
「・・・ううん、そうだなぁ」
「おいおい、どこへ行くんだよ。
すぐ目の前にゴミ箱があるじゃないか。  
そこにポーンと我輩を捨てたら、夢がかなうんだぞ」

ええ?! ここはどこだい。何だって?キミの家だって。
おいおい、家の中に我輩を連れ込んで
どうしよっていうんだよ。
「リョウちゃ~ん、遅かったわね。
ごはんだから手を洗って来なさい」
おお、キレイなお母さんじゃないか。優しそうだし。
「おいおい、早く捨ててくれよ。
キミの家のゴミ箱でもいいからさ」
え? なんだよ。勉強机の上に我輩を置いて・・・
コンッ!ええ? なんだ、なんだ?
飲み口にボールペンなんか差し込んで。それも2本も・・・。

「あのさ、空缶さん。夢なんかいいからさ、
これからもボクの話し相手になってよ。  
じゃあ、ちょっと夕ご飯食べてくるから後でね・・・」
「おいおい・・・」

終わり

Author:志賀内泰弘



『限られた人間が持つ不思議な能力!』

 


人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



 

P R
  カビの生えない・きれいなお風呂


  お風呂物語

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