流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……

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今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

 

Kanshin021111 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 


 漢の韓信-(105)


いったい漢王はなにを思って生が斉へ行くことを
許可したのか。どうして通はこうも食い下がるのか。
田氏を生かしておいてよいものか。
なぜ自分は迷うのか。いくら考えても
納得のいく答えは出ず、いたずらに時間が流れていった。

「将軍……」ここで蘭が二人の論争に割って入り、
どうやら解決への糸口が見えたようであった。
「漢王の意図をお考えになるのが、
ここは先決かと……。
将軍に討伐の勅令を出したことを漢王がお忘れになったとは、
思えません。
それでいて食其さまを派遣されたのは、
やはり将軍に短期間で斉を平定してほしい、
という思いの現れではないかと存じます」
韓信はため息をつきながら言った。

「先生のいうことが正しい、というのか。
生もろとも斉を叩け、と……」
「斉王は食其さまの弁に傾聴し、今はその意見に
従っているようですが、もし楚の弁士が現れて
まったく逆のことを言えば、簡単に
態度を豹変させるかもしれません。
斉王を生かしておけば、常にそのような危険が生じるのです。
通さまが、弁士に国を変えることはできない、と
言うのはこのことでございましょう」
「しかし」「食其さまはご老齢に似合わず、俊敏な方。
身の危険を感じれば、自分で自分の身を守ろうとするでしょう。
それでも身を守れなかった際には、
将軍はそれを理由に斉を潰せばよいのです。
食其さまは、きっとそれを望んでいます」
「ということは……やはり彼は死士だというのか。
しかし、なぜそのように命を粗末にする必要があるのか? 
そんなにまで死にたいものなのか」
「……食其さま本人が選んだ道です」
蘭は暗に食其は助からない、と言っているようで、
韓信は覚悟を決めざるを得なかった。

韓信の戦い方は、常に相手の裏をかく。
武を競い合おうとする相手に肩すかしを食らわすような戦法は、
当時でも賛否が分かれたものであった。
しかしこのことを批判する者は物事の
本質を見る目を失っていると言うべきである。
現代においても「戦争とは正当に認められた
政治的手段のひとつである」と言う者が存在するが、
たとえそうであったとしても戦うこと自体が
最終目的であるはずもない。

戦争とは、次の世を生み出すための過程である。
そうである以上、それを必要以上に美化しては
ならないのである。
しかし時代や国を問わず、武人というものは
自ら指揮する戦争自体を美しく表現したいと
考えがちなものである。
時にはその結果が敗北であったり、
玉砕であったりすることもあるが、
彼らにとってそれよりも大事なことは
強大な敵と雄々しく矛を交え、怯むことなく
戦ったという事実であった。
実に底の浅い、罪深い人物達だと
言えるのではなかろうか。

平原(地名)から済水を渡り、
斉国内に侵入を果たした韓信率いる軍勢の
進軍速度は、快調そのものであった。
城の内外に守備兵がほとんどいないということは、
軍を向ければ必ず城が落ちるということであり、
人命や時間を無駄に損なうことないので、
韓信としては大いに助かる。 
時間がかかれば、敵に迎撃の機会を与えることのほか、
糧食の問題も発生する。
糧食の問題が発生すれば兵の士気にも関わり、
それが深刻な状況に陥れば餓死する者も出てくる。
そんな軍が戦に勝てるはずがない。

韓信の軍が斉に至り、そのような問題に
直面せずにいられたのは、他ならぬ
食其の功績であった。
韓信としては、なるべく食其を救出し、保護したい。
できれば危機を察知して脱出していて
もらいたかったのだが、首都の臨に間近に迫った今でも
斉軍の反撃が散発的なことは、食其がまだ臨に残っていて、
斉王相手に説得なり工作なりしていることの証拠であった。

つまり、食其は助からない。そうと知っていても、
今さら進軍を止めることはできなかった。
ここで軍を引くということは、せっかくの
食其の功績を無にすることであり、
ひいては劉邦の意に背くことになる。
私情にかられて中途半端な侵略行為で終われば、
食其が斉王に殺されるばかりでなく、
自分も劉邦に殺されるかもしれなかった。

結局は、自分の命が惜しい、ということか。
韓信はそう思い、自らを嘆かざるを得ない。
しかし一方で、人として生を受けたからには、
それを惜しみ、大事にするのは当然のことだ。
なにを思い悩む必要がある?
などと開き直ったりもするのだった。
生のような達観した死生観を持つ男は、
このような感情のせめぎ合いとは
無縁でいられるのであろうか。
だとすれば尊敬すべき生き方ではあるが、
自分がそれに倣おうとは思わない韓信であった。

生は、死して名を残す……。
彼のような男に比べたら、自分は単なる軍人に過ぎぬ。
その単なる軍人ができることと言えば、
せいぜい長生きして、敵兵を一人でも多く
殺すことしかない。
自分は生きて名を残すしかないのだ。
韓信の食其に対する思いは、
さまざまな過程を経ながら、結局最後には
自虐的に自分を評価するところで帰結した。

つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


「悲しい酒 」美空ひばり





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる

P R
カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語        

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