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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・一樂編

妄想劇場・一樂編

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー



Mituo
人の為(ため)と
書いて
いつわり(偽)と
読むんだねぇ 

 

 
 
ごめんね』Author:篠原正子

「ごめんね」 あんたの頭を撫でながら
母さんは言ったね。
もういい加減な年のおっちゃんになったあんたは、
母さんを許してくれるだろうか。

三十六年前、我家を選び、
知的障害のある子として生まれて来たあんた。
医師に「三歳位までしか生きられないでしょう」
告げられた言葉に、 胸が締め付けられ
何をどうして良いのか分からなかった。

でも婆ちゃんが、
「命ばもろうて生まれてきたっちゃけん、
皆で頑張って育てよう」 そう言ってくれた。
短命ならば精一杯の愛情を注ごうと
決心して育ててきた。

あんたは体が弱くて何度も生死をさ迷い、
徹夜の看病もしばしばでした。
合併症もあり小さな体、細い血管、
入らぬ点滴の針はどんなにか痛かっただろうね。
その度に、生きようとするあんたの
強い心が死を遠ざけ、
短命の言葉をはねのけてきた。

この三十六年の間、
夫婦の危機や姑とのいざこざも、
仕事が不調な時も、
あんたの真っ直ぐな心と澄んだ目が、
どれだけ母さんたちを支えてくれただろう。

そんなあんたに手を挙げてしまった母さん。
あんたの予想しなかった早めの老化現象と、
母さんの思い通りにならぬ、
あんたの行動に腹を立て、イライラが爆発

「あんた、そぎゃん言うこと聞かんなら、
もう施設に帰らんね、うちにおらんでよかよ」
暴言を吐き頭を叩いてしまったね。

そしたらあんたは、驚いたように母さんを見て、
「僕は帰ります。園に帰ります」
小さな声で言いました。
その夜、母さんは布団の中で長いこと
大きな声で泣きました。
虐待にも似た仕打ちを何でしてしまったんだろう。
あんたさえ居なければと思ったりしたんだろう。
「ごめんね、ほんとにごめん」
この手紙書いても読めないあんただけど……
あんたが大好きだよ、
そして母さんを許すと言って欲しい。


《終わり》



『ガロシエゴ』アルゼンチンタンゴ




Author:中野敏治


「元気になるために手術をしてくるからね」
ある日、一人の生徒が学校を休みだしました。
足に痛みがあるからと、町の病院に行ったのです。
そこで診察をしたところ、すぐに
大きな病院を勧められました。
そして数日後、大きな病院で検査を受けました。
その間、彼はしばらく学校を休みました。

数日後に彼の父親が学校へ来ました。
その日は曇り空でしたが、父親は
サングラスをかけていたのです。
応接室で父親と話をしました。
応接室でも父親はサングラスを外そうとは
しませんでした。 父親の言葉に驚きました。

「息子の痛みの原因は、悪性の腫瘍でした」と
言うのです。 その場の空気は一変し、
時間が止まりました。
私は返す言葉がありませんでした。

父親は話を続けました。「最初の病院で腫瘍の
疑いがあると言われたとき、  
この医者は何を言っているんだと思ったんです。  
だって、小学校からずっとサッカーのレギュラーで、  
試合にもずっと出てきた息子ですよ。  
怪我はしても病気などしたことがない息子ですよ。  
その息子の足の痛みの原因が腫瘍だと言うんです。  
そんなこと、信じられますか」

少し、時間をおいて父親は話を続けました。
「大きな病院に紹介状を書いてもらって、  
その病院でいろいろ検査をしたら、  
やはり腫瘍があると言われたんです。  
信じられない、そんなの信じられない。  

今まで元気だった息子ですよ。  
信じろって言っても無理です」
なかなか外さないサングラスが気になって、
「そのサングラスは?」と父親に尋ねると、
「先生、恥ずかしいんですが、俺、
息子の病名が信じられずに、毎日涙が止まらず、
目が腫れてしまい、それでも涙が止まらないんです。  
腫れた目を隠すためにサングラスをしているんです。  

息子の方がもっと苦しいのに、情けないです。  
息子、冷静に医者の話を聞いていたんですよ。  
そして、サッカーはまたできるのですかと
医者に聞いているんですよ。  
生きてほしいんですよ、息子には」と言いながら、
父親はうつむき涙を流すのです。

彼は大きな病院でさらに詳しい検査をし、
手術のために専門の病院へ行くことになりました。
「手術するよ。でもその前に、一回、学校へ行きたい」 と、
彼は父親に頼みました。
そして、彼は手術の数日前に学校へ
両親と一緒に登校しました。
彼は、自分の病気のことをみんなに伝えたかったのです。

体育館に彼と同じ学年の生徒が集まりました。
学年の生徒の前に立って、彼は自分の病気のことを
話し始めたのです。
医者から聞いた自分の病気のことをすべて、
みんなに話したのです。
そして、これから手術のために、
また違う病院に入院することも。
しばらくはみんなと連絡もできないということも。

体育館はしーんとしました。
そして、涙を流す生徒もいました。
そしてみんなに、彼はこう言いました。
「大丈夫だから。元気になるために手術をするんだから。
みんな待っていて」

学年のみんなに自分の思いを伝えた後、
彼は家に戻るため、 学校の玄関に両親と向かいました。
彼は学校の玄関を出るとき、立ち止まり、
そして振り向いて、見送りに来た先生方に言うのです。

「先生、行って来るね。また帰ってくるから」
泣いてはいけない、泣いてはいけないと
思いながらも、 彼の言葉に両親も先生方も
涙があふれてきました。

本当は、一番不安で辛いのは彼なのです。
でも、彼は自分以上にみんなに、
特に、サングラスをずっとかけっぱなしの父親を
気づかったのです。

まだ中学生、でも彼は、こんなにも周りの大人に、
周りの仲間に気を遣い、 勇気を与えているのです。
彼の後姿を見ながら、大丈夫、大丈夫と
心の中で願いました。
一番、辛い時、 人はまわりに気を遣い
勇気を振りまく。
大丈夫、勇気ある人なら困難を乗り越えてくれる。

《終わり》



『Tango Flamenco』



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と言い訳になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R
カビの生えない・きれいなお風呂 

お風呂物語

Furo1