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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(95)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。

 漢の韓信-(95)滎陽脱出

紀信は劉邦が戦場に身を晒すとき、
その戦車に陪乗することを任務としていた。
劉邦の戦車は必ず夏侯嬰が御者として操縦する。
また、(ぼう)などの長柄の武器を用いて
主に劉邦の身を守るのが、参乗の樊噲であった。
紀信は弓を使って樊噲の矛の届かない範囲の
敵を射つのが役目であり、職名は乗長である。

身分の上下関係からいえば、
高位な順に乗長、参乗、御者の順であり、
紀信がいちばん上位であるはずである。
しかし、夏侯嬰と樊噲は漢軍の重鎮中の重鎮であり、
高貴さの度合いからいって紀信などは及びようもない。 
ここで本来の上下関係に逆転現象が起きた。
乗長の紀信がいちばん下っ端とされたのである。
しかし、当の紀信はそれを不満に思ったことはなく、
これを当然のこととして受け止めていた。

それというのも、車上から放つ彼の弓矢は敵兵に
命中することがまったくなかったのである。
彼は、幼いころから何をやっても人並み以上に
こなせたことがなかった。
家業の農作業を手伝っては、
鍬や鋤の柄を一本残らず折り、使い物にならなくした。
技術を要する仕事には向かないかもしれないと考えた両親が
学問を勧めたが、同じ間違いを何度もしてばかりであった。
遊び仲間と駆けっこをしても常に誰よりも遅く、
力比べをしても彼が勝てる相手は三歳も年下の
相手しかいなかった。

そんな彼が唯一自慢できるのは、度胸の良さである。
何ごとにも他人より先に挑戦する気概だけは
人一倍あるのだが、残念なことに挑戦の結果は、
すべて周囲を落胆させた。
だからこれは度胸が良いというよりは、
単に向こう見ずというべきだろう。
自分の能力の限界を見極めずに物事に取り組むあたり、
自己を客観視する能力にも欠けていたかもしれない。

結局唯一の自慢の種も他人に笑われる
原因となったのである。
人は彼のことを陰で「能無し」と呼び、
彼の家族は不器用な息子になにも期待をかけなかった。
父は紀信の顔を見れば溜息を漏らし、
母は常に小言を繰り返す。兄に至ってはなにも言わず、
ただ冷笑するだけであった。

嫂とは話もろくにしたことがなかったが、
陰で自分のことを「穀潰し」と呼ぶのを耳にしたことがある。
これは彼にとって「能無し」よりも屈辱的な言葉であった。

長じて漢軍に属してからも、たいして状況は変わらなかった。
夏侯嬰の馬の制御力、樊噲の武勇の陰にかくれ、
へたくそな弓を引き絞り、無駄に矢を消耗する日々が続いた。

彼が持ち場を変えられなかったのは、
豪勇を誇る樊噲がいる以上、弓手の存在自体が
さして必要ないからだけであった。
いてもいなくても構わない存在、というのが
紀信の自他ともに認める評価である。

しかし、男としてこの戦乱の時代に生まれた以上、
いつまでもそんな自分でいたくはない。
彼は家族からは白眼視され続けたが、
それなりに育ててもらった恩義は感じていたので、
仕返しと恩返しを同時に願った。

つまり、穀潰しと呼ばれた自分の軍功によって
家族が養われていくことを狙ったのである。
紀信は陳平の前に突如参上すると、一計を献じた。
「事態は急を要します。私が楚を欺き、
漢王と称して降伏を申し出るとしましょう。
その隙に大王は滎陽を脱出されるのがよろしいかと……」

さして能力もなく、自分自身に成長も
見込めなかった紀信にとって、
軍功をあげるためには自分自身の命を
投げ出すことしかなかったのである。

「私は、勇すくなく、才乏しき身。
これ以上生きながらえたとしても大王の
お役に立てることは少なかろうと存じます。
よって、このたびの策に志願したのですが……
事が成就した暁には、国もとの私の家族の安全を
保障していただきたく……
将来大王が天下を治めるに至った際には、
賦役も免除してやってほしいのです」

紀信は遠慮がちではあるが、それでもあからさまに
自分の希望を劉邦に伝えた。
沛のごろつきで、やはり一族から
疎まれてきた劉邦にとって、
紀信のような男が家族からどう扱われてきたか、
想像することは簡単だった。

こいつは、家族に感謝しているのではない。
見返してやりたいだけだ。
「約束しよう。思い返せば、
お前はわしの戦車に乗りながら、
ついに敵兵の一人も仕留めることができなかった。
しかし、それはもうよい。忘れろ。
わしもそのことは忘れることにする。……
いまからわしはお前のことを不器用な弓手としてではなく、
忠節の士として記憶に刻むことにする。
お前の家族もきっとお前を一族の
英雄と奉らねばならなくなる」



つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『お祭りマンボ』 美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


『夢追い酒 』美空ひばり




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

Furo1