流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(93)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 

漢の韓信-(93)

激しい戦争というものは、概して人を酔わせる。
しかし酔い方は人によって様々なものであり、
決して社会学的に論ずることのできるものではない。

大きな戦果を挙げた者が、それをきっかけに
突如人が変わったように居丈高な
振る舞いをするようになる例があると思えば、
苦境の中で自分の命をまるで石ころのように
投げ出すことで活路を見出す例も見受けられる。

韓信が趙に出征している間、
劉邦の率いる漢の本隊はまさに苦境にあったが、
それを救ったのは二人の死士であった。
しかし彼らは酔っていたのではない。
彼らは決して自暴自棄になっていたのではなく、
冷静な判断力を持っていた。
自らの能力の限界を知っていた彼らは、
死を選ぶことによって自らの名を
高貴なものにすることができたのである。

韓信がカムジンを誅罰したことにより、
皮肉なことに兵の間にはよい意味での緊張感が生まれ、
より軍隊らしい組織になっていった。
綱紀が粛正されたのである。
趙の民衆はそれを評価するようになり、
次第に恭順の意を示すようになっていった。

しかし当の韓信は決してそれを喜んだわけではなく、
カムジンを失った悲しみは容易に
癒されるものではなかった。
何をするにも物憂く、思考も集中力を欠く。
規律を正した兵たちとは逆に、
指揮官の韓信は行動力を欠くようになっていった。

カムジンを斬ったのは、明らかに見せしめである。
それが効果的であったことは確かだが、
自分にとって失ったものが大きすぎるように
思えたのだった。

「将軍……お気持ちは察しますが……
どうかご自分を責めずに……」
蘭は韓信を慰めようとしたが、
その口調もいつもより精彩を欠く。

それは今回の出来事が蘭にとっても
衝撃的であったことを物語っていた。
「不思議なものだ……幾千、幾万もの
命を奪ってきた私が、たったひとりの罪人のために
こうも心を痛めるとは……。

私はきっと最悪の偽善者であるに違いない。
カムジンをこの手で殺めたことは確かに悲しいことだが、
敵兵の命を奪ったときにはこんな感情とは
無縁でいられるのだ。
どちらも貴重な生命であることには変わりがないのに……」

「なにも不思議はございません。
人として正常な感情でございましょう。
人というものは死が悲しむべきこととは知っていても、
見知らぬ人の死にはまったく心を動かさないものです。
天下のすべての人の命が大事なものであることは
否定しませんが、そのすべてに感情を動かされていては、
とてもまともな精神状態を保てません」

「君の言う通りだ。しかし、
私の言いたいことは違う。
私はたとえカムジンが死んだとしても、
これほど自分が悲しむとは思っていなかったのだ。
もっと私は……自分のことを
冷淡な男だと思っていた。
もっと感情を自分で調節できる男だと……
しかし、それは違った。
しょせん私も……感情で動く市井の人間と変わらない」

「それでいいではありませんか。
感情の量は人それぞれに違うものですが、
まったく感情を持たない人というのは、
存在しないのです。
真に精神的に強い人というのは、
感情を持たないのではなく、
あらゆる物事に心を揺り動かされながら、
それを乗り越えて行動に移せる人のことをいうのです」「

では、私は弱い。……
どうすれば、乗り越えられるというのだ」
「カムジンを失ったことは、変えようもない事実……。
受け入れるしかありません。
将軍もそう思ったからこそ、
ご自分でお裁きになったのでしょう? 
……ご安心ください。カムジンはいなくなりましたが
……おそれながら、まだ私がおります」

「それは心強いことだ。……いや、
皮肉ではない。本心だ。
しかし、私はしばらくの間休みたい。
兵たちにも相互に休息を取るよう、指示してくれないか」
「将軍……」
韓信は、それきり奥の部屋にこもってしまった。
そしてそれから約半年の間、
目立った行動は起こさなかったという。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『弁天小僧』 美空ひばり




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


宇治川哀歌 』香西かおり 



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる 





P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

Furo1