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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(88)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 


漢の韓信-(88)

酈食其という儒者は、老人でありながら挙動が軽く、
いつも軽快な足取りで韓信の前にひょっこり顔を出す。
その彼は屈託のない調子で韓信に対して言った。
「将軍、たびたびのことで申し訳ないが、
漢王が兵をよこせと仰せだ。出せるか?」
韓信としては「簡単に言うものだ」と半ば
あきれる気持ちもあるのだが、
それを口に出して言う気にはなれない。

酈食其は、彼にとってどうにも憎めない
人物なのである。
「出しますよ。というより、出すしかないのでしょう?」
「うむ。まさか出せません、とは言えまいな。
いや、言わないでくれ。それを伝えるのは
わしなのだから……。そんなことを伝えれば
漢王はまた癇癪を起こし、わしのことをきっと
口汚く罵るに違いないのだ。

実は、この間もさんざん叱られたばかりでな」
「言いませんよ。……それよりなぜ
叱られたのですか?」
「我ながら妙案だと思ったのだが……
秦の滅ぼした六国の子孫をたてて、
それぞれを王とするよう漢王に献言したのだ。
漢王が覇王として君臨することになれば、
項王も襟を正して心服する以外にないと思ったのでな」
「…………」「やはり駄目か、そうであろうな。

漢王は一度はわしの策を採用し、
大急ぎで印綬を作らせたが、
張良があわてて引き止めたそうだ。
時代に合わん、といってな。
おかげでわしは大目玉だ」
酈食其は悪びれた様子もなく、淡々と話す。

韓信にはそれがおかしくてたまらなかった。
「今さら項王が襟を正してなどと……。
私が張子房どのでもやはり止めたでしょう。
六国をたててその六国が揃って楚に靡いてしまっては、
元も子もない。酈生ともあろうお方が、
どうしてそのような早まった献言を?」
「それは……早いところ現状を打開しなければ
どうにもならぬとわしなりに思ったからだ。

はっきり言うが、滎陽は落城寸前だ。
早めに手を打たなければ、あとひと月も持つまい」
酈生はこのとき苦渋に満ちた表情をした。
日ごろ温和な態度を保ち続けている儒者の彼としては、
珍しいことである。

「漢も詭計を用いて、楚軍の内部を
切り崩したりはしているのだ。しかし、
決定的な打撃を与えることができないでいる」
このとき韓信は酈生から伝え聞き、甬道が遮断されて
滎陽が飢餓状態に陥っていること、
また陳平の策によって亜父范増が死んだことなどを
初めて知った。

「深刻な状況ですね……。しかし、
現状では私にできることは少ない。
せいぜい兵を補充して差し上げることぐらいしか……。
漢王はさぞや憔悴していることでしょう」
「軍事面ではな。私生活の面では、心配ない。

漢王は囚われの身の呂氏のかわりに若い戚夫人を
得るに至った。元来が女好きのお方だ。
若い婦人を相手にしていた方が精神的にも
安定するに違いない。判断力はしっかりしておられる」
「に、しても急がねばならぬ。

斉を討伐し楚を逆に包囲すれば……」
韓信はしばらくの間、士卒を休ませることに決めていたが、
もしかしたらそれも撤回しなければならないと考えた。
「いや、心配するな。事を急いで将軍に
失敗されてはすべてが無に帰す。成功したとしても……」
「成功したとしても?」
「……将軍の立場を悪くするだけだ。
わしにはそう思える」「…………」

「将軍の功績はいまでも大きすぎる。
このうえ斉を平定などしたら漢はおろか、
楚さえも上回る勢力になりかねん。
将軍が戦いに勝つたびに漢王が兵を送れと
いちいちいうのは、それを抑えるためだ。
いや、たしかに滎陽が苦しいという事情はあるが、
基本的には将軍の力を削ぐためだと思えてならない」

「……私が自立勢力を持つというのですか。
私の幕僚にも似たようなことを言う者がいる。
しかし、その度に私は言うのですが……
私にはそんな気はない」
「君がどういうつもりなのかは、
たいして問題ではないのだ。

重要なのは事実であって、実際に将軍の勢力が
自立するに足るものであれば、漢王としては
警戒しなければならない。
今のところ将軍にはその気はないようだが、
人の心というものは、ちょっとしたきっかけで
うつろいやすいものだからな」

「私は……違う。私はもし自由を与えられたならば、
誰とも関わらずにひとり気ままに暮らしたい、
というのが本心なのです。誰が自立などするものですか。
王など称して不特定多数の人々を相手にするなど
……面倒です」
「だから将軍がどう思っているかは問題ではない、と
言っているだろう。

将軍、こういう故事をご存知か?……
かつて秦の将軍王翦は楚を滅亡させるにあたって
六十万の兵を用意した。これは楚を撃ち破るに充分な
数であったが、王翦の心次第では秦を撃ち破ることも
可能な数だ」

韓信は口を挟んだ。「その話なら知っています。
王翦は始皇帝にいらぬ疑いを持たれぬよう、
再三にわたって使者を送り、戦勝後の褒美を
ことさらねだった……
戦後の恩賞で頭が一杯で、反乱など
考えてもいないことを印象づけるためです」

「その通り……。考えてみるがいい。
将軍の立場は王翦と同じだ。だが、
将軍は漢王に対して何も要求していない」
「要求など……臣下が主君に要求をするなんて、
不躾(ぶしつけ)ではないですか」
「確かにそうかもしれんが、留意すべき故事だ」
韓信は息をのんだ。自分の立場はそれほど
微妙なものなのだろうか。

かつて李左車が自分に向けて言ったように、
自分には独裁者となる危険性があるのだろうか、と。
いつにもなく深刻な表情で、酈食其は続ける。
「将軍が考えるべき事項はまだある……。
漢王は函谷関を出て中原に進出してからも、
折りをみて何度か関中に戻っている。
そのわけが分かるか?」

「関中は漢にとって重要な拠点だからでしょう。
それは他ならぬ私が漢王に主張したことです」
「……それだけではない。漢王は丞相蕭何が
謀反するのではないかと疑っておられたのだ」

「……蕭丞相が? まさか。彼はそんなお人ではない」
「蕭何は漢王とはまるで違い、真面目で
人格者でもあるし、それゆえ人望もある。
関中の父老の支持を得て、若者を駆り集めれば、
文官とはいえ謀反は可能だ」

「…………」「しかし蕭何が優れているところは、
それに自分自身で気付いたところだ。
彼は漢王の信用を得ようと一族郎党から
男子をすべて集め、残すことなく滎陽の前線に
送り込んだのだ。
体のいい人質というものだろう。

将軍はそのようなことをなさっておいでか」
「……いえ、まったく。
第一私には親類縁者が少ないので……」
「考えるべきだ。旗揚げ以来の重鎮の
蕭何でさえ疑われるのだ。言いたくはないが、
漢王と将軍の信頼関係は、漢王と蕭何のそれよりは薄い。

……親類に心当たりがいないのであれば、
他の者を探すべきだ。
要は漢王の気に入る者を差し出せばよいのだからな。
さしあたり……例の魏豹の娘などはどうであろう」
「…………!」 


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…

美空ひばり テネシー・ワルツ 』





人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


酒場にて』 江利チエミ




時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる





P R
 カビの生えない・きれいなお風呂
  お風呂物語

Furo1