流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

漢の韓信-(86)

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin 韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。 
 

漢の韓信-(86・邯鄲に舞う雪)

人の世は、清濁入り交じって流れる川のようであり、
混沌としている。
清流は清流のままでいることは難しく、
その多くは周囲の濁流の影響を受け、
自らも濁流と化すものだ。

また、汚らしい泥のなかに埋もれる宝石が、
その輝きを主張することは難しい。
泥の中ではせっかくの宝石もただの石ころと
見分けがつかないものである。
鬱蒼とした林の中で、わずかな日光を得て
可憐に咲く花を見つけることは困難である。
林の中は雑草ばかりで、
深く分け入らないとそれを見つけることはできず、
せっかく見つけても価値がわからないものにとっては、
花も雑草であると思われるものだ。

韓信は、自分が濁流の中の清流であり、
泥の中の宝石であり、雑草の中の花だと考えていた。
また彼は、自分以外に清流たる者など存在せず、
周囲の者はみな泥、あるいは雑草だと信じていた。
つまり、自分以外の者を
認めようとしなかったのである。

濁流や、泥、雑草の類が人の世には
多いことは間違いない。
しかしその中で確固として輝きを放とうとする者が
自分だけではないことを、韓信
ようやくわかりかけてきている。
内省的ではあったが、孤高を保ちすぎる傾向にあった
自分の生涯を少しずつ修正しようと努力し、
機会があれば他者を理解しようと心がけるようになった。
そのきっかけは彼自身にもよくわからなかった。
意識もしたことがなかったが、
もしかしたら蘭との出会いが大きいのかもしれなかった。

韓信は敗軍の趙将、広武君李左車を前にして
教えを請う態度をとった。他人に教えを請う行為自体は、
人としてさして珍しいことではないが、
以前の韓信を知る者にとっては容易に
信じられないことであった。

「私ごときがどうして将軍のお力になれましょう。
亡国の大夫は国を語らず、
敗軍の将は軍を語るべきではありません。
たとえ私がなにを言おうと、将軍にとって
ためになる話はありますまい」

助言を請われた広武君はこう言って協力を固辞したが、
韓信は常にない執拗さを示し、食い下がったのである。
敗軍の将は兵を語らず……
李左車は謹み深く、謙虚な男であった。
あるいはこういう人物を韓信は好んだのかもしれない。

「……私は、北に燕を攻め、東に斉を攻め、
これを降そうと考えています。
これは、実に大それたことで、責任も重大なのです。
もちろん私自身にもどうやって燕や斉を攻め降すか、
おぼろげながら考えはありますが、
しかし確信を得るには至っていません。

私は部下を死地に向かわせ、燕や斉の住民を
戦乱に巻き込まねばならない。
そうである以上、部下や住民に
犬死にはさせたくないのです。
やるからには、成功させねばならない」

「将軍のもとにもよき相談相手はおりますでしょうに。
なぜ私のような者の意見など聞きたがるのか」

「傲岸なように聞こえるかもしれませんが……
私は、負けたことがありません。
連戦連勝が続けば、次も勝つと
信じて疑わなくなるのは自然なことです。
我ながら、その気持ちを抑えることが
できなくなりつつある……。
私につき従う兵にしても、同じでしょう。
どうか、第三者の目から見て、
私が次にどうするべきかご教示いただきたいのです」

「そういわれても、私は趙国内においても、
それほど重き立場の身分だったわけではない。
それに対して将軍は若いといっても、
漢の重鎮中の重鎮……。
将軍の求めるような国家的な戦略など、
私が助言できるはずもありません」
韓信はふう、とため息をつき、その言葉を受けた。

しかし、彼は諦めたわけではない。
話題の鉾先を変え、しつこく説得を試みるのであった。
「……広武君どのは、百里奚(はくりけい)という
人物をご存知か」
「は? 楚出身のかつての秦の宰相ですな」

「そう。百里奚は当初 虞(ぐ)国にいたが虞は滅び、
その後秦国に赴いたところ、秦が覇者となった。
これは百里奚が虞にいたころは愚者で、
秦に行ってから急に知恵者になった、
ということではないでしょう。
虞にいようが秦にいようが百里奚その人の
本質は変わらない。

要は彼を用いたか用いなかったか、
当時の君主が彼の意見を聴いたか、聴かなかったか、
ということです。
もし陳余があなたの計画を採用していれば、
私などは今ごろ虜囚の身であったことでしょう。

どうか辞退せずに……私はあなたの意見のままに
行動するつもりです」
李左車はこれを聞き、ついに折れた。
この大陸における通例の儀礼では三度目の
懇願に対して了承するものであるが、
彼は四度目でようやく了承した。
のちに売国奴として批判されるのを
恐れたのであろうか。……


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る



歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…

『むらさき小唄』 美空ひばり



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴と、言い訳になるから……


『雪國 』キム・ヨンジャ 



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる 





P R

カビの生えない・きれいなお風呂

お風呂物語

Furo1