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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……
 
Mituo2_2 
昨日という日は
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プレゼント
明日という日は
ミステリー

 

 

『珍しい写真25選 』


 
 
『バードウオッチング』その1

家から車で20分ほど走ったところにある河原。
中洲で羽を休めるシラサギをボーと見つめながら、
島田ひとみは、悩んでいた。
どうしたら子供たちに受け入れてもらえるのだろうかと。

ひとみは、今年、念願かなって学校の先生になった。
県境の山裾の町にある小学校。副担任ではあるが、
いきなり3年生のクラスを持たせてもらえたことが
嬉しくて仕方がなかった。

校長からも、直々に、
「久しぶりに若い先生が赴任してきてくれて有難いです。
期待してますよ」と言われ、俄然ファイトが湧いた。
そのファイトを、全力で子供たちに向けた。

ところが・・・。 やること成すこと、
まったく上手くいかない。
「先生とみんなで、交換日記をしよう!」と提案した。
担任の山田先生も大賛成してくれた。
「私も前からやりたかったんだけどね、
最近、歳のせいで目が辛くてね。  
あなたがやってくれるなら嬉しいわ」

山田先生は56歳。ベテランの女性教諭だ。
張り切って、100円ショップに行き、
自腹でノートを買い込んだ。28冊。
どれも、デザインのかわいいものを選んだ。
一つひとつに28人の子供の名前を書き入れ、
ホームルームの時間に手渡しした。
子供たちは、わいわい言いながら喜んでくれた。

「じゃあね、毎週月曜日に先生に提出してね。
どんなことを書いてもいいのよ。  
好きなアイドルのことでも、好きな食べ物のことでも。  
困っていることがあったら相談してくれてもいいの。
絶対内緒にするからね」

子供たちは、大いに盛り上がった・・・かに見えた。
しかし、次の月曜日。交換日記を持ってきたのは、
わずか二人だった。
最初だから無理はないと思った。
もう一度、ホームルームで説明をした。
すると、翌週には7人に増えた。

でも、その中身はというと、
「今日、家族で焼肉を食べに行きました」
「塾でテストがありました」
そのたった一行。
そして、そのまた翌週は、
一人も出さなくなってしまった。

山田先生は、「私からもみんなに言おうか」と
言ってくれたが、情けなくなってしまい断った。
新米とはいえ、わずかながらのプライドがあった。
それだけではない。
近くの山へ遠足に出掛けたとき、
「歩きながら歌を歌おうよ」とみんなに提案した。
「ええ~」という声が上がった。

後ろから、「一人で歌えば」という声が聴こえた。
男の子の声だった。
そっちを向いたときには、全員が下を向いていた。
まだある。 国語のテストの答案用紙を
返却したときのことだ。
他のクラスに比べて、かなり点数がよくなかった。
そこで、「今度は、隣のクラスに
アッと言わせようよ!」と笑顔で言った。
そう、満面の笑顔で。

次の帰りのホームルームに、教室に入ろうとすると、
中からこんな声が漏れてきた。
「うざくねぇ、島田先生」
ひとみは青ざめた。呼吸が乱れた。
そのまま教室に入ることができず、
踵を返してトイレに入った。
鏡を見ると、ずいぶん疲れた顔をしていた。

山田先生にも、正直に相談した。
すると、笑って、「焦っちゃダメよ。
あなたは校長先生の期待の星なんだから、  
デンと構えて自信を持ってやりたいようにやりなさい」
「でも・・・」 「私が付いてるから、
何があっても大丈夫よ」
そうは言ってくれたが、
「私が付いてるから」にはショックを覚えた。

私は半人前。 保護者付きの先生なのだと思うと、
夜も眠れなくなった。
そんなことがあった週末。
ひとみは、一人で河原に出掛けた。
バードウオッチングをするためだ。

高校生のときに、自然科学部というクラブに
入っていて始めたものだ。
夢中になって双眼鏡で鳥を見ていると、
嫌なことも何もかも忘れることができる。
卒業後も、辛いことがあると山や野原に出掛けた。
堤防の上を歩き、橋を渡った。
すると、そこは広大な田んぼが広がっていた。
かなり前に稲刈りが済んで、
茶色の地面が広がっていた。
この春に来たときには、眩しいほど
青々とした早稲田が目に飛び込んで来たことを
覚えている。

その茶色は、ひとみの自身の心を
映しているかのように思えた。
ふと見ると、300メートルくらい先に
雁(がん)の群れが降りているのが見えた。
土手の斜面から双眼鏡を覗く。
稲を刈り取った後の落ち穂をつついているのだった。

食事に夢中のようだ。100羽近くいるだろうか。
ひとみは気付かれないように、忍び足で近づいた。
まだ、群れからは相当の距離がある。
でも、用心、用心・・・。ちょっと足を止め、
腰を低くする。そして、再び、
双眼鏡を覗き込んだ瞬間のことだった。

雁の群れの中の一羽が、ヌッ~と首をもたげた。
そして、ひとみの方を伺うように見る。
たしかに、向こうもこちらを
観察していることがわかった。
ひとみは、身体を動かさないようにして、
中腰のままじっと耐えた。

10秒もしないうちに、その一羽も
再び首を下に向けて、こぼれた穂を
ついばみはじめた。

どうやら、雁は常に周りに敵がいないかどうかと
注意を払っているようだ。
(ふう~危ない危ない)
再び、手にした双眼鏡を覗き込んだとき、
さっきの一羽がまた首を上げた。
そしてひとみの方を向いた。
それはまるで、睨んでいるかのように見えた。

次の瞬間、100羽の仲間たちが、
一斉に首をもたげてクルッとひとみの方を向く。
(え?!)つい今しがたまで、
ただ食べることに夢中だった雁たちが、
まるで機関銃の砲列のように
クチバシをひとみに向けていた。
アッ!100羽が、バタバタバタッと
100枚もの布団をハタキで叩くような
ものすごい音を立てて飛び立った。


続く


『動物タクシー』珍しい写真

 
 
人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R

カビの生えないお風呂

お風呂物語

furo