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流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

kensin韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
国士無双」「背水の陣」
「四面楚歌」
そんな彼を描いた小説。




漢の韓信-60

韓信であった。
「項王……。私を覚えておられるか。
かつて楚軍で郎中の職にあった、韓信です」
項羽は、韓信を見据えていった。
「覚えているぞ。ごろつきの股の下を
恥じらいもなくくぐった臆病者だ。
今度はわしの股の下をくぐりに来たのか?」
「くだらぬ話を……。嘲りで私には勝てませんぞ」

韓信は斬ってかかった。項羽はそれを剣で受け、
韓信の倍以上の力で打ち返した。
韓信の剣はそれを受けただけで、
手からこぼれ落ちそうになった。
しかしひるまずに身を翻して、再び斬りかかる。
激しい剣の応酬が二度三度繰り返された。
二人の距離が縮まり、
剣の押し合いによる力比べが始まる。

韓信は押されないように耐えるのが精一杯だったが、
いっぽうの項羽には余裕があった。
「どうした。その程度の剣技では、
わしを倒せはせぬぞ。
お前の剣は長年使っていないようだな。
刃こぼれしている。
剣を研ぎ直して出直してくるがいい」
項羽韓信の耳元で言い、さらに押した。
韓信は押されつつも身をよじり、
項羽の腹に渾身の蹴りをいれて、飛びすさった。

「項王よ! 私は項王と剣技を競い合うために
来たのではない。
見よ、こうしている間に我が兵が
あなたを取り囲んでいるぞ!」
項羽はそれを聞き、はっとしてあたりを見回した。
すると独特の短弓を構えた若者の目が
自分を見据えているのがわかった。
カムジンが狙っていたのである。

すでに山側の楚兵たちは討ち取られ、
他の漢兵も遠巻きに弩を構えていた。
韓信……貴様……!」
「卑怯だ、とでもいうおつもりか? 
一騎打ちがしたいのであれば誰かほかの武人とでも
相手をしてもらうがいい」
韓信は答え、兵に号令した。「射て!」

項羽は剣で降り掛かる矢をはらい、
馬に飛び乗って逃げ出した。
しかし逃げようとしても巨岩に阻まれ、
それ以上道はない。
すると項羽は馬の鼻先を谷の方角へ向け、
そのまま谷底へ向かって突進していった。

「将軍、追わないのですか?」
兵に問われた韓信は、疲れたように深く息をして、
つぶやくように言った。
「行かせておけ。どのみちあの急斜面では
追う我々の方が危ない。
最初に掲げた目的を忘れるな。
この作戦はそもそも、漢王が安全に逃れるための
時間稼ぎである」

「驚きました……矢が一本も命中しませんでしたな。
狙いは外れてなかったのですが」
「たまたまだ。あるいはこれを神がかりのように
評する者もいるかもしれんが、私は信じぬ。
振り回した剣に矢がたまたま当たった、
それだけのことだ」

「これからどうするのです?」
「……敗兵をまとめつつ、滎陽へ向かう。
そこで軍を立て直し、もう一度、
項王と一戦するしかあるまい。
どこかで楚軍の進軍を止めなければ、
漢は関中を失うであろう」
これを聞いた兵たちは、将来また項羽
戦う羽目になるのか、と気落ちする一方で、
進んで韓信と行動をともにすることを決めた。

彼らは、項羽と戦っても生き残ることができた。
韓信の下にいれば、もう一度項羽と戦っても
生き残れるかもしれない。
ほかの将軍の下で戦っていては、
死ぬかもしれなかった。
「さあ、ぼつぼつ向こうの楚兵たちが、
岩をよじ登ってくるかもしれぬ。
我々もそろそろ退散するとしよう」
韓信は兵を率いて、その場を立ち去った。

苦心して巨岩を乗り越え、楚兵たちが
道の向こうに顔を出したころには、
すでに項王はおろか、
生きている者の姿は見えなかった。

項羽の愛馬、騅(すい)は斜面に足を取られ、
何度か転倒した。すでにその自慢の葦毛は
泥にまみれ、ところどころから出血し、
輝きを失っている。
項羽はそれでも騅をいたわり、
決して見捨てるようなことはしなかった。

「騅……脚は折れていないだろうな。
もうひと踏ん張りだ。あと少しで上にあがれる」
項羽は自分の体以上に、馬に愛情を込めて接した。
それもそうであろう。項羽は、
あれだけ至近距離から矢を浴びせられても、
なお無傷なのである。
彼はその愛馬以上に強かった。
強運の持ち主だった、とも言えるかもしれない。

しかし、それは体の外面の話である。
内面では、屈辱が残った。
心に負った、大きな傷である。
韓信め……よくもわしの腹に蹴りを喰らわせたな。
身分卑しき者が……」
もともと感情の量が多い男である。
挫折の感じ方も人並みではなかった。
彼はひどく気持ちが沈んだが、しかしそんなときに
心を落ち着かせる方法を知っていた。

天命を信じることである。
次の戦いに勝つことを想像するだけで、
彼は気が紛れた。これが想像ではなく事実であれば、
なおのこと気持ちが楽になるというものであった。
「見よ、わしは生きている! 
天がわしにまだ死ぬときではない、と告げているのだ。
小生意気な韓信や、身の程知らずの劉邦などに
天の意思がわかろうはずもない。

彼らを討ち滅ぼし、天下を治めるのは、このわしだ!」
項羽はそう言って自分を励まし、
ついに馬を引きながら斜面を登りきった。
そのとき、雷鳴が轟き、激しい雨が降り注いだ。
それはあたかも天の意思が
項羽の感情に共鳴しているかのようであった。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、
狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


『情炎』・吉幾三キム・ヨンジャ 




人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる








P R
カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語