流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

妄想劇場・特別編

妄想劇場・特別編

信じれば真実、疑えば妄想……
 
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ミステリー

 

 


この物語は(株)ユタカファーマシーが
展開する、ドラッグユタカ
実際にあったエピソードです。


『ずっとずっと決めていたこと 後編』
Author :志賀内泰弘


高橋のお婆ちゃんに、
心を読まれてしまったようだ。
「・・・で、でも」
「あんた、なんで介護用のおむつばっかり、
たくさん買い込むんだろうかって、 
不思議に思っているんだろう」
「え?・・・は、はい」
「あまり人には言わんでな」「・・・」

彩也香は、真顔のお婆ちゃんを見つめた。
とても認知症の人には思えなかった。
「お爺さんはな、寝たきりになってしもうたがな、 
ちゃんと毎日、わたしと話をしてくれとる。
めったには出掛けなかったけど、
宮崎とか北海道とかに旅行に行ったことは
何度も話すんだ。楽しかったな~、
美味しかったな~、てな。
そんな同じ話ばかりしてもうすぐ7年が経つんよ。
長いようで短いなあ。

お爺さんにはな、これからもずっとずっと
長生きしてもらいたいんよ。
私よりも先に死なれたら、辛くてたまらん」
彩也香は、とつとつと話す
お婆ちゃんの瞳を見つめていた。

「おむつがなぁ。1ヶ月分しか家にないとな、
不安になるんよ。
あと1ヶ月しか生きていられんような気がしてな。
2ヶ月分しかないと、
あと2ヶ月で死んでしまうような。
それでなぁ。3ヶ月月分、4ヶ月分とな、
だんだんと増えていってしまって、
とうとうお座敷いっぱいになってしまったという
訳なんよ。

たぶん、1年分くらいはあるんじゃないかな。
でも、まだ不安なんよ、
わたし。お爺さんには、1年ばかりじゃなくて、
何年も何年も生きていて欲しい。
下の世話もわがままも何でも聞いてやるから」

彩也香は言葉を失い、
ただそこに立ち尽くした。
気が付くと、頬に一筋の涙が伝っていた。

それから、半年ほどが経った
ある日のことだった。
高橋のお婆ちゃんの旦那さんは、
風邪がもとで気管支炎を患い、
あっという間に亡くなってしまった。

そしてそれから2週間後、
お婆ちゃんが店にやってきた。
「ユタカさん、ありがとうね。
おかげで、お爺さんも
天国に安心して行けましたよ」
旦那さんが亡くなって
通夜にも告別式にも参列させてもらった。
思うよりも元気そうでホッとした。

「そろそろ、片づけもしなくちゃならんのだけど、
なかなか手が付かんくてね」
「しばらく、ゆっくりして下さいよ、お婆ちゃん」
「うん。でもな、野菜はどんどん芽を出すしな、
畑仕事は休めん」
「そうですね」
「ところでな・・・ちょっとな、
あんたに相談があるんよ」

「相談」と言われて、彩也香は
少し嬉しくなった。
何にも役に立てずにいる自分に
苛立っていたからだ。
「あのなぁ、あのお座敷のおむつなんだけど、
一緒に手伝って処分してもらえんかなぁ。
いつか、わたしが必要な時が来るかもしれんけど、
あれを見ると、お爺さんのことを思い出して
辛くてなあ」……

「もちろんです。もしよかったら、
返品に応じさせていただきます」
「え? 返品??」
「はい。たしか、レシートをきちんと
保管していらっしゃいましたよね、お婆ちゃん」

「あ、うん・・・お爺さんの癖で、
菓子箱に全部入れてあるよ」
「1年前のものは返品できないっていう
決まりはありませんから」
「え? 本当にいいんかい・・・
会社から叱られん?」

それは彩也香が、ずっとずっと前から
決めていたことだった。
残念ではあるけれど、きっとこの日が来ることを
考えていた。

「お爺ちゃんが亡くなられて、
年金だけじゃますます生活がたいへんでしょ。
返金分で、お孫さんに何か買って
差し上げてください」
高橋のお婆ちゃんはうつむいて
動かなくなってしまった。
足元の床に、ポツリポツリと、涙が落ちた。

彩也香は、それを見て見ぬフリをして
大声で言った。
「今日は、カボチャの料理でも作ろうかな。
美味しい煮物の作り方、
教えてもらえますか?」
彩也香にとって、思い出深い夫婦だった。

《終わり》




【死にざま】



人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる






P R

カビの生えない・きれいなお風呂

furo



お風呂物語