流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直

 

韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。


韓信-30


そこへ黥布と鐘離眛に率いられた二万の楚軍が現れた。
籠城中の趙軍は歓喜に沸いたが、
これでようやく秦軍と互角程度に戦えるくらいである。
それまで高みの見物を決め込んでいた陳余は
使者を通じて楚軍へさらなる援軍を要請し、
項羽はそれを受けてついに自ら軍勢を率い、
鉅鹿に乗り込んだ。

出陣にあたって項羽は士卒たちが全員川を渡り終えると、
船をすべて沈めてしまった。また、
作戦前の最後の食事をとり終えると、
煮炊き用の釜をすべて打ち壊した。
どちらの行為も「死ぬまで戦う」という意思を
劇的に示したものであった。

死を決意した者にとって、帰るための船は必要なく、
二度と食事をとる必要もない、というわけである。
項羽のような激情家が自らこのような行為をすると、
士卒たちは心を打たれ、感情が高ぶるのだった。
かくして鉅鹿に突入した楚軍の兵たちは、
天地を揺るがす雄叫びをあげ、
一人で十人の兵を相手にして狂ったように戦った。
諸侯たちはその様子を見て呆気にとられるばかりで
余計に動けなくなった。
燕や斉などの兵は秦軍よりも味方の
楚軍の方を恐れ始めた。

楚人は個人ではおとなしいが、
集団になったとたんに剽悍
(ひょうかん)になる、とされている。
感情が激しやすく、あらゆる物事に心を動かされては、
怒ったり、泣いたり、笑ったりする。
このときの楚軍に、細かな戦術などは無きに等しく、
あるのは項羽の個人的武勇のみであった。
激情した司令官が先頭に立ち、
激情した部下たちがそれに続く。
彼らは死をも恐れぬ殺人集団となって
敵陣深くまっすぐに進むのである。

しかし韓信は決して彼らと同調できない。
この集団の中にいるのが、恐ろしく感じられた。
私は、この連中とは明らかに違う。
自分は、楚人ではないのだろうか。
項羽の激情に化学反応を示したように、
集団が揃いも揃って同じ感情を示すというのも
不思議でならなかった。

つまりは、楚人とは主体性のない奴らばかりなのだ。
いや、そういう私も楚人か……。
韓信はひとり気のない戦をし、
それを見た者から罵声を浴びせられた。
「臆病者め!」韓信はいつまで
この集団の中にいられるか、不安になってきた。

そもそも韓信は楚人とはいっても北東部の
大きく国境が入り組んだ地域で生まれ育っている。
そのような地域では他国との混血や
文化的な交流が盛んであっただろうし、
自分が純粋な楚人であることを確認できる手段など、
この時代にはなかった。
もしそうでも幼少時代から楚人的な教育を
叩き込まれていれば、
あるいは楚人らしい楚人として育っていたかもしれない。

しかし栽荘先生は決してそのような
教育をしてくれなかったし、
今思えば反楚的だったとさえ思う。
先生、やはり私はここに居場所がないように
思うのですが、本当にこれでいいのでしょうか……。
先生は私を評して物事を客観的に見れる、
とおっしゃりましたが、それはそのはずです。
私だけがこの中では別物なのですから。
それを承知で楚軍行きを勧められたのでしたら、
お恨み申し上げます!

しかし自分はどこの組織に入っても
素直なものの見方をせず、
周囲から白眼視される人物であろうことは、
この時期の韓信にはようやくわかってきた。
自分のことさえも客観的に判断できる段階に
入ってきたのである。
項羽は章邯配下の将のうち、蘇角を殺し、
王離を捕虜とし、渉間を追いつめて自殺せしめた。
章邯その人は取り逃がしたものの、
見事鉅鹿城の解放に成功したのである。
この戦果を受け、楚は趙、斉、燕などの
諸侯国のなかで第一の存在となった。
項羽に服属したのである。
かくて趙は滅亡の危機を免れたわけだが、
その過程で禍根を残した。

建国の臣のふたり、張耳と陳余が
仲違いしてしまったのである。
張耳は援軍を出さなかった陳余を責め、言った。
「君とわしはお互いのために死のうと
誓い合った仲ではないか。
それなのに君は数万の兵を抱えながら、
助けにも来てくれなかった。いったいどういうわけだ」

陳余にも言いたいことはある。
彼は悪びれもせず、答えて言った。
「現実を見ろ。秦との戦力差を考えれば、
軍を進めても結局は趙を救うことはできず、
無駄に全滅させるだけだった。
私が軍を進めずに君とともに死のうとしなかったのは、
いつか趙王と君のために秦に報復したいと思ったからだ。
だいたい、今の国情で君と私が二人とも死んでしまっては、
誰が国を保つのか冷静に考えてみるべきなのだ」

張耳には陳余の言うことが理屈としては、わかる。
それよりも気に入らないのは陳余の態度であった。
年長である自分や趙王に苦労をかけたことを
気にも留めておらず、結果的に助かったのだから
よかったではないか、と言わんばかりの態度であった。

張耳は繰り返し陳余を責めた。
根性を叩き直すつもりだったのである。
しかしこれに逆上した陳余は、
いきなり将軍の印綬(いんじゅ)を外し、
張耳に押しやって便所に立った。
位など惜しまず、いさぎよく下野するというわけである。
陳余はまさか張耳がそれを本気にするとは思っていなかったが、
便所から帰ってみると、張耳は既にその印綬を腰の帯につけ、
陳余の指揮下の軍を配下におさめていた。
愕然とした陳余はごく少数の仲間を連れ、
その場をあとにしたのである。

張耳は項羽の軍とともに、
函谷関を目指して進軍することになる。
咸陽にも戦況の報告は届く。
しかし届いても皇帝の耳には入らないのだった。
なぜかと言うと、趙高が知らせないからである。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


歌は心の走馬灯、 花に例えた古い歌
今さら聞いても、歌っても、何処に置いても、飾っても
花も歌も、枯れてゆく....人生、絵模様、万華鏡...



夕ンゴの御堂筋 小林旭




誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……

人の為(ため)と書いて
いつわり(偽)と読むんだねぇ


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる










P R

きれいなお風呂・宣言 

お風呂物語