流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.


Author:紀之沢直
韓信
紀元前二〇〇年代の中国大陸。
衰退した秦の末期という動乱の時代に
生を受けた韓信は、成長し、
やがて漢の大将軍となる。
そこから始まる彼の活躍…
国士無双」「背水の陣」「四面楚歌」。
そんな彼を描いた小説。 
韓信-18・乱世
彼に相談しろと。ところがこれが失敗だった」
「太子が言うことを聞かなかったのですか?」
「その逆だ。田光は太子の話を聞き、
すっかり同調してしまったのだ。
もっと分別のある奴だと思っていたのだが……。
田光は刺客を送ることを提案し、
その実行役として太子に荊軻(けいか)という男を推した。
そして田光は国家の秘事を明かさぬ証として、
自分の首を斬って死んだのだ」

「烈士、ですね。私の母親はそういうのを嫌っていました」
「わしだって嫌いだ。あんな形で死なれてしまっては、
刺客を送らないことは義に背く。
議論の余地をなくす、ずるいやり方だ……。
こうなってはもはやわしの出る幕などはなく、
荊軻を刺客として咸陽に送り込み、
秦王を殺すという方向に、燕の国策は定まった。
そこでどうやって荊軻を咸陽に潜り込ませるかだが、
亡命者の樊於期を捕らえて殺し、
その首を献上する形をとるのが最上だとされたのだ。
太子の義侠心より国策が優先される結果となったわけだな」

「樊於期は殺されたのですか」
「秦に復讐できると聞いて喜んで死んだ、という話だ。
真実かどうか疑問だが。
真実ならば樊も烈士の類いだな……。
かくて荊軻は樊の首を持って始皇帝の前に立ったが、
匕首あいくちひとつで殺せるほど
剣技に長けているわけでもない。
結果は案の定、失敗だった」
「秦王の怒りは、よほどのものだったでしょうな」
「然り。……それからわずか十ヶ月でけい
(燕の首都。現在の北京市)は陥落し、
我々は東へ逃れたが、
そこで太子の首を献上すれば国は助かると献案する者がいたので、
燕王は太子を斬ってしまわれた。
わしはこれにも反対したのだ。
無駄に命を奪うことをせず、
生き延びることだけを考えましょう、とな……。
しかし結局太子の首を届けても秦は許さず、
進軍を止めることはなかった。
わしは太子が斬られた時点で国を離れ、逃亡した。
そしてたどり着いたのが、ここだ」

韓信は、疲れを感じた。長い話だったこともあるが、
自分がもし太子丹の立場であったら、と思うと
まったくどうするべきかわからなかった、ということもある。
「先生は……この地に潜伏し、
秦に復讐しようとでも思っていたのですか」
栽荘先生は、気恥ずかしそうに答えた。
「いや、それはない……。
国が滅亡する羽目になって、正直わしは疲れた。
この地で静かに、人知れず余生を過ごそうと思ったまでだ。
しかし……秦への恨みがないわけではないし、
太子の思いも成就させてやりたい。
だがわしはこの通り老齢で、おまけに死に瀕している。
だから、わしや太子の思いは、
お前に託すことにした」韓信はびっくりした。
びっくりして言葉もうまく出ない。

「そんな……眛がやってくれるでしょう。私はとても……」
「自信がない、とでも言うのか。
大丈夫だ、お前は物事を客観的に見れるし、
その意味では太子のように感情に流されることもないだろう。
さしあたっては、眛の後を追って、項梁のもとへ行け。
おそらくあの軍がいちばん現状ではまともな軍だ」
韓信は気が進まなかった。
項梁など、もと貴族ではないか。
貴族のために戦ってやる義理は、自分にはないように思えた。
しかし、死に瀕している先生にそのようなことは言えず、
二、三日の間逡巡しているうちに、
栽荘先生は息を引き取ってしまった。
先生の遺体を埋葬するときに、
見知らぬ者たちが何人かいたのを韓信は認めたが、
その者たちが燕の遺臣であろうことは想像に難くなかった。


つづく

Author :紀之沢直
http://kinozawanaosi.com.
愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る
 
歌は心の走馬灯、
花に例えた古い歌
 今さら聞いても、歌っても、 
 何処に置いても、飾っても
  花も歌も、枯れてゆく....
  人生、絵模様、万華鏡...


 
「プラチナボイス」が心を刺激する!
川上大輔 「意気地なし」
 
誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……


時は絶えず流れ、
今、微笑む花も、明日には枯れる



 
 
 
 
 
 
 
 

P R