流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

幸せな家庭生活が妻の病死により一転、
悲しみの毎日へと変わった。
幼子を抱えて生きてゆくには
多くの人々の支えがあった。
精一杯生きる中での様々な出会いと
悲しい別れを繰り返し、
不思議な出来事にも遭遇する。
そして、そこには新たな愛が存在していた。……

Author: 壇次郎

どんぐりからの手紙 (29話)

お彼岸 3


その頃、私と隆は咲子の眠る墓の前にいました。
墓はよく手入れがされている様子で、
けっこう綺麗になっていました。
私たちは墓前に花を沿え、線香に火を灯し、
静かに手を併せ、目を閉じました。
私はゆっくりと目を開けると、目の前に
一粒のどんぐりが置いてありました。
秋でもないのに、何故、どんぐりがそこにあるのでしょうか。
それも、ピカピカのどんぐりです。
さっきまで、私たちには全く気付かれることなく、
どんぐりはそこにあったのでした。

剛 「あれ? なんでどんぐりがここにあるんだ?」
隆 「あっ、ほんとだ。母さんかなぁ・・・」
剛 「母さん、きっと、隆の高校進学、
 喜んでくれているんだよ」
隆 「そうなのかなぁ・・・。
 とりあえず、貰っておくね、母さん」
隆は、そのピカピカなどんぐりを
ズボンのポケットの中にしまいました。
そして、家に帰ると、お昼は
香絵ちゃんと母が作ったオハギでした。
大きな皿に盛り付けられた色々な大きさのオハギは、
様々な形をしていましたが、
とっても美味しいオハギでした。
午後になり、私は隆と香絵ちゃんを
かつて咲子と散策した、裏山の白樺林に連れて行きました。
雪はすでにすっかり消えていましたが、
雪解け水は遠くの山から絶え間なく流れ込み、
春先にしか現れない小さな小川を作っていました。
水芭蕉はもう、大きく成長し、
独特の美しさはありませんが、
周りのふきのとうとも重なり合って、
北国の森の中らしい、すがすがしさを
感じさせていました。

香絵 「わ~、綺麗・・・。ねぇ、ねぇ、隆、剛さん、
 一緒に手を繋ごうよ!」
隆 「やだよ、そんなの・・・」
剛 「隆、そんなこと言わないで、手、繋いで歩こう!」
香絵 「そうだよ、隆、ねっ、剛さん?」
香絵ちゃんは、急に私たちと手を繋いで歩こうと言い出しました。
そして、私たちは香絵ちゃんを真ん中に、
三人、仲良く手を繋いで、春の眩しい光が降り注ぐ中、
白樺林を奥の方へと進んで行きました。
その時の香絵ちゃんの笑顔は、なんと幸せそうであったでしょうか。
照れくさそうな隆の顔も、幼い頃そっくりの笑顔です。
その時の私にとって、咲子のことを
思い出すことはありませんでした。
まさに、三人が一緒の家族そのものの様に感じ、
幸せな気持ちで満ち溢れていました。

隆 「なんだか、なかよし家族だね」
香絵 「ほんとだね、隆もたまには良い事、言うね!」
隆 「でも、香絵ちゃん、いつかはお嫁に行っちゃうんでしょ?」
香絵「・・・・・」
隆 「香絵ちゃん、いなくなると、寂しいな!」
香絵 「大丈夫だよ。隆が私より綺麗な人、
 お嫁さんに貰うまで、私、そばにいるよ」
隆 「香絵ちゃんより綺麗な人、
 見つけるのは簡単だけど・・・」
香絵 「なんで、簡単なんだよぉ~」
香絵ちゃんは、隆の優しい言葉が嬉しかったのでしょう。
香絵ちゃんの長いまつ毛がうっすらと濡れていく様子が、
隣で手を繋いでいる私には解りました。
そして、香絵ちゃんの手を握る私の手には、
少しだけ力が入っている様でした。

短かった長野の休日も終わり、私たち三人は、
両親から野菜をいっぱい貰って東京に帰りました。
先に荷物を持った隆をアパートに降ろし、
私は香絵ちゃんを家まで車で送ることになりました。
香絵 「剛さん、私、今朝、奥さんの夢、見たの・・・」
剛 「えっ?」
香絵 「奥さん、私に何度も何度も、
笑顔でお礼を言ってたの・・・。
そして、『これからも、よろしくね』って言ってたの・・・。
嘘じゃないよ、ほんとに夢の中で言ってたんだから・・・」
剛 「ふ~ん、そうだったんだ・・・」
私は不思議な気持ちでいっぱいになりながら、
香絵ちゃんの自宅前で彼女を車から降ろし、
姉の家で預けていたクッキーを引き取った後、
アパートに向かいました。
そして、アパートの部屋に入り、ズボンのポケットから
車のキーを取り出したら、なんと、そこにはキーと一緒に、
一粒のどんぐりが出て来たではありませんか。

一方、家に着いた香絵ちゃんは、自分の部屋に入るや否や、
ベッドの上にドスンと横になり、ぼんやりと
部屋の天井を眺めていました。
でも、なんだか頭の後ろから首にかけて、
硬い物がゴロゴロと当たります。
何だろうと思い、手で探ったら、なんと、
それは一粒のどんぐりでした。
それも、ピカピカの大きなどんぐりでした。


続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



歌は心の走馬灯、
花に例えた古い歌
 今さら聞いても仕方がないが
 何処に置いても飾っても 、
  歌も花も、枯れてゆく……
  人生、絵模様、万華鏡…



女房きどり 小林 旭



時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる





P R
きれいなお風呂・宣言 

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