流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

幸せな家庭生活が妻の病死により一転、
悲しみの毎日へと変わった。
幼子を抱えて生きてゆくには
多くの人々の支えがあった。
精一杯生きる中での様々な出会いと
悲しい別れを繰り返し、
不思議な出来事にも遭遇する。
そして、そこには新たな愛が存在していた。……

Author: 壇次郎

どんぐりからの手紙 (25話)
初恋


まりこ美容室の真里子さんは、最近、温泉旅行に
凝っているそうです。
私の実家に行った時の露天風呂が
忘れられなくなってしまったのでしょう。
美容室はお弟子さんに任せ、友達同士、ご主人抜きで、
熊が出そうな山奥の露天風呂に浸かるのが
楽しみだそうです。
香絵ちゃんは、今のところ全く結婚願望がありません。
相変わらず多くのボーイフレンドが彼女の誕生日に
贈り物を貢いでいる様子です。そして、
たまにその一部が私の店に並ぶことがあります。
「おじさんとなら、結婚してもいいよ」
なんて、嬉しいことを言ってくれますが、
歳が十八才も離れています。いくら私でも本気にはなれません。
また、正直なところ、咲子への遠慮があるのかもしれません。
一方、隆は高校の受験勉強に励みながら、
新聞配達を始めていました。雨の日も、風の日も、
そしてどんなに寒い雪の日も、暗い内から起き出しては
商店街で新聞を配り回っていました。
時には帰り道、朝早くから働いている
お豆腐屋さんやパン屋さんからおすそ分けを頂き、
帰って来ることもありました。
アンティークショップの売り上げも順調になり、
なにかと忙しかったこの年も、残るカレンダーの枚数が
あとわずかになっていた頃でした。
真里子さんが、温泉旅行のお土産を持って、
私の店を訪れました。

真里子「剛さん、こんにちは。これ、
 新潟のお土産、少ないけど、隆君と食べてね」
剛「あれ、真里子さん、また温泉だったの? 
 どおりで、お肌ツヤツヤだと思ったよ。
 これ以上綺麗になって、どうするの?」
真里子「いつも嬉しいこと言ってくれるね、あんたは・・・。
 ところでね、隆君、最近様子はどう?」
剛「別に、普段と変わりないけど、隆がどうかしたの?」
真里子「実はねぇ、夕べ、旅行から帰って来た時、
 駅前で隆君のこと見たの。
 女の子と手を繋いで、歩いていたけど・・・。
 気まずい思いをさせちゃったら可愛そうだから、
 別に声も掛けずにいたけどね・・・。
 剛さん、知ってた?」
剛「いや・・・、俺、初耳だよ。
 隆もそんな年頃になったんだ・・・。
 俺の場合は、野球ばっかりしていたから、
 隆の年頃の時には、女と付き合うなんてことは無かったし、
 経験ないからなぁ。どうしたらいいんだろう、・・」
真里子「別に、放っておいて、いいんじゃない? 
 でも、もし、帰りが遅くなってきたり、
 訳のわからない事言い出したら、要注意だよ。
 相手の子も、真面目そうだったから、心配ないよ」
剛「それならばいいんだけど・・・。
 俺、男女交際は、ほんと、経験不足だからなぁ・・・」
真里子「じゃあ、剛さんって、奥さんが初めての女性?」
剛「自慢して良いのかどうか解らないけど、最初で最後さ」
真里子「どおりで、あんた、香絵の気持ちが解らないはずだよ」
剛「えっ、香絵ちゃんの気持ちって?」
真里子「いや、そんなのどうでもいいの・・・。
 それよりも、隆君のこと、よく見ておくのよ」

時が経つのは早いものです。
隆に彼女が出来ていたなんて、
隆はもう、そんな年頃なのでした。
よく考えると、咲子を亡くし、十年になります。
私にとって悲しい気持ちは、あの頃とちっとも
変わっていませんが、どれほど回りの人々に
助けられていたことでしょうか。
隆が付き合っていた彼女は、同じクラスの同級生でした。
その女の子は美穂と言い、常にクラスで
一、二番を争う程の成績優秀な可愛い女の子でした。
美穂の父親は、老舗呉服屋の三代目で、
美穂は何不自由無く、お嬢様として育てられていました。
美穂の父親も三代目と言うこともあり、
周りにチヤホヤされていたせいか、
世間知らずな部分もありました。
友人に借金の保証人を頼み込まれた
人のいい美穂の父親は、
それを断ることも出来ず、借用書の保証人欄に
判を付いてしまいました。
しかし、その友人は借金を残して行方不明となり、
保証人である美穂の父親がその借金を
返す羽目となってしまいました。
でも、借金の額は膨大です。
所有していた店やビル、土地はおろか、
家族と暮らす家までも手放すことになってしまいました。
それでもまだ借金は残り、
美穂の家族は途方にくれている状態でした。
そして一家は、次第に、心身共に追い詰められた
生活に代わっていった様子でした。

隆「美穂は、高校、どこにするの? 
 俺と違って、美穂は頭がいいから、
 どこ受けても合格、間違い無しだよな・・・」
美穂「そんなこと無いよ。ほんとは、私、
 高校どころじゃないかもしれないんだ・・・」
隆「・・・?」
美穂「うちのお父さん、なんだか仕事、苦しいらしく、
 借金抱えて悩んでるんだ。だから、お母さん、
 毎日不機嫌で・・・。うちにはお金が無いって、
 いつもぼやいているの・・・。
 私にもヤツ当たりするし・・・。夕べも、
 お父さん、ご飯食べようとしたら、『お米が減る』って、
 お母さん怒鳴ってた。私、もう、うんざり・・・。
 お父さん、いつ死んでもいい様に、
 生命保険だけは、ずっと掛け続けるって、
 お母さん、言ってるんだ・・・」

美穂は幼い頃の父親との思い出を思い出していました。
父親は休みになると、必ず美穂を遊園地や動物園、
水族館に連れて行ってくれました。
海や山にも連れて行ってくれました。
そんな時の父親が自分を見ている笑顔からは、
溢れんばかりの愛情を感じることが出来ました。
美穂には父親とどこかに行った記憶が多い反面
、母親と出かけた記憶がありません。
いつもの父親との外出には、母親の姿はありませんでした。
世間では、母親と買い物をする女の子の姿が
よく見受けられますが、美穂の場合、
そんな記憶さえありませんでした。

隆「お金って、無ければ無いなりに工夫すればいい、
 助け合えばどうにかなるもんだって、
 うちの父さん、よく言ってるけど・・・」
美穂「うちのお母さん、うちが裕福だったから、
 お父さんと結婚したんだって・・・。
 それが、今みたいに、こんな風になるなんて、
 思ってもいなかったって、いつも愚痴こぼしてるよ。
 お父さん、お母さんに何を言われても黙っているだけで・・・。
 私、今、お小遣い貰ってない事お父さん知っていて、
 きのう、そっと私に千円くれたんだぁ、
 『お母さんには内緒だよ』って言って・・・。
 お父さん、お昼も食べていないみたい・・」
隆「うちの父さん、店の売り上げがあまり無い時、
 高田さんに世話になってたみたいだよ。
 夜中に働きに出ていた時なんか、
 俺、おばちゃんちに行ってたよ。
 それでも、だれも何も言わなかったけど・・・」
美穂「いいなぁ・・・、隆んちは・・・」
隆「美穂には、父さんも母さんもいるじゃないか・・・。
 俺んちは、母さん、いないし・・・。
 俺、5歳の時死んじゃったから、あまり覚えてないし・・・」
美穂「でも、隆のところ、いろんな人来るじゃない・・・。
 香絵さんって言うお姉さんや、まりこ美容室の先生や、
 税理士さんから、八百屋さんから、商店街の人たち、
 いっぱい来るじゃん・・・。羨ましいよ。
 うちも、以前は、いろんな人来てたけど、
 お父さんに借金が出来たとたん、誰一人、来なくなっちゃたよ」
隆「うちも、父さん、借金したら、誰も来なくなるのかなあ・・・」
美穂「なんだか、人って、寂しいね・・・」


続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る


誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



歌は心の走馬灯、
花に例えた古い歌
 今さら聞いても仕方がないが
 何処に置いても飾っても
  歌も花も、枯れてゆく……
  人生、絵模様、万華鏡…


泣いた数だけ倖せに 小林旭



時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる





P R
きれいなお風呂・宣言 

お風呂物語