流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

信じれば真実、疑えば妄想……

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!


信じれば真実、疑えば妄想……

昨日という日は歴史、
今日という日はプレゼント
明日という日はミステリー、



南 里沙 クロマチックハーモニカ
人生いろいろ --Harmonica






アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

幸せな家庭生活が妻の病死により一転、
悲しみの毎日へと変わった。
幼子を抱えて生きてゆくには
多くの人々の支えがあった。
精一杯生きる中での様々な出会いと
悲しい別れを繰り返し、
不思議な出来事にも遭遇する。
そして、そこには新たな愛が存在していた。……


Author: 壇次郎


どんぐりからの手紙 (第19話)

失恋
香絵ちゃんは、心優しくとても明るい性格の女性です。
隆はすっかり、自分の姉の様に慕っていました。
特に決まった恋人が居るわけではありませんが、
結構、ホーイフレンドも多く、
男女共に多くの人から好かれていました。
私の店は、香絵ちゃんの通う事務所の近くですので、
彼女はよく、仕事の帰りに寄ってくれます。
また、香絵ちゃんの家は、
私の帰り道の途中でもあり、
一緒に帰ることがよくありました。
その年も暮れようとしている12月の頃の出来事でした。
香絵ちゃんは年末調整の事務仕事で、
いつもより帰りの遅い日が続いていました。
そろそろ店を閉めようとしている時でした。
香絵 「おじさん、おじさん」
剛 「どうしたの? そんなに息を切らして・・。
 宝くじでも当たったのかい?」
香絵 「誰かにつけられているみたい」
剛 「なんだ? チカンかな? 
 でも、香絵ちゃんを襲うやつなんてこの世にいるのかい? 
 後姿で暗いから、相手もよく判らないのかなぁ・・・」
香絵 「おじさん、冗談言ってる場合じゃないよ。
 ここんところ、毎日続いてるんだから・・・」
剛 「どれどれ・・・。誰も追いかけて来てないよ」
香絵 「でも、なんだか気味が悪い」
剛 「じゃあ、しばらく一緒に帰ってあげるよ。
 おじさん、香絵ちゃんのことだったら、
 襲ったりしないから・・・」
香絵 「なによ、それ、どういう意味?」
翌日も、その翌々日も、
香絵ちゃんは誰かに後をつけられている様子でした。
香絵ちゃんは、まりこ美容室の前を通り過ぎて
私の店に来ます。 
そこで、私は、まりこ美容室で香絵ちゃんが
通り過ぎる様子を観察することにしました。
私と携帯電話でコソコソと連絡をとりながら、
香絵ちゃんは目の前を通り過ぎて行きました。
その二十メートルほど後ろを作業服姿の
一人の若者が歩いていました。
明らかに香絵ちゃんの後姿を見つめ、
歩調を併せて歩いています。
私と真里子さんはその男の後を追いました。
打ち合わせどおりに、香絵ちゃんは路地を曲がり、
隠れました。
その男が路地で止まったとたん、
香絵ちゃんと男は面と向かい、
私と真里子さんは男を囲みました。そのとたん、
香絵 「あれっ、雄二じゃないの・・・」
剛  「え? 知ってるのか?」
真里子 「あれ? あんた、たしか
 香絵の中学の同級生だよね」
香絵 「私の後、毎日つけていたの、
 あんただったの?」
剛  「いくら同級生でも、
 ストーカーしてりゃ警察に突き出すか?」
香絵ちゃんの同級生であったストーカー男の雄二は、
今にも泣き出しそうでした。
雄二は、ただ、ただ、謝るだけでした。
とりあえず、香絵ちゃんをまりこ美容室に待たせ、
私は自分の店の中に雄二を入れました。
店にはもう、客はおらず、
姉の由美が私たちを見守っていました。
剛 「お前、香絵ちゃんが好きなのか?」
雄二 「はい・・・」
剛 「じゃあ、はっきりと告白したらいいじゃないか?」
雄二 「この前、告白したら、断られまして・・・」
剛 「そっか、ふられたのか。
 でも、お前、男だろ、未練たらしいと、
 心が腐って、どんどんもてなくなるぞ」
由美 「そうだよ。女はネチネチした男が
 大っ嫌いだからね・・・」
剛 「でも、好きなのは、しょうがないよな。 
 男だからと言っても、なかなか諦め切れないよな? 
 でも、ストーカーは良くないぞ」
雄二 「はい、分かっています。
 でも、仕事の帰り、最近、
 必ず香絵さんを見かけるんです。
 別に待ち伏せをしていた訳ではないのですが、
 気になって、そっと後をつけてしまいました」
剛 「そっか・・・。でも、夜、
 後をつけられるってのは恐いもんだぞ、
 特に女にはな」
雄二 「はい、すみませんでした。もう、しません」
剛 「ところで、仕事、何やってるんだ?」
雄二 「工場で働いています」
雄二の指を見ると、爪の間には
真っ黒な機械油が染み込んでいるのが見えました。
いくら洗っても取れない機械の潤滑油です。
私はかつての自分を思い出しました。
毎日、毎日、機械とにらめっこで、
変化の無い毎日を送る若者の気持ちが理解出来ました。
まだ、雄二の年頃ならば、綺麗な服を着て、
チャラチャラと遊び歩きたい盛りです。
仕事がつまらなくなるとすぐに辞めてしまう若者が多い中、
毎日、真面目に不満も言わず
機械と向かい合っている雄二は、
私にとって他人事でない様な気持ちになってしまいました。
そして雄二は、何度も我々に頭を下げながら、
独り、暗くなった道を帰って行きました。
まあ、香絵ちゃんが変質者に狙われていた訳でなく、
我々は一安心でした。

その後、雄二は決まって毎日同じ時間に
店の前を通って朝晩、通勤していました。
雄二は私と目が合うと、
いつも軽く会釈をしていました。
特に笑顔も無く、毎日、何を楽しみにしているのかと、
疑問に思ってしまう様な若者でした。
ある夕暮れ時、私は雄二に声を掛けてみました。
剛 「たしか、雄二君と言ったね。
 たまにはお茶でも飲んで行かないか?」
雄二は、照れくさそうに店の中に入って来ました。
剛 「どうだ、仕事、楽しいか?」
雄二 「いや、別に・・・。
 いつも同じ仕事ですから・・・」
剛 「ところで、雄二君、休みの日は何してるんだ? 
 友達と遊びにでも行くのか?」
雄二 「いいえ、僕には友達があまりいませんし、
 何もしていません」
剛 「じゃあ、野球やらないか? 野球ぐらい出来るだろ?」
雄二 「小学生の頃、すこしやっていました」
剛 「それなら十分だ」
私は高田さんがやっている野球チームに、
雄二を誘いました。時間と場所を書いたメモを雄二に渡し、
剛 「必ず来るんだぞ、待ってるからな」
雄二 「はい。有難うございます」
さっきまで暗い雰囲気しか見られなかった雄二は、
すっかり笑顔になっていました。
二日後、雄二は待ち合わせのグランドに
工場の作業服のまま、姿を現しました。
私は店を姉に任せ、久しぶりにユニフォームを着ていました。
似たような仕事や生活をしている仲間同士、
雄二はすぐにチームの一員になって行きました。
もう、あの晩の様な雄二ではありません。
若い人は、ほんの少しの弾みで
反れた道を歩んでしまいがちですが、
反対に、ちょっとしたきっかけで
本来の人生に戻ることが出来るのだと、
私は実感しました。

しばらくして、私は雄二と酒を飲むことがありました。
野球の練習の帰りに、かつて咲子と通った
焼鳥屋さんに立ち寄りました。
剛 「どうだ、雄二。野球、楽しいだろ」
雄二 「はい、みんな良くしてくれるし、
 こんなに友達が出来たの、初めてです」
剛 「試合になると、相手チームの応援団で、
 美女の大群が押し寄せることがあるんだ。
 中には群れから、はぐれ出て来る美女もいるから、
 よーく注意して見ておけよ」
雄二 「それは、すごいですね。
 美女の大群ですか・・・? でも、僕、
 まだ香絵さんのことが忘れられないんですよ。
 でも、好きでどうにかしたいと言った
 気持ちじゃないんです。
 忘れようと思っても忘れられないだけなんです」
剛 「当たり前だよ、雄二。一度でも好きになった女を、
 忘れることなんて出来ないもんだ。
 俺なんか、毎日、何十人もの女を思い出すよ」
雄二 「えっ? 何十人もですか?」
剛 「そうだよ。男ってものは、ふられれば、
 ふられるほど、エネルギーが胸の中に
 溜まっていくんだ。そして、本命が現れたとたん、
 それが一気に爆発するんだ。ドッカーンとな・・・。
 そして、情熱的な恋が出来るんだ。
 だからな、雄二なぁ、今の内に、どんどんふられろ!」
私は、今は亡き咲子のことを思い出していました。
かつて、咲子が必ず座っていたこの場所に、
この席に、今、自分が座っています。
当時の私は、失恋エネルギーが溜まりに溜まって
爆発したわけでも、情熱的な恋だったわけでも
ありませんでしたが、
愛する人間を失った悲しさを、
時間が解決することはありませんでした。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html


愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る



誰にだってあるんだよ、人には言えない苦しみが。
誰にだってあるんだよ、人には言えない悲しみが。
ただ、黙っているだけなんだよ、
言えば愚痴になるから……



時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる





P R
きれいなお風呂・宣言 
お風呂物語