流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

知られざる命 
Author: 壇次郎


北海道を舞台に、歴史に翻弄された
小さな命がありました。
太平洋戦争から近代に至る出来事に
感動される物語です。
誰もどうすることの出来ない悲しい事実が
ありました。
命の大切さを考えさせられます……  


知られざる命・二章 アオ

二月の半ばを過ぎると、
十勝では日差しが強くなってきます。
気温は氷点下でも陽が当たれば
汗ばむ程の暖かさです。雪質も変ります。
春先の三月になると湿った重いドカ雪が降ります。
この日も三月半ばを過ぎた日のことでした。
明け方まで降り続いた雪は、
新たに六十センチの積雪となりました。
雪が降り止むと、春独特の眩しい太陽が
顔を出しました。陽の光を浴び、
降り積もった雪はどんどんと溶けていきます。
屋根からは、大雨が降っているかの様に、
雪解け水が流れ落ちていました。
そんな中、学校の授業が終わり、
疎開して来ていた数名の子供たちが校舎南側の
軒先で遊んでいました。
裕子先生が職員室で書類の整理をしていたら、
近くで子供たちの遊び声が聞こえて来ました。
その時、裕子先生は危険に気付きました。
裕子 「君たち・・・、危ない・・・、
早くそこから離れなさい・・・」
裕子先生は、大声を出しながら、
遊んでいた子供たちに走って近づきました。
その瞬間、二階の屋根から雪が大きな塊となり、
ドドドドッと音を立て、雪崩となって
一気に子供たちを目がけて落ちて来ました。
その一瞬の間に裕子先生は子供たちを突き飛ばし、
子供たちは皆、難を逃れることが出来ました。
しかし、裕子先生だけがその場から見えなくなっていました。
そこには、新たに出来た大きな雪山が眩しい光の中、
突如として現れていました。
裕子先生に突き飛ばされた児童の一人に、
真里子がいました。
真里子には何が起こったのか、
すぐに理解出来ました。そして、
急いで校長室に走り、校長先生を呼びました。
真里子 「校長先生、裕子先生が・・・」
校長は屋根から雪が滑り落ちる音を
校長室で聞いていました。
校長室に飛び込んできた真里子の
あわてぶりを見るや否や、
校長は校舎入口に立てかけてあった
「雪はね」の道具を持って
外に飛び出して行きました。
校長「樋口君、今すぐ助けるからな、頑張るんだぞ」
子供たち「裕子先生・・・、裕子先生・・・」
校長「真里子君、頼む、おじいちゃん呼んで来てけれ・・・」
真里子「わかりました」
真里子は急いで家まで走り出しました。
その時、徳一郎は納屋で桶を修理していました。
真里子「おじいちゃん、裕子先生が、
雪に・・・、雪の下に・・・」
徳一郎「なにっ? アオ、行くぞ!」
徳一郎は真里子の一言を聞いただけで、
状況がすぐに飲み込めました。
たまたま、アオは馬ソリに繋いだまま、
家の前にいました。
徳一郎は横にあったスコップを握り締め、
ソリに飛び乗るなり、
アオの尻を思いっきり手綱で叩きました。
その瞬間、アオは一気に走り出しました。
校舎横では校長が必死になって
雪山を掘り返しています。
アオがその横にぴたっと止まるなり、
徳一郎はソリから飛び降り、校長と共に
スコップで雪を掘り始めました。
すると雪の中から、
裕子先生の背中が見えてきました。
校長「樋口君、しっかりしろよ」
徳一郎「大丈夫だ、息はあるぞ」
二人は気を失っている裕子先生を
雪の中から引っ張り出すと
、宿直室から持ち出した布団に包み、
アオの待つソリに乗せました。
徳一郎は、再びソリに飛び乗るなり、
アオの尻を思いっきり手綱で叩きました。
アオは叫び声と共に、
再び全速力で走り出しました。

「裕子先生、頑張ってくれよ。
アオよ、頼むぞ!」
徳一郎はそう叫びながら、
裕子先生を馬そりに乗せて、
アオと共に本別町の病院へと向かいました。
全速力で走り続けるアオの心臓の鼓動は、
手綱を握る徳一郎にまで聞こえて来ます。
荒くなったアオの吐く息は、
悲鳴とも聞こえる音に変っていきました。
病院には校長からすぐに電話が入れられていました。
病院の玄関前には、院長先生と看護婦さんが、
アオの着くのを待っていました。
アオは自然と、待ち構えていた院長の横に
滑り込むようにして止まりました。
徳一郎 「先生、頼みますぞ!」
院長  「よし! 
まずいぞ、かなり体温が落ちている。
早く病室に運べ!」
裕子先生はすぐにソリから担架に乗せられ、
病院の中へと入って行きました。
息の荒くなったアオは、
大きな身体全体を揺らしながら息をし、
しばらくその場に立ちすくんでいました。
また、アオの力強い背中からは、
汗が水蒸気となって、
昼下がりの抜ける様な青空に立ち昇っていました。
夜になり、児玉家には駐在さんがやって来ました。
駐在「こんばんは、徳さん・・・
先生の意識、戻ったそうだ」
徳一郎「それはいかった(良かった)、
いかったなや。ところで、
どんなあんべーだ(どんな具合だ)?」
駐在「ああ、詳しいことは解らんが、心配ねえそうだ」
徳一郎「それはいかった、いかった。
おおい、真里子、泰蔵・・、
先生、大丈夫だそうだ。いかったなや」
駐在さんの話は、
裕子先生の意識が戻ったとの連絡でした。
裕子先生は、運良く、
右肩の脱臼と打撲だけで済んだそうです。
しかし、裕子先生の上に覆いかぶさった雪を
すぐに取り除くことが出来なかったら、
間違いなく雪の重みで彼女は
窒息していただろうとの話でした。
また、早く身体を温めたことも、
いい結果となった様でした。
徳一郎はアオのそばに近寄り、話しかけました。
徳一郎「アオ・・・、先生、助かったそうだ。
ご苦労さんだったな。ありがとうな・・・」
駐在「アオがいてくれたから先生、助かったぞ。
お前は、ほんとに、いい馬だなぁ、
立派な馬だべさ。」
アオは、徳一郎と駐在さんのその言葉を聞くと、
得意げに首を大きく上下に振りました。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


ささやきのタンゴ
作詞:石巻宗一郎・作曲:バッキ-白片


始めてひらいた 恋の蕾よ
人目をさけて 逢う今宵も
なんにも云えぬが 心の裡で
Darling, my darling, my sweet, I love you




昨日という日は歴史、
 明日という日はミステリー、
  今日という日は贈り物、
今は、歌のプレゼント

時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる