流れ雲

繰り返しと積み重ねの、過ぎ去る日々に、小さな希望と少しの刺激で、今を楽しくこれからも楽しく (^o^)

メジャーでは無いけど、
こんな小説あっても、良いかな !!

信じれば真実、疑えば妄想……

アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい.

知られざる命 
Author: 壇次郎


北海道を舞台に、歴史に翻弄された
小さな命がありました。
太平洋戦争から近代に至る出来事に
感動される物語です。
誰もどうすることの出来ない悲しい事実が
ありました。
命の大切さを考えさせられます……  


知られざる命・二章 アオ
疎開した泰蔵と真里子は、
地元の国民学校に通い出しました。
学校は児玉家に程近く、授業中には
アオの農作業姿が教室の窓から
見ることが出来ました。
学校には、泰蔵や真里子と同じ様に、
疎開してきた子供たちが数名いました。
それでも、全校生徒が二十名ほどの小さな学校です。
子供たちの間では「いじめ」も無く、
皆が仲良く助け合って生活をしていました。
先生は校長先生と帯広から来た代用教員で
樋口裕子と言う女の先生だけでした。
裕子先生は、まだ二十代前半の
美しく優しい女性でした。
彼女は札幌の女学校を卒業した後、
実家のある帯広で地元の新聞社に勤めていましたが、
自らの恩師でもある校長先生に誘われて、
ここ勇足の国民学校に赴任して来たそうです。
学校の子供たちは、アオと大の仲良しでした。
授業が終わると子供たちは、
農作業をしている徳一郎の傍らで
草を食むアオの元に駆け寄り、
ポンポンとアオの顔や身体を叩いたり、
草をちぎってはアオに食べさせたりして
遊んでいました。
アオも子供たちの騒がしさが好きでした。
決して暴れたり威嚇したりすることもせず、
おとなしく子供たちからされるままにしていました。
時々、アオは勢い良よくブルブルッと息を吐き、
周りに飛び散る唾に子供たちが大騒ぎすると、
それを楽しんでいるかの様な表情を浮かべていました。
そして時には、アオの引く荷車に乗って、
子供たちは家に帰ったものでした。

十勝地方は太平洋側でもあり、
冬でも晴れる日が多く、
比較的雪の少ない地方です。
でも、寒さは函館や札幌とは比べ物になりません。
当時の本別町勇足では、
氷点下三十度を下回ることも珍しくありませんでした。
風の無い晴れた日の寒い夜になると、
森の奥から「コーン、コーン」と言う音が
響いてきます。
それは凍裂(とうれつ)と言い、
大木の中にある水分が凍り、
木の内側から幹を引き裂く音です。
空気中の水蒸気が凍って朝陽がそれを
キラキラと輝かせるダイヤモンドダスト
光の柱となって
上空にそびえたつサンピラー現象など、
これら北海道ならではの幻想的風景でも、
泰蔵や真里子にとっては初めて見る風景でした。
これほど寒いと、雪が固まることはありません。
雪をぎゅっと握り、その手を開くと、
雪は乾いた砂の様にさらさらと
指と指の間から滑り落ち、
風に舞って飛んで行きます。
直射日光にさらされた雪は、
水になる事無く空気中に蒸発します。
この様な極寒の季節、
リザードが、時折、人々の日常生活を
不安に落とし入れることがあります。
大寒を過ぎた頃でした。
十勝平野の上空は雲ひとつない青空です。
しかし、日高山脈を越えて吹き降ろす風は
強風と変っていました。
学校が終わる午後になると、
強風は勢いを増し、
降り積もっている雪を真横に飛ばしています。
猛烈な地吹雪の高さは、
わずか 1メートル程ですが、
道路と畑の境目を一面隠してしまいます。
背の高い大人なら、歩く先が見えていても、
小さな子供たちにとっては、
すっぽりとブリザードの中に入ってしまい、
一寸先も見えません。
そんな地吹雪の中を、
校長先生が徳一郎を訪ねました。
校長 「いやいや・・・、
徳さん、まいったなや・・・。この地吹雪で、
子供たちが帰れんよ。悪いんだが、
アオ、出してくれんべか?」
徳一郎 「ああ、ええよ。
そんたらことなら、任せとけぇ!」
校長 「すまんなぁ・・。アオ、頼んべやー」
徳一郎 「さーて、アオ、ひと仕事、いくべっ!」
徳一郎はアオを外に置いてあったソリに繋ぐと、
何枚かのムシロをソリの後ろに乗る校長に持たせ、
アオと共に子供たちの待つ学校に向かいました。
外は、激しい地吹雪で、
畑と道路との区別が全く出来ません。
車なら間違いなく路外に転落し、
動けなくなってしまうでしょう。
そこは、一面真白の雲海の様でした。
時折舞い上がってくる地吹雪は、
人の背丈を越え、方向感覚をも失わせます。
吹き溜まりにでも足を踏み入れたら、
身動きがとれなくなります。そうなると、
氷点下の上に強風の中、
人間の命なら、そう長くは持ちません。
そんな悪天候の中、
アオは全く方向感覚を失う事無く、
いつもの調子で学校までソリを引いて来ました。
学校では、子供たちが帰宅の準備をして
アオが迎えに来るのを待っていました。
子供たちは家のある地区ごとに
グループを作り、アオの引くソリに乗り込みました。
徳一郎 「風、つえーから、
みんな、むしろ、吹っ飛ばされねー様に、
しっかり握ってろや」
校長 「んじゃあ、徳さん、頼んだよ。
アオ、頼むぞ! みんな、気をつけてな・・・」
子供たちは風除けのムシロを
身体いっぱいに巻きつけ、ソリに乗り込みました。
子供たちは皆、不安よりか、
アオと一緒に帰れることに喜びを感じ、
楽しそうな表情を浮かべていました。
アオは、全く危なげなく、
「シャンシャン」という鈴の音と共に、
ソリを引いてゆっくりと歩き出しました。
子供たち 「わー・・・、
なまらすっげー風だ。前が全然見えねーぞ!」
子供たち 「徳じいちゃん、アオ、大丈夫なの?」
徳一郎  「大丈夫さ! 
アオは、なまら(すごく)つえー馬だ。
どんな天気でも、平気だぁ。
おめーたちもアオみてーに強くなるんだぞ!」
アオは全く危なげもなく子供たちを
家まで送り届けてくれました。
そして、地吹雪の中、
学校と子供たちの住む家との間を
五回も往復してくれました。
一仕事を終えた、アオの大きな目のまつ毛には、
すっかり氷がへばり付いていました。

続く

Author: 夢庵壇次郎
http://www.newvel.jp/library/pso-1967.html

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る

歌は心の走馬灯、
 歌は世につれ、世は歌につれ、
  人生、絵模様、万華鏡…


美空ひばり/城ケ島の雨
作詞:北原白秋  作曲:梁田 貞


雨はふるふる 城ケ島の磯に
利久鼠の 雨がふる
雨は真珠か 夜明けの霧か
それとも私の 忍び泣き




昨日という日は歴史、
 明日という日はミステリー、
  今日という日は贈り物、
今は、歌のプレゼント

時は絶えず流れ、
    今、微笑む花も、明日には枯れる